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〜カテリーニの夜明け〜

 アグノスとパンを連れて、カテリーニへと戻る一行。

新たなヒントは見つけられるのか?

【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 三人とアグノス、そしてパンは、一路カテリーニへと向かった。


パンは、大量の蝙蝠が作り出した椅子の上に座っていた。


さらに、その蝙蝠たちが夜の闇に紛れていたため、半人半獣の身体が空中を漂っているように見え、決して気味の良いものではなかった。


ケンタウロスのアグノスは軽々と走っていたが、三人の乗る馬たちは、追いつくのがやっとで、それぞれが息を荒げていた。


カテリーニへと到着した一行は、町の中央広場で周囲を見渡したが、やはりまったく人影はなかった。


「凄いなこれは……、気配の余韻すら残さぬとは」


アグノスは感心したように呟いた。


パンは何やら一方向をぐっと目を細めて見つめていたが、誰もそれには気づかなかった。


 マイクの家に入ると、指示を出されたネオが渋々と、皆に麦酒を渡した。


パンは不気味なほどに口角を上げ、笑みを浮かべた。


「これだよ、これ……。

俺はずっとこれを飲みたかったんだ」


無邪気に喜ぶパンに、アグノスは呆れた様子だったが、ひとまずグラスを軽く持ち上げ、皆もそれに倣った。


「この後どうするのだ?」


ヤニスが最初の議題を切り出した。


「仮に朝を待って町を見直しても、まず手がかりは見つからないだろう。

それならば急ぎ、ケイロンの元へと向かうのが得策だな。

ミリアを通って目指せば、山に護ってもらえるし、お前たちとしてもそれが最善だろう」


アグノスは淡々と述べ、マイクとヤニスも「そうだな」と目を合わせて頷いた。


しかしパンは、意地らしげに全員を見つめていた。


「なんだパン。

何か言いたげだな。

しかしお前は、無理に付いて来なくてもいいのだぞ?

どうせケイロンに面と向かっては会いたくないだろう?」


「まぁ、確かにそうだ。

ミリアを通るなら、より森の奥地へと向かうからな。

ヘスティアも近いし、俺はごめんだね。

だけどさ……本当にそのルートで良いのかな、と思ってよ」


パンは麦酒に対してなのか、自分の述べている意見に対してなのか、とにかく満足げだった。


誰も持っていない宝物を、自分だけ手に入れた子供のように、抑えきれない喜びが口角を震わせ、瞳は潤んでいた。


「麦酒だってやったんだ。

今は仲間だと思い、敬意を表している。

素直に教えてはくれないか?」


マイクは今度は冷静に、対等であることを表して交渉した。


「なに、驚いてるのさ。

どうやらカテリーニには、お前たち以外にも英雄の資格を持つ者がいたようだ……とな」


パンは、せっかく手に入れた玩具をそう安々とは見せようとしなかった。


 その後はちぐはぐな問答がしばらく続き、「いい加減に……」とアグノスが拳を握ったところで、パンはやっと玩具をポケットから取り出した。


徐ろに外へと出ていくパンは、「付いて来な」と全員を呼んだ。


「なぁ、二人とも。あんな奴の言うことなんか、放っておこうよ。

やっぱりアイツも敵なんだ。

俺たちを連れ去ろうって気なのさ」


パンについていく一行の最後尾で、ネオは震えながら引き止めようとした。


いつまで経ってもネオはパンに慣れなかったし、恐怖というよりも、純粋な“畏れ”を感じて拭えなかった。


「蛇の道は蛇。

どうせマイクにも俺にも、分からないことだらけなんだ。

エーレやルカたちを助けるためなら、悪魔の意見にだって耳を貸すさ」


ネオの願いは、いつも虚しく消し去られた。


そして、中央広場から海側に抜ける道へと着いた時、パンは足を止めた。


「こいつを見な」


そう言うと、パンは地面へとしゃがみ込み、何かを指差した。


全員が覗き込むと、そこには小ぶりな乾燥無花果が落ちていた。


 空中を移動するパンのイメージは、アレに乗ったフ◯ーザです。

子供の時からアレに乗るのが夢です。


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・カロス(ケンタウルス)

・エーレ(神の器?)

・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)

・マイク(伝説の英雄)

・レナ(ケンタウルスの女戦士)

・ターレス(ケンタウルスの族長)

・ソフィア(ケンタウルスの少女)

・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)

・ルカ(マイクの息子)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)

・レア(大地の女神、レナの師)

・アキレウス(昔の英雄)

・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)

・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)

・ネッソス(レナの父)

・アイネ(レナの母)

・ヘルメス(天界の死神)

・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)

・タナトス(冥界の死神)

・狭間の獣(タナトスの下僕)

・ニンフ(精霊の総称)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

・レアの泉(女神の泉)

・ピエリア(ミリアから山を超えた先)

・モスコホリ(ミリアの隣町)

・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)

・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)

・アテネ(スパルタの敵対勢力)

・天界(天空の世界)

・冥界(地底の世界)

・禁則の地(天界と繋がる場所)

・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)

・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)

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