〜狂気〜
カテリーニにおける謎の集団失踪?
その時マイクの力が目を覚ます。
【固定】
始めまして、三軒長屋 与太郎です。
ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。
後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。
マイクを筆頭に、三人はカテリーニへと戻って来た。
しかし町に人影は無く、暗がりの中、ただそこに佇むだけであった。
「俺だ! マイクだ! 何があった!
誰か返事をしろ! ルカ! ミト!」
マイクは大声で叫んだが、声は虚しく、夜の闇に吸い込まれていった。
「いったい……どうなってるんだ。
マイク!
お前は自分の家へ急げ。
ネオと俺は町の家々を見て回る」
「分かった」
マイクは自宅へと急ぎ、ヤニスとネオは声を上げながら、町の民家を一巡りした。
しばらくして、三人はそれぞれ落胆の表情を浮かべながら、町の中央広場へと集まった。
「駄目だ……。家は蛻の殻、犬や馬たちすらいない」
マイクは大きな目の中で瞳を泳がせながら、言葉をこぼした。
「こっちもだよ。
家の中にも、どこにも誰もいやしない。
でも妙なんだ。家の中はまるで、ついさっきまでそこに人がいたみたいだった。
食卓に飯が並んでる家もあったし、生き物と火だけが、一瞬で消えたみたいだ」
「ネオの言う通りだ……。
俺は、カロスから聞かされた嫌な話を思い浮かべてしまう」
ヤニスはそう言いながら、群れを成した狭間の獣が大勢の命を奪う光景を想像し、必死に首を振って、その考えを追い払った。
「とにかく、手がかりが無さすぎる。
一旦、アグノスとパンのところへ戻ろう。
気は引けるが、それしかない」
ヤニスの提案に答えるより早く、マイクは馬に跨がり、すでに森へと走り出していた。
「ここに残りたいか? ネオ」
「こんな不気味な場所に、一人でいられるわけないでしょ?」
ネオはまたしても半ベソをかきながら、あの怪物たちのもとへ戻らねばならぬ自分の運命を呪った。
そして二人も急ぎ、マイクの後を追った。
森へと入っても、マイクが後ろを振り向くことはなく、猛然と突き進んでいた。
「ヤバいな……頭に血が上ってやがる。
このままじゃ……。
おい、ネオ急ぐぞ!
もし何か魅力的なものが目に映っても、それは森のマヤカシだ。
決して惑わされるな。
俺の背中だけを見ていろ」
「分かってます。
これでも英雄マイクと共に旅する、狩人の一員です。
夜の森の怖さも、あの状態のマイクさんのヤバさも……」
増す一方の速度。
二人はマイクの馬を、目で捉えるのがやっとだった。
隠す気もない騒がしさに、アグノスとパンもすぐに気がついた。
「さっきの三人が向かって来ているな。
しかも……尋常じゃない勢いだ」
「何だよ、やっぱりもう少し呑みたくなったのか?
いや、待てよ。もしかして麦酒を持ってきたんじゃないのか?」
相変わらず呑気なパンとは対照的に、アグノスは嫌な気配に当てられていた。
「なぁ……コイツら、俺たちを殺る気なんじゃないか?」
アグノスの言葉に、パンは大いに笑った。
「よせよアグノス。
何を間違って人間が俺たちを殺すんだ?
どっかの神にでも操られたのか?」
そんな二体の前に現れたマイクは、すでに馬の上で両足を立て、臨戦態勢を取っていた。
そして岩山近くの茂みを駆け抜けた瞬間、空中へと跳び上がった。
両腰から──右手に奇妙な形の短剣、左手に中型の剣をそれぞれの鞘から抜き出し、瞬く間にアグノスとパンの間へと着地した。
二体に息つく間も与えず、アグノスの首に中型の剣、パンの首に短剣をぴたりと添える。
マイクのそれは、油断していたパンはもちろん、しっかりと警戒していたアグノスですら全く対応できない体捌きであった。
マイクは怒るととんでもなく恐ろしいです。
忍た◯乱太郎の食堂のおばちゃんに匹敵するレベルです。
【固定】
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是非続きもお楽しみ下さい。
登場する名称一覧
【キャラクター】
・カロス(ケンタウルス)
・エーレ(神の器?)
・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)
・マイク(伝説の英雄)
・レナ(ケンタウルスの女戦士)
・ターレス(ケンタウルスの族長)
・ソフィア(ケンタウルスの少女)
・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)
・ルカ(マイクの息子)
・ネオ(若い狩人)
・ミト(老いた狩人)
・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)
・レア(大地の女神、レナの師)
・アキレウス(昔の英雄)
・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)
・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)
・ネッソス(レナの父)
・アイネ(レナの母)
・ヘルメス(天界の死神)
・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)
・タナトス(冥界の死神)
・狭間の獣(タナトスの下僕)
・ニンフ(精霊の総称)
・サテュロス(笛を吹く半人半獣)
・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)
【場所・他】
・ミリア(エーレが住む山奥の町)
・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)
・パライオ(山の入口の町)
・レアの泉(女神の泉)
・ピエリア(ミリアから山を超えた先)
・モスコホリ(ミリアの隣町)
・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)
・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)
・アテネ(スパルタの敵対勢力)
・天界(天空の世界)
・冥界(地底の世界)
・禁則の地(天界と繋がる場所)
・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)
・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)