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〜カテリーニの夜明け〜 その2

 パンが見つけた小さな無花果。

この果実が示す意味とは。


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 そのひと粒の無花果が何を示しているのか、マイクとヤニスには到底分かり得なかった。


しかしアグノスは違ったし、驚くことにネオも何やら感じ取った様子であった。


「これはいったい……どうなっている、パン。

仮にもヘラクレスと思しき神に対して、こんな芸当ができるとは。

コイツの正体は何者だ?」


「それが分かれば苦労しないわな。

とりあえず言えるのは、コイツは明らかに神に操られてはいない。

さらに、それを神に隠し通すことができている。

その上で、我々を案内しようとしているのだ。

驚きだろう?」


愉快げなパンと、戸惑うアグノス。

そのやり取りを、ただ見守ることしかできない“二人”。


痺れを切らして、遂にマイクが口を開いた。


「何を言い合っている?

我々にはまったく理解ができないのだが……」


パンとアグノスは軽く三人を見やった後、目を見交わし、〝自分が適任であろう〟とアグノスが答えた。


「この無花果から、僅かではあるが光の線が続いている。

要するに……、何者かが我々に、道標を残しているのだ。

〝こちらに来い〟とな」


「罠である可能性は?」


今度はヤニスが尋ねた。


これには即座にパンが答えた。


「さっきも言ったが、この町の人間たちを消すという手口自体が、実に回りくどい。

その上で道標を残すなど、流石のヘラクレスでもやりはしない。

これは確実に、連れて行かれたうちの誰かによる行動だ。

しかもこの光の道標からは、『助けてくれ』ではなく『こちらに来い』という意志が強く感じ取れる。

コイツは確実に、我々を導こうとしているんだ。

おそらく唯一、神に操られていない者がな」


「それは……間違いなくルカだ」


じっと無花果を見つめながら、ネオは静かに言い放った。


急に背後から発せられた声に、マイクとヤニスは驚いて振り向いた。


パンは「ほぉ……」と興味深そうにネオを見つめた。


 

 何にせよ、夜のうちは動けないーーと、一同はマイクの家へ戻り、夜明けを待った。


パンとアグノスは、引き続き酒を飲みながら何かを語り合っていたが、三人はしばし休むことを選んだ。


聞きたいことは沢山あったが、ネオは心労が祟り、すぐに寝入ってしまった。


ヤニスとマイクは、そう安々とは眠りにつけなかった。


「ヤニスよ。

俺はルカに対して、極当たり前に愛してきた。

我が息子として当然に、だ。

しかし今、俺は一縷の不安に襲われている。

果たしてエーレだけが、特別な存在なのか……。

今となっては、ルカが生まれたタイミングがあまりにも出来すぎているのではないかと、危惧している」


「気持ちは分かるさ、マイク。

けどルカは、至って普通の子だよ。

お前と〈マートル〉との間に生まれた、間違いのない人の子だ。

もし今回の道標を作っているのが、ネオの言った通りルカなのだとすれば、それはお前の勇敢な血を継いだ息子の献身的な判断と行動だ。

一度神を欺くために……いや、もしかしたら我々はすでに、ルカに助けられていたのかもしれないとすら思っている。

ルカは必死に操られたふりをしながら、我々が来るのを待っているのかもしれないとな」


その時、マイクの目から一雫の涙が溢れた。


ヤニスは気付かないふりをした。


今しがたヤニスが口にした言葉。


それを、マイクも感じ取っていたのだ。


息子の想いに気づけなかった自分を、酷く後悔していたのだった。



 事実、無花果を残したのはルカであった。


そして、物語の視点は、今朝のルカへと移っていく。


 【次回】ルカ覚醒に向けて!?

カテリーニに起こった真実とは!?


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・カロス(ケンタウルス)

・エーレ(神の器?)

・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)

・マイク(伝説の英雄)

・レナ(ケンタウルスの女戦士)

・ターレス(ケンタウルスの族長)

・ソフィア(ケンタウルスの少女)

・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)

・ルカ(マイクの息子)

・マートル(マイクの妻、ルカを産むと共に死去)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)

・レア(大地の女神、レナの師)

・アキレウス(昔の英雄)

・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)

・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)

・ネッソス(レナの父)

・アイネ(レナの母)

・ヘルメス(天界の死神)

・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)

・タナトス(冥界の死神)

・狭間の獣(タナトスの下僕)

・ニンフ(精霊の総称)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

・レアの泉(女神の泉)

・ピエリア(ミリアから山を超えた先)

・モスコホリ(ミリアの隣町)

・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)

・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)

・アテネ(スパルタの敵対勢力)

・天界(天空の世界)

・冥界(地底の世界)

・禁則の地(天界と繋がる場所)

・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)

・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)

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