〜予期せぬ出会いと再会〜
町を立ち森の中へと向かう三人。
森の中で待ち受ける者とは。
【固定】
始めまして、三軒長屋 与太郎です。
ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。
後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。
前回より荷物も少なく、選ばれたのも若い早馬三頭であったため、マイク達はあっという間に、森の入口であるパライオへと着いた。
「馬はどうする?」とヤニスは確認した。
「このまま連れて行こう。万が一に備えて、バラけたくはない。一手に見て回るなら、足は速い方が良い。それにまさか、馬からは崩れ落ちないだろう?」
マイクはそう言うと、意地悪くネオを見やった。
「やめてくれよ」と困るネオに、マイクは「冗談だ」と笑った。
「しかし……」と、マイクは直ぐに真剣な目つきへと戻した。
「万が一の時には、お前は急ぎ町へと戻り、ミトに知らせろ。
俺達の事は一切、気にするなよ」
ゆっくりと頷きながら、ネオは生唾を飲み込んだ。
先ず三人は、先日パンに出会した場所へと向かった。
そして、その場所を拠点に、辺りを見回ったのであった。
「しかしケイロンってのは予言者みたいな奴だな」
マイクの問いに、ヤニスは頷きながら答えた。
「ああ……。しかし全てが分かるって訳ではないようだ。それに、かなりの上から目線で、“答えは己で見つけよ”感がある。賢者と崇められたり、はみ出し者と蔑められたり、よく分からない奴だ」
ヤニスはぼんやりと梟を思い浮かべたが、余り意味はなかった。
マイクは、これまでの経緯をなぞるように語り出した。
「ケンタウルスの考える説が正しいってんなら、天界や冥界の神ってのは、どうしようもなく暇な連中だな。
俺達の罪は仕方ないとしても、それではエーレが余りに不憫だ。
カテリーニも、3日後の対岸の町との取引が終われば、冬の入口までは安泰だ。
急いでケイロンとやらの所へ向かおう。」
「そうだな。
ピエリアなら、ミリアから山に入れば丁度反対側だ。
あとはどうやってその洞窟を探すかだが……」
「静かに!」
二人の会話を遮って、ネオが囁き声を発した。
歴戦の戦士二人は、直ぐに臨戦態勢を取った。
辺りは森の音を残し、シンと静まり返った。
「変な音がしない?
人間の話し声のような」
若きネオの言葉に、マイクとヤニスは全ての神経を耳に集中させた。
極僅か、ほんの小さくではあるが、森のざわめきの中に確かに声のような音が混ざっていた。
「良く気が付いたな」
ヤニスの言葉に、ネオは控えめに嬉しがった。
「しかしこの音が声であるなら、それは……」
言葉にしながら、マイクは先日の事を思い浮かべた。
それはネオも同じであった。
「調べるより他なかろう!」
三人の中で唯一、まだパンと会ったことの無いヤニスは、恐怖を思い出す二人に、目力で檄を飛ばした。
三人は其々地面に降り、馬を木に繋ぎ、姿勢を低くして、慎重に声の方へと近づいた。
張り詰める緊張の中、歩を進める度に音は次第に大きく聴こえ、それが確実に何かの話し声だと分かった。
その瞬間。
「伏せろ!」とマイクが大きな声を上げ、ヤニスはスッと、ネオはマイクの大きな手で潰されるようにしゃがんだ。
と同時に、一本の矢が、三人の頭上を掠め、そのまま後ろの木を突き破った。
大きく荒れる呼吸を必死に潜める三人に、今度はしっかりと声が聞こえてきた。
「馬鹿野郎!
そいつらはお前が、ケイロンに案内を頼まれた人間じゃないのか?」
「何だと!?
避けられたと思うか?」
「お前の矢が避けれたんならそりゃ、英雄になってもおかしくないわな」
「やっちまった!
おい!お前たち!大丈夫かい?」
三人は、コチラに向かって来るナニかの気配に、身構えた。
そして、背の高い茂みの奥から、騒がしい蹄の音と共に、一頭のケンタウルスが現れた。
三人は予期せぬ出会いに息を呑んだ。
更に少し遅れて、その後ろからのっそりと、パンが現れた。
「やあ、また会ったな人間。
酒でも酌み交わす気になったか?」
マイクはこの再会に自然と力んだが、何とも奇妙な気持ちになった。
三人の前に現れたケンタウルスとパンは、見るからに酒に酔っていたのだ。
森の中で一杯ヤッてました。
このケンタウルスってそうだよね?
【次回】まぁ一旦呑みましょう!
お楽しみに。
【固定】
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是非続きもお楽しみ下さい。
登場する名称一覧
【キャラクター】
・カロス(ケンタウルス)
・エーレ(神の器?)
・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)
・マイク(伝説の英雄)
・レナ(ケンタウルスの女戦士)
・ターレス(ケンタウルスの族長)
・ソフィア(ケンタウルスの少女)
・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)
・ルカ(マイクの息子)
・ネオ(若い狩人)
・ミト(老いた狩人)
・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)
・レア(大地の女神、レナの師)
・アキレウス(昔の英雄)
・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)
・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)
・ネッソス(レナの父)
・アイネ(レナの母)
・ヘルメス(天界の死神)
・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)
・タナトス(冥界の死神)
・狭間の獣(タナトスの下僕)
・ニンフ(精霊の総称)
・サテュロス(笛を吹く半人半獣)
・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)
【場所・他】
・ミリア(エーレが住む山奥の町)
・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)
・パライオ(山の入口の町)
・レアの泉(女神の泉)
・ピエリア(ミリアから山を超えた先)
・モスコホリ(ミリアの隣町)
・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)
・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)
・アテネ(スパルタの敵対勢力)
・天界(天空の世界)
・冥界(地底の世界)
・禁則の地(天界と繋がる場所)
・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)
・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)