表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/95

〜招かれる者と招かれざる者〜

 ケンタウルス再登場。

娘との出会いはすぐそこか。


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 少しばかり時を戻し──


 ケンタウルスは岩山の頂から広大な森を見下ろし、真紅の鳥から告げられた不吉な予兆を捉えた。彼の鋭い眼差しは、山道を進む一台の馬車に向けられた。


 彼は人類の発明したこの乗り物を心の底から嫌悪していた。人間という未熟な生き物が、美しき馬の背に乗り、さらには荷車を引かせる……。それはケンタウルスにとって、見るに堪えないほどの醜悪な光景であった。


 表情に羞悪の色を浮かべながらも、すぐに思考を切り替えた。

 たとえ馬車が忌むべきものであっても、ただ道を進んでいる限りには、森にとっては特段珍しいことではない。


 だが、真紅の鳥が警告した“予兆”は他にあるはずだった。


 ケンタウルスは静かに目を閉じ、馬車を中心に森の気配を探った。


 そして、すぐにそれを察知した。


(何故“奴ら”が森の中にいる? しかもこの数に今まで気づかないとは……いったいどうなっている?)


 思考が巡るよりも早く、ケンタウルスは岩山を駆け降り、気配の向かう先へと猛然と駆け出していた。


 鬱蒼と生い茂る木々をかき分けることもなく、彼の進む道は自然と開かれていく。

 森はケンタウルスを守護し、彼の進行を妨げるものは何一つなかった。


 だが、その走りの中で、彼の胸には得体の知れぬ疑念が広がっていく。


(元来“奴ら”が群れをなすことはない……その上人間の命など、一体で十分なはず。なのにこの数……いったい何が起きている?)


 さらなる疑問が次々と浮かぶ中でも、ケンタウルスの速度は衰えることはなかった。


 その時、不意に気配の流れが変わった。


 ケンタウルスは即座に全身の筋肉を使って立ち止まり、再び目を閉じて気配を探った。


 そして、彼は驚愕した。


(森が導いているだと? いったいどうなっている? 人間の乗った馬車に、森が道を開くなど……)


 信じ難い事態に、ケンタウルスは激しく動揺した。


「森よ! 何をしている? あの導きの光源の主は誰だ!」


 声を張り上げて問いかけたが、森は静まり返り、返答はなかった。


 抑えきれない怒りを抱えながら、ケンタウルスは再び駆け出した。光源の主を突き止めるために。



 その頃、ヤニスとエーレはひたすらに森の中を駆け抜けていた。


 道中、エーレを若馬の背に移し、ヤニスは腰に差していた短剣で荷台を切り離した。

 大切な物資ではあったが、二人が無事に辿り着けなければ意味はない。


「このまま真っ直ぐ進んで良いのか?」


 ヤニスは老馬を先導し、エーレを乗せた若い馬に並んで問いかけた。


「ええ……もうすぐ……そんな気がするの……」


 頼りない返事にヤニスは思わず声を荒げた。


「そんな気がするってお前、ああクソ、何なんだ全く!」


 しかし、すぐに父としての優しさを取り戻し、精一杯の言葉を娘に投げかけた。


「とにかくしっかり捕まっていろ! この道の先に女神様でもいるって言うなら、必死で連れて行ってやる!」


 その時だった。


 ヤニスたちが進む先に、一つの影が現れた。


 それは先程から追いかけて来ている“影”と同じように見えたが、その陰影は一段と濃く、禍々しさを増していた。


「クソ……前にもお出ましか。優秀な軍師がついてるらしい」


 ヤニスは皮肉を呟き、影を睨みつけた。心を冷静に保とうと、無意識に手綱を握る手に力がこもる。

 ケンタウルスは高さ三メートル超えです。

前脚を上げたら四メートル近いです。

お気をつけて。


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・?(ケンタウルス)

・エーレ(平凡な娘)

・ヤニス(エーレの父)

・マイク(伝説の英雄)

・ルカ(マイクの息子)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・?(梟)

・?(影)

・?(声)

・?(光源の主)

・?(新たに現れた影)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ