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〜サテュロスと梟〜

 マイク達の耳に聴こえてくる、不吉な笛のの正体は。


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 一同はすっかりと静かになり、町の賑やかな喧騒の中から、この四人だけがくっきりと切り取られたかのようだった。


 音を失った理由は『山羊やぎ』である。本来、山羊は森の平地にはいない山岳の生物であり、マイクの話を聞くと同時に、三人の脳裏にはある共通の存在が浮かんでいた。


「すると何か? お前は“サテュロス”に会ったとでも言うのか?」


 静寂を破ってヤニスが問いかけた。その声にマイクはこれまでになく鋭い眼光を向け、信じられないという表情でぽつりと答えた。


「会ったどころじゃない。喋ったのさ」




 ──ここからは当時のマイクたちの視点で語られる。


 夜の森。焚き火の光が揺れる中、狩人たちは笛の音を聞きながら、その音源を探ろうと暗闇に目を凝らしていた。音色は形容し難い。陽気でありながら不協和音が混じり、どこか悪意を帯びていた。その音は遠くからではなく、まるで手を伸ばせば届く距離から聞こえていた。


 そして突然、サテュロスが木々の陰から現れた。その姿に微塵の躊躇も警戒も無い。ごく自然体であった。


 マイクが咄嗟に短く声を上げ、狩人たちは武器を構えた。しかしサテュロスは、ちらりと彼らを見た後、微かに笑みを浮かべるだけであった。それは決して友好的な笑顔ではなく、むしろ薄く嘲るような表情だった。


 サテュロスの頬に刻まれた笑みは、狩人たちを一瞬で萎縮させた。まるで自分たちが獲物となり、捕食者に睨まれているかのように感じたからだ。狩人としての直感が、これは紛うことなき“死の予兆”だと警鐘を鳴らしていた。


 サテュロスは、小さな山羊の下半身に人間の上半身を持つ半人半獣。身長は150センチほどで、狩人たちに比べれば幼気な青年のようにも見える。しかしその瞳には、古代から続く邪悪な智慧と、あらゆる命を見下す冷たい光が宿っていた。


「おいおい、よしてくれよ」


 右手に持った円錐台状の笛を、左手の掌で軽く叩きながら、サテュロスは嗄れた高い声で不意に口を開いた。


「そんな物騒なものを突きつけて、この“か弱い”生物をどうしようって言うんだい?」


 その言葉とは裏腹に、サテュロスは物憂げに森を見渡し、目の前の人間たちにはほとんど興味を示していないようだった。


 マイクは緊張しながらも意地で正気を保ち、声を絞り出した。


「いったい何の用だ? 申し訳ないが、俺たちの知る限り、お前は不吉の象徴だ。警戒しないわけにはいかない」


 得体の知れないナニかに首を絞め上げられ、ひとつ言葉を零すたびに、窒息し、意識が飛びかけた。しかしマイクは、わずかでも友好的な対応を見せることで、相手が敵意を抱かないよう必死に努めた。サテュロスは一瞬驚いたように目を見開き、次いでしっかりと微笑んだ。


「森に似つかわしくない良い匂いがするから、釣られて出て来ただけさ。お前たちが持っているそれ、麦酒だろ。少しくれないか? 果実酒ばかりで気が滅入りそうなんだよ」


 その軽妙な返しに、マイクは自身の背筋を冷たい汗が流れるのを感じた。この会話に皆の命がかかっていることを、歴戦の経験からすぐ理解したからだ。沈黙が続く中、サテュロスの表情は次第に無表情へと変わり、森の空気は凍りついた。


 そして次の瞬間、サテュロスは盛大に笑い出した。

サテュロスはちっちゃくて可愛いよ。

声はね、フ○ーザ様にするとしっくりくるよ。

※注意:ケンタウルスは四本の脚、サテュロスは二本脚だよ


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・?(ケンタウルス)

・エーレ(平凡な娘)

・ヤニス(エーレの父)

・マイク(伝説の英雄)

・ルカ(マイクの息子)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

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