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〜定まらぬ矛先〜

 怒りに呑まれるマイク。

パンの口から、ひとつの憶測が生まれようとしている。


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 マイクは両手の剣を、あと僅かに首へ寄せながら、二体の耳元へ向けて言葉を発した。


「お前たちに問う。

私を先程までの男だとは思わないことだ。

回答には命を賭けよ」


その声は、二本の剣と共鳴し、低く鈍く響いて、アグノスとパンの三半規管を震わせた。

人類よりも圧倒的に神に近しいこの二体に、生命そのものの危機を感じさせる声であった。


「今しがたカテリーニに戻ったが、町からは人間のみならず、馬・犬・鶏……あらゆる生命が姿を消していた。

営みの根源たる炎すら灯っていなかった。

カテリーニに“何か”が起こったその間、奇しくも俺たちは、お前たちと時間を共にしている。

これが偶然であったと、誓えるか?」


パンは何やら反論しようとしたが、アグノスがすかさず左手でその口を塞ぎ、空中を見つめたまま答えた。


「誓えるよ。

事実、君たちのことを呼んだわけでもないし、君たちが今日、あの時に現れるなんて、まったく知らなかった」


「では続けるが……」


マイクは表情を変えぬまま、淡々と質問を続けた。


「つい数時間前まであの町にいた者たちが、今は姿を消している。

争いの痕跡は何ひとつ無く、気配すら残っていない。

これは、人間の集団には到底できない芸当だ。

あんたたちはこれを聞いて、どう思い、どう見る?」


「あまり調子に乗るなよ、人間」


パンは怒りと共に、マイクの短剣ごと顔を突き出したが、マイクはその首に自らの前腕を押し当て、眼力ひとつで制した。


パンは久方ぶりに、恐怖の破片を感じた。


 

 そのとき茂みの中から、ヤニスの大きな声が上がった。


「やめろ!マイク!」


言葉と共に、ヤニスは馬から飛び降り、マイクの横に着地すると、ためらいもなく二本の剣を刃ごと握りしめた。


当然ながら、マイクの剣がなまくらなはずもなく、握りしめるヤニスの手のひらからは、鮮血が滴り落ちた。


「お前が今、剣を向けるべき相手は、彼らではない。

心を冷やせ」


キンと張り詰めた沈黙が、一同を包んだ。


マイクは、ヤニスの血を見つめ、大きく鼻から息を吸い、そして目を閉じるようにして吐き出した。


「……助かったよ、ヤニス。

もう大丈夫だ」


マイクがそう言うと、ヤニスはそっと刃から手を離した。


だが、マイクの眼は、なおもその答えを待っていた。


「なるほど。力の開放条件は“狂気”か……。

あまり褒められたものじゃないな」


そう言いながら、アグノスは肩の力を抜き、息を整えると、答えの主をパンに委ねた。


パンはマイクを鋭く睨みながら語り始めた。


「お前たちがカテリーニに着いたとき、人影はおろか、実態すらなかったのだな?

気配の痕跡もなく」


マイクとヤニスは静かに頷いた。

ネオは、自らの呼吸を整えることで精一杯だった。


「では、お前たちがこの森へ向かう“きっかけ”となった者や出来事は何だ?」


「……ルカ?」


マイクとヤニスは、同時にその名を口にした。


「では、それだ」


パンは素っ気なく、端的に言い放った。


「ルカは俺の息子だ。

それが何だと言うのだ?」


マイクは率直に訊ねた。


「その息子とやらは、普段と変わりなかったか?

たとえば……、普段より出来過ぎていたり、冷静でいたり、普段より(自らではなく他者に対して)積極的であったりはしなかったか?」


マイクもヤニスも、思い当たることしかなかった。


「確かにアイツ……今日は別人みたいな匂いがしたな」


ネオだけは、少し違うところで違和感を覚えていた。


 分かった方が居ると嬉しいのですが、この時のヤニスのモデルは、風の谷のナウシカのミトです。

マイクの鬼神の力を御せるのは、ヤニスしか居ないのです。

これが、ケイロンの言っていた「英雄の力」にヤニスが必要な理由です。

では、ヤニスの力とは!?


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・カロス(ケンタウルス)

・エーレ(神の器?)

・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)

・マイク(伝説の英雄)

・レナ(ケンタウルスの女戦士)

・ターレス(ケンタウルスの族長)

・ソフィア(ケンタウルスの少女)

・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)

・ルカ(マイクの息子)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)

・レア(大地の女神、レナの師)

・アキレウス(昔の英雄)

・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)

・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)

・ネッソス(レナの父)

・アイネ(レナの母)

・ヘルメス(天界の死神)

・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)

・タナトス(冥界の死神)

・狭間の獣(タナトスの下僕)

・ニンフ(精霊の総称)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

・レアの泉(女神の泉)

・ピエリア(ミリアから山を超えた先)

・モスコホリ(ミリアの隣町)

・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)

・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)

・アテネ(スパルタの敵対勢力)

・天界(天空の世界)

・冥界(地底の世界)

・禁則の地(天界と繋がる場所)

・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)

・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)

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