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〜憤怒の咆哮〜

 森の中の不思議な泉で、遂にケンタウルスと娘が出会う。

しかし、先ずはこの窮地から如何に脱するのか。


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 ケンタウルスはさらに脚を速め、森の中を駆け抜けていた。風がたてがみを撫で、枝葉が彼の両脇をすり抜ける。


 自身が進む方角。彼は自らの行き着く先が分かっていた。だが……、それが故に腑に落ちなかった。


 彼を突き動かすのは、単なる自己陶酔ではなく、古の血に刻まれた“守護者”としての使命。森を乱す者は、ケンタウルスの種族への挑戦に他ならない。たとえそれが森の女神であろうとも。


 (大丈夫だ……森は依然、私の味方だ)


 ケンタウルスは確信し、疾走しながら鋭い眼差しで遠くを捉えた。既に矢を引き絞り、放つ瞬間を見極めていた。



 それより少し前、エーレは光を放つ泉に辿り着いていた。


 泉は穏やかな水面を揺らし、その中央から放たれていた光は、エーレが近づくと同時にゆっくりと水中へ沈んでいった。


 エーレは息を切らし、馬から転がるように降りた。二頭の若馬は反対側へ駆け去り、泉の静寂が彼女を包み込んだ。


 (ここが……目的地……?)


 しかし、安堵する暇はなかった。木々の陰から大きな“影”がゆっくりと姿を現し、エーレににじり寄ってくる。


 (この場所は……影を拒む?)


 エーレは淡い期待を抱いたが、それもすぐに打ち砕かれた。影はためらうことなく、彼女に向かって迫っていた。


 「泉に入りなさい」


 再び、あの声が耳に響いた。


 エーレは力の入らない身体を奮い立たせ、泉に手を伸ばした。


 「痛っ!」


 水面に触れた瞬間、鋭い痛みが駆け抜けた。


 戸惑うエーレに、声は優しく囁いた。


 「恐れるな。憎悪や恐怖を抱えたままでは、この泉はお前を受け入れない」


 エーレは呼吸を整え、心を静めた。先ほどの俯瞰視点で見渡した時の感覚を思い出しながら──もう一度、泉に手を伸ばした。


 今度は水は冷たくも温かくもなく、ただ静かに彼女を包んだ。


 エーレはゆっくりと泉に腰まで浸かり、影から少しずつ距離を取った。


 すると、影はエーレの姿を見失ったかのように足を止めた。


 (泉には入れない……?)


   次の瞬間、一筋の矢が音も無く影を背後から射抜いた。


 矢が貫いた瞬間、閃光が迸り、影の輪郭が揺らぐ。


 エーレは驚きに目を見開き、次の瞬間、森の中から巨大なケンタウルスが現れた。


 「レア!」


 ケンタウルスが力強く叫んだ。


 驚くべきことに、影を貫いた矢は空中で旋回し、泉の上空を飛び越えると、泉から立ち昇る水柱を通過して戻ってきた。水を纏った矢は再び影を貫き、見事ケンタウルスの右手へと戻った。


 ケンタウルスは迷うことなく矢を逆手に持ち替え、疾風のように駆け寄り、影を蹴り倒すと同時にその頭部へ鋭く突き刺した。



 一瞬の出来事だった。


 矢で貫かれた影は、輪郭が淡く揺らぎ、霧のように薄れていく。だが最後に、腕のようなものを伸ばし、ケンタウルスの右肩を掴んだ。


 「お前は……」


 ケンタウルスの瞳に、一瞬恐怖の色が浮かんだ。その瞬間、エーレには影が片方の口角を上げたように見えた。


 ケンタウルスの体から湧き出た怒りが、赤黒い霧のように立ち上り、彼は咆哮を上げた。


 「消え去れ!不浄なる者よ!」


 その言葉と共に、影は完全に霧散し、跡形もなく消え去った。

 ヒント:エーレが泉で感じた痛みは、ムカデに刺された感じです。

刺された事がない方は、クラゲでも結構です。

どちらも経験無い方は、指に針でも刺してみて下さい。


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・?(ケンタウルス)

・エーレ(平凡な娘)

・ヤニス(エーレの父)

・マイク(伝説の英雄)

・ルカ(マイクの息子)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・?(梟)

・?(影)

・?(声の主)

・?(光源の主)

・狭間の獣?(今回倒した影)

・レア(泉?)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

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