〜去りゆく背中〜
マイク達の下にネオが訪れる。
いざ三人は森へと向かう。
【固定】
始めまして、三軒長屋 与太郎です。
ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。
後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。
ルカは三頭の馬を家の入口に並ばせ、馬具や荷物を括り付けていた。
ネオは実に爽やかに登場した。
「やあルカ、マイクさんが呼んでるって?」
ルカは準備の手を止めず、首の動きだけで家の中を示した。
「何だルカ、いやにテンションが低いじゃないか。
らしくないぜ。
マイクさんに怒られでもしたかい?」
ルカはネオを見つめながら答えた。
「町のすぐ近くにサテュロスが出たってのに。
今この町で呑気なのはネオくらいだよ」
そう言われたネオは、褒められでもしたかのように「ありがとよ」と満面の笑みで、家の中へと入って行った。
「呼んだかいマイクさん」
場違いなネオの陽気に、マイクは呆れた様子でヤニスを見やり「呼んだよ」とぶっきらぼうに答えた。
「俺達は今からサテュロスの所へ行く。
何やらパンと呼ばれるものだったそうだが。
お前も付いて来い」
瞬く間にネオから陽気が失せた。
「何だって?
でもアイツは去って行ったじゃないですか」
ネオはあからさまに行きたく無さそうであった。
「だから今俺達が行って、本当に居なくなったか確認するのさ。
そうすれば町の皆も安心するだろ」
「でも…」とネオは何とか断る理由を探していた。
そして見つけた。
「でもマイクさんが町を離れるって事は、俺達が町を守らないと!
俺の剣術が役に立つのは知ってるだろう?」
「ああ知っているさ。
お前の剣捌きの速さは誰にも追いつけん。
戦う前に膝から崩れ落ちなきゃな」
ネオの画策は正に崩れ落ちた。
「どの道お前は、どちらに付いても足手まといだ。
それならせめて、このマイク様に付いとけって話だ」
「そんなあ…」と項垂れるネオに、ヤニスは「諦めろ!」と笑いながらネオの背中を叩いた。
各々装備を再確認して外に出ると、三頭の馬は素晴らしく準備されていた。
いつにも増して見事な馬の佇まいに、ヤニスは「流石だな」とルカの肩を叩こうとしたが、ルカはそれをヒラリと躱した。
「ごめんなさいヤニスおじさん。
準備してる時に肩を痛めちゃったんだ」
「それは悪かった。
でもありがとよ」とヤニスは肩を叩く代わりに、感謝の言葉を残した。
三人は其々の馬に跨り、マイクが「留守を頼むぞ」と告げると、ルカは小さく頷いた。
馬を走らせながらヤニスは思った。
(確かにルカの奴、やけに大人しかったな。
しかし来る時は急いでいたから気付かなかったが、町の人達も余り生気が無いように見える。
これもパンの仕業なのか)
ヤニスの考えを悟ったように、マイクが話した。
「多分俺も同じ事を感じている。
だがそれなら尚の事、森を調べるのが最優先だ」
ヤニスはその言葉に同意し、馬の速度をひとつ上げた。
ネオは前を走る二人を、黙々と追うに徹した。
三頭は勢い良く町を飛び出して行き、ルカは去りゆく三つの背中を、ずっと見つめていた。
ネオの剣術は国随一です。
爽やかイケメンです。
でもとってもビビりなのと、余り頭は良くないです。
【固定】
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是非続きもお楽しみ下さい。
登場する名称一覧
【キャラクター】
・カロス(ケンタウルス)
・エーレ(神の器?)
・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)
・マイク(伝説の英雄)
・レナ(ケンタウルスの女戦士)
・ターレス(ケンタウルスの族長)
・ソフィア(ケンタウルスの少女)
・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)
・ルカ(マイクの息子)
・ネオ(若い狩人)
・ミト(老いた狩人)
・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)
・レア(大地の女神、レナの師)
・アキレウス(昔の英雄)
・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)
・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)
・ネッソス(レナの父)
・アイネ(レナの母)
・ヘルメス(天界の死神)
・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)
・タナトス(冥界の死神)
・狭間の獣(タナトスの下僕)
・ニンフ(精霊の総称)
・サテュロス(笛を吹く半人半獣)
・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)
【場所・他】
・ミリア(エーレが住む山奥の町)
・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)
・パライオ(山の入口の町)
・レアの泉(女神の泉)
・ピエリア(ミリアから山を超えた先)
・モスコホリ(ミリアの隣町)
・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)
・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)
・アテネ(スパルタの敵対勢力)
・天界(天空の世界)
・冥界(地底の世界)
・禁則の地(天界と繋がる場所)
・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)
・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)