〜もうひとつの旅路〜
一方その頃ヤニスは…。
カテリーニに脅威が迫る？
【固定】
始めまして、三軒長屋 与太郎です。
ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。
後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。
一方その頃、ヤニスはケイロンの指示に従い、森の中で護られていた馬車の荷をミリアに届け、概ねの事情を説明した後、すぐにカテリーニを目指していた。
いくら自分は狙われないと言われたものの、カロスの説が正しければ、我々人類の……もとい、ミリアやカテリーニの危機であることに違いなかった。
ヤニスはカテリーニに着くと、急ぎマイクの元へと向かった。
昨日の今日で戻って来たヤニスに、マイクは驚きと共に、不測の事態を察した。
「何があった、ヤニス？」
マイクは息を切らすヤニスに、一杯の水を差し出しながら問うた。
出された水を一気に飲み干すと、ヤニスは事の成り行きを丁寧に説明した。
「そうか、エーレが……」
テーブルの反対側に腰を下ろしたマイクは、眉間に指を当てて俯いた。
「ただ、全てが真実と決まったわけではないとも言っていた。 あくまで仮説だとな」
ヤニスは保険となる言葉を付け加えた。
マイクは徐ろに顔を上げ、ルカへ指示を叫んだ。
「麦酒を二つ頼む！」
「おいおい、こんな時に……」
たじろぐヤニスをよそに、マイクは既に何かを決断した様子であった。
「こんな時も何もあるか！ やることは決まってるじゃねぇか。 元々俺たちは、ルカとエーレを守るために戦士を辞めた。 そして今、俺たちはルカとエーレを守るために、再び戦士となる。 ただそれだけさ」
（相変わらず頼もしい奴だ）とヤニスは感心した。
「それもそうだな」とヤニスは、テーブルに置かれた麦酒をマイクの目線へと掲げ、マイクはそれに自分の麦酒をぶつけて、二人同時に呷った。
その様子を、ルカは心配そうに……いや、少し憐れむような目で見つめていた。
豪快に麦酒を飲み干したジョッキをルカに渡すと、マイクは再び喋り始めた。
「それで、ケイロンってのはこの後どうしろと？」
マイクの問いに、ヤニスは首を振って答えた。
「分からん。 ケイロンには、お前の所へ戻って力になれとしか言われていない。 カロスというケンタウルスは、カテリーニに着けばケイロンからの“暗示”があるだろうと言っていたが、今のところそれも無い」
悩む二人に向けて、唐突にルカが口を開いた。
「二人ともすることが無いのなら、サテュロス退治にでも行ってくれよ。 親父の話を聞いてから、町のみんなが怖がってるんだ」
ルカの言葉は一理あった。
「確かに、今すぐ解決すべき、近場の困難かもな」
ヤニスは納得したが、マイクは何かを感じたようで、納得しきれない様子だった。
「お前らしくないなルカ。俺たちに発破をかけるなど」
マイクの発言の意図は全く分からなかったが、父だからこそ感じるものもあるのだろう……とヤニスは思った。
「何言ってるんだい親父？ 相手は神様みたいな奴らなんだろ？ いくらなんでも、俺だって怖いさ。 ただ、親父たちがやられる所は想像できないってだけさ」
ルカの言葉にヤニスは（全く以ってその通りだな）と頷き、マイクも「確かにそうだな」と大部分は納得した様子だった。
マイクは徐ろに立ち上がると、ルカに向けて指示を出した。
武器を磨き、荷物は最小限に。
馬は三頭、それにネオを呼べ。
的確に指示を飛ばすマイクに、（こいつの切り替えと計画の速さこそが、英雄たる所以だな）とヤニスは再び感心しながら、自らも立ち上がり、残りの麦酒を一気に飲み干した。
マイク達が麦酒を呑む場面を書く度に、私はビールが呑みたくなります。
彼等と違い、私はビールを呑むと全てのやる気を失うので、喉を鳴らして我慢するのです。
【固定】
お読み頂きありがとうございました。
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是非続きもお楽しみ下さい。
登場する名称一覧
【キャラクター】
・カロス（ケンタウルス）
・エーレ（神の器？）
・ヤニス（エーレの父に返り咲いた男）
・マイク（伝説の英雄）
・レナ（ケンタウルスの女戦士）
・ターレス（ケンタウルスの族長）
・ソフィア（ケンタウルスの少女）
・アグノス（ケンタウルスの若い戦士）
・ルカ（マイクの息子）
・ネオ（若い狩人）
・ミト（老いた狩人）
・ケイロン（ケンタウルスの英雄？）
・レア（大地の女神、レナの師）
・アキレウス（昔の英雄）
・アルカイオス（昔の英雄、後のヘラクレス）
・ヘラクレス（英雄の神、元アルカイオス）
・ネッソス（レナの父）
・アイネ（レナの母）
・ヘルメス（天界の死神）
・ヘルメスの使者（元ニンフの魂）
・タナトス（冥界の死神）
・狭間の獣（タナトスの下僕）
・ニンフ（精霊の総称）
・サテュロス（笛を吹く半人半獣）
・パン（ニンフ殺し、ヘルメスの使い）
【場所・他】
・ミリア（エーレが住む山奥の町）
・カテリーニ（マイクが住む海の近くの町）
・パライオ（山の入口の町）
・レアの泉（女神の泉）
・ピエリア（ミリアから山を超えた先）
・モスコホリ（ミリアの隣町）
・ヘスティア（ケンタウルス達が集う場所）
・スパルタ（ヤニスやマイクが属した勢力）
・アテネ（スパルタの敵対勢力）
・天界（天空の世界）
・冥界（地底の世界）
・禁則の地（天界と繋がる場所）
・イボヴォリ（ケンタウルスの園にそびえる大樹）
・ヒドラ（九つの首を持つ毒蛇）
