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〜交わる意思〜

 カテリーニに降り注いだ謎の閃光を受け、ルカの中に〝何か〟が侵入する…。


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 ルカは頬にひんやりとした地面を感じた。


どうやらミト爺さんと同じく、自らも倒れたようであったが、何ら痛みや不快感は無かった。


朧げにゆっくりと目を開けた。


明るさを見て察するに、時間は経っていなかった。


空気は澄んだまま、東雲色の景色が広がり、このままもう一度目を閉じてしまいたい程に長閑であった。


ルカは慌てることなくゆっくりと立ち上がると、目の前で倒れたままのミト爺さんを揺すった。


「ミト爺さん、起きましょう」


今しがた起きた不思議な出来事に、なぜ自分がこれほどまでに落ち着いているのか、ルカ自身も疑問には思ったが、深く推測するまでには至らなかった。


「なぜわしはこんな所で……」


ミトはルカと同じく、ぼんやりと呆けた顔を持ち上げ、その場で身体を起こした。


「今のは何だったのでしょうか?」


「何だったとは何のことだ?

お前は早く家に戻りなさい。

わしも家で作業の続きをせねばならん」


ミトの口調はいつもより緩やかであり、ルカは霧がかった森の中から聞こえてくるように感じた。


「そうですね」と、妙に納得したルカは、自らの家に向かった。


何かがおかしいとは分かっているのだが、なぜか心がその謎の探求を拒んでいるようで、ただ足が歩を進めた。


家に戻ると父マイクは目覚めており、騒がしく顔を洗っていた。


そんな父の背中を見た瞬間、ルカの頭に刹那の痛みが走った。


頭痛とも違う、不思議な感覚だった。


「なんだ気の抜けた顔して。

ミトの所へは行ったのか?」


マイクは顔の水滴を雑に腕で拭い取りながら、やや不機嫌に確認した。


ルカは黙って頷いた。


「なんだお前寝ぼけてるのか?

山羊の化け物が近くにいるかも知れないって時に、まったく呑気な奴だ……。

まぁ良い。

ミトの所へ行ったのなら、羊乳を注いでくれ」


そう言うとマイクは、テーブルの上に大きなグラスを置きながら、盛大な欠伸をかました。


テーブルに置かれたグラスに、ミト爺さんからもらってきた羊乳を注ぎ、ルカはしずしずと朝食の準備を始めた。


そんなルカを、マイクは訝しげに思いはしたが、今日という日の清々しい朝に、すぐにそんなことはどうでも良くなった。


その後は至っていつも通りな日常であった。


マイクはルカの作った朝食を食べ終えると、馬や犬たちの所へと向かい、大いに愛でながら食事を与えた。


ルカは朝食の片付けや軽い家の掃除をこなした。


マイクは薪を持ち帰り、台所付近に無造作に置き、再度椅子へと腰を下ろすと、次の狩りの計画をテーブルに広げたパピルス紙へと描き始めた。


そんな日常がしばらく流れた時、ヤニスが現れた。


ヤニスを見た瞬間に、ルカの頭をまたしても不思議な痛みが通り過ぎた。


しかしルカはここでもしずしずと、家の外から水を汲んできてテーブルに置き、会話をする二人をぼんやりと眺め、マイクに指示された麦酒を注いだ。


そして、ルカの頭の中に不思議な声が響いた。


それはもうひとりの自分に話し掛けられるような、奇妙な感覚であった。


(森のサテュロスをどうにかしないと)


(ん? それは今するべきことかい?)


ルカは頭の中で〝何か〟と会話した。


(今しなければ。

町の皆も不安がっている)


(確かにそうだ。

そしてそれには目の前の二人が適任だ)


(二人を森に向かわせよう)


(僕は残って町を守らないと)


(ネオも一緒に行かせたらどう?)


(何だか可笑しな人選だ)


(サテュロスはすばしっこいよ)


(そうだね)


(その通りさ)


((そうしよう))


 元々ふたつの声であった脳内の会話は、次第にひとつに交わり、今やルカの意思そのものであるように、心の中へと溶け込んでいった。


そしてルカは二人に提案をした。


「二人ともすることが無いなら、サテュロス退治にでも行ってくれよ。

親父の話を聞いてから、町の皆怖がってんだ」と。


 マインドコントロールなんかも、この手法らしいですね。

相手の脳内に浮かんだ見えない疑問に対して、返答をする事で、この人は何でも分かっている、何でも見えているとなり、やがてひとつの意思になる。

コールドリーディングって奴は、今や文章としてネット上にも潜んでいますので、皆様は自分の心を大切に。

と、たまには真面目な後書きを書いてみる。


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・カロス(ケンタウルス)

・エーレ(神の器?)

・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)

・マイク(伝説の英雄)

・レナ(ケンタウルスの女戦士)

・ターレス(ケンタウルスの族長)

・ソフィア(ケンタウルスの少女)

・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)

・ルカ(マイクの息子)

・マートル(マイクの妻、ルカを産むと共に死去)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)

・レア(大地の女神、レナの師)

・アキレウス(昔の英雄)

・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)

・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)

・ネッソス(レナの父)

・アイネ(レナの母)

・ヘルメス(天界の死神)

・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)

・タナトス(冥界の死神)

・狭間の獣(タナトスの下僕)

・ニンフ(精霊の総称)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

・レアの泉(女神の泉)

・ピエリア(ミリアから山を超えた先)

・モスコホリ(ミリアの隣町)

・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)

・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)

・アテネ(スパルタの敵対勢力)

・天界(天空の世界)

・冥界(地底の世界)

・禁則の地(天界と繋がる場所)

・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)

・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)

・パピルス紙(古代に於ける植物性の紙)

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