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〜エーレの才能〜

 女神から告げられる新たなる事実。

謎は少しずつだが、着実に紐解かれて行く。


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 ひとしきり愉快に笑った後、女神レアは泉の水で創られたその姿を、ケンタウルス達の大きさまで縮めた。


先程見たやり取りのせいなのか、エーレは小さくなった女神の姿にも、禍々しい力を感じた。


少しでも触れると、自分の身体が消し飛んでしまう恐怖を感じたのだ。


しかしそこはかとない懐かしさも共存する……、全身をくすぐられるような気配だった。


「さて…」と女神は話し始めた。


 「先ず小さな所から始めよう。

カロスよ、その瘴気の祓い方は分かるな?」


カロスは軽く頷いた。


「山越えの途中にエコーの宿る大樹がある。

私は“エコーの言葉が分かる”」


「ほお『真似事まねごとエコー』か懐かしいな。

それに、お前が奴と会話出来るとは驚いた。

『ネーレーイス』に対して『オレイアス』、良い判断だ。

しかし、私の見識が正しければ、奴はお前達が思うよりも強き精霊だ。

充分に心して行くと良い」


エーレは飛び交う言葉が全く理解出来ず、ただ喋る者を目で追うのに徹した。


「次にレナだが……」


目線を向けられたレナは、未だに慣れない様子で俯いていた。


「ターレスの言った事は真実だ。

私が保証しよう。

ここに泉を湧かせた時、微かにではあるが、狭間の獣からヘラクレスの気配を感じた」


レナは遂に顔を上げ、カロスも驚いた。


「ヘルメスの使者?」というカロスの問いに「残念ながら両方だ」と女神は答えた。


「ヘルメスの使者からも、タナトスの下僕からもだ。

泉が完成した瞬間に気配を隠しおったから、真の魂胆は掴めんかったがな」


エーレは相変わらず、目の前で交わされている会話の意味が分からなかったが、自分を追っている者の列に、英雄ヘラクレスの名が加わったことだけは分かった。


 「さてお前の番だ」


そう言うと、女神は身体をエーレに向けた。


エーレは酷く緊張した。


今から自分の世にも恐ろしい本性が暴かれるのではないか?


その突きつけられた真実に、私は耐えられうるのであろうか?


そう思い息を呑むエーレに、肩透かしな言葉が降ってきた。


「私にも分からん」


その言葉にエーレは少しだけ寿命が延びた気がしたが、ケンタウルス達はまたしても二頭同時に大きな溜め息をついた。


「何だ?不満か?」と女神に煽られ、二頭は即座に首を振った。


「分からんが……私は全てな気がするのだ。

お前達やターレス、そしてケイロンの考えている事全てだ。

全てが誤りのようで、全てに正解が散りばめられている……、そんな気がな。

しかしそれを紡ぐ何かが足りない。

故に、分からぬのだ」


女神はじっとエーレを見つめながら話したが、ここで顔を上げケンタウルス達を見た。


「しかしだカロス、お前やケイロンの考える『神の器』には、私は反対だ」


カロスは、エーレに聞かれるのを防いでいた秘密の言葉が、余りにも唐突に飛び出したことに慌てた。


しかしその言葉の意味が全く分からない様子で、口を開けて女神を見るだけのエーレの姿に、胸を撫で下ろした。


「私は泉の姿で、直接この娘に触れたからこそ分かる。

揺らぎを感じないのは、ただ全てのものから隠れようとする、娘の産まれ持っての才能だ。

その才能が少々神懸かってはいるがな」


エーレは褒められているのか貶されているのか分からず、何となく微笑んでみた。


「しかし、では何故、貴女はこの娘を受け入れたのです。

ただの人間が、貴女の泉に触れられる筈がありません」


カロスの問に、女神は何とも抽象的な答えを告げた。


「そうだな、私にも不思議だ。

ケイロンは、娘が神の器である可能性に賭け、私に触れることが出来ると思ったのであろうが、今その時を思い出してみても、私はただ何となく、自分の子供や兄妹の様な親しみを感じただけだ。

母性だよ……カロス」


全く予期せぬ言葉に、カロスは思考の手綱を外され、レナはただそっと、その光景を見つめていた。


そしてエーレの頭の中には「貴女がお母さんなの?」と、実に大きくて立派な〝?〟が生まれた。

 物語上『理由のわからない会話』の為に登場させたので、名称一覧に載せませんが、ネーレーイスは海の精霊、オレイアスは山の精霊です。

そして山の精霊『エコー』は皆様ご存知、そう木霊です。

だから真似事エコーなのです。


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・カロス(ケンタウルス)

・エーレ(神の器?)

・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)

・マイク(伝説の英雄)

・レナ(ケンタウルスの女戦士)

・ターレス(ケンタウルスの族長)

・ソフィア(ケンタウルスの少女)

・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)

・ルカ(マイクの息子)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)

・レア(大地の女神、レナの師)

・アキレウス(昔の英雄)

・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)

・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)

・ネッソス(レナの父)

・アイネ(レナの母)

・ヘルメス(天界の死神)

・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)

・タナトス(冥界の死神)

・狭間の獣(タナトスの下僕)

・ニンフ(精霊の総称)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)

・エコー(山の精霊、別名木霊)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

・レアの泉(女神の泉)

・ピエリア(ミリアから山を超えた先)

・モスコホリ(ミリアの隣町)

・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)

・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)

・アテネ(スパルタの敵対勢力)

・天界(天空の世界)

・冥界(地底の世界)

・禁則の地(天界と繋がる場所)

・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)

・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)

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