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〜女神レア〜

 旅立ちの前にひと波乱?

今まで静寂を貫いていた泉が立ち上がる?


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 カロスたちが旅の出発に向けて準備をしていた時、それは起こった。


先ほどまで波一つ立てず静かだった泉が、急に中心へ向かって波打ち始めたのである。泉の中央でぶつかり合った波と波は、荒々しい水飛沫を上げ、上空に散りばめられた水滴たちは、久しぶりの日の光を楽しむように煌めいた。


あまりにも不自然な現象に、エーレは目を奪われていたが、二頭のケンタウルスはそれが何を意味するのかを理解しているようで、苦々しい表情を浮かべていた。


特に小さなケンタウルスは「早く出よう!」と慌てた様子で、急いでその場を立ち去ろうとした。


「待ちなさい、レナ」


泉の中から声が響いた。


それは言葉というより、何かを奏でる旋律のような声であった。


声が響くと同時に、泉の水はひとつに集まり、巨大な人の形を成した。


エーレはただ呆然と、口を開けたままその水の塊を見上げた。


「そう急がずともよかろう。せっかくの久々の再会ではないか」


レナは強く目を閉じ、諦めた様子で振り向いた。


「そうね、久しぶりだわ、女神レア。お変わりなさそうでよかった。まさか貴女がこんな場所に泉を湧かせていたとは思わなかったわ」


「実に白々しいことよ。お前も相変わらず可愛げがないな」


ぎこちないレナの言葉を、泉の声が一蹴した。


「これって……」


一人だけ状況についていけていないエーレに、カロスは目の前の水の塊の正体を説明してやった。


「あれが泉の正体、女神レアだ。地上界でも随一の、大地を司る女神だよ。もちろん、これは力の一部を使った仮の姿だがな」


カロスは説明を終えると、膝をついてひれ伏す姿勢を取った。


「お久しぶりです、レア。我らのために、何も姿まで現さなくとも……」


「黙れ、カロス」


女神レアは、律儀なカロスの言葉を容赦なく遮った。


「何が“我らのため”だ。私は別に、お前たちのために姿を現したわけではない。それにお前が私に命令をし、私の力を顎で使ったことを、よもや忘れてはおるまいな?」


エーレは昨日、カロスの矢が泉の水をまとった場面を思い出した。


「しかし、あれは……」


カロスの弁解は受け入れられなかった。


「その上なんだ、その醜い瘴気は。よりによってニンフの印など、穢らわしいにも程がある。神々が与えし森の平和に、いささか甘えすぎたのではないか?」


カロスは言葉もなく項垂れた。


「それに、レナ!」


女神は怒りを緩めぬまま、今度はその矛先をレナに向けた。


「何が“思わなかったわ”だ。ターレスからすべて聞いて来たであろうに。事前に知っていながら、女神であり、師でもあるこの私の頭越しに動いたということは、“今や私のほうが上だ”というお前の意思表示と受け取っても構わんな?」


「そんな……」


レナは困り果てた表情を見せた。


あれほど逞しく、誇り高い威厳を纏っていた二頭のケンタウルスも、女神の前ではまるで赤子のようであり、エーレはその光景だけで、神の恐ろしさを十二分に理解した。


すると、女神は急に笑い声を上げた。


「ああ、スッキリしたわ。やはりお前たちをからかうのは、やめられない快感がある」


二頭のケンタウルスは同時に、大きな溜め息をついた。


エーレには笑う余裕などなく、ただ顔を引きつらせるだけだった。



 ちょっと息抜き回です。

レア(レアー)はギリシャ神話において、他の理不尽な女神達と違い、ただ必死に自分の子供達を護った正に母の鑑の様な女神だよ。

まぁその必死に護った子供のせいで、地上に落とされるんだけども…。

人生って難しいね。


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・カロス(ケンタウルス)

・エーレ(?)

・ヤニス(エーレの父では無かった男)

・マイク(伝説の英雄)

・レナ(ケンタウルスの女戦士)

・ターレス(ケンタウルスの族長)

・ソフィア(ケンタウルスの少女)

・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)

・ルカ(マイクの息子)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)

・レア(大地の女神、レナの師)

・アキレウス(昔の英雄)

・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)

・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)

・ネッソス(レナの父)

・アイネ(レナの母)

・ヘルメス(天界の死神)

・ヘルメスの使者(元精霊の魂)

・タナトス(冥界の死神)

・狭間の獣(タナトスの下僕)

・ニンフ(精霊の総称)

・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

・レアの泉(女神の泉)

・ピエリア(ミリアから山を超えた先)

・モスコホリ(ミリアの隣町)

・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)

・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)

・アテネ(スパルタの敵対勢力)

・天界(天空の世界)

・冥界(地底の世界)

・禁則の地(天界と繋がる場所)

・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)

・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)

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