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邪道、唯我独尊  作者: YUUKA
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卑怯人間

私は卑怯な人間だ。

最低でも、最悪でもない。卑怯という言葉がぴったりだ。


女子高の出身だからだろうか、女の戦いというものに慣れている。(誤解しないでいただきたいが、平和な学校は平和だと思う。)


Aの前ではBについてヒソヒソ話題にしたかと思いきや、Bの前ではAについてさもアイツを知っているかのように捲し立てる、といった具合に。



Aの意見もBの言いたいこともわかる。お互いに根拠があるのだ。言い分というやつだ。

そしてその間にひとり、良い顔をして、自信の身を守ろうと必死なヤツが騒いでいる。



なんとみっともない姿。


もっと純粋な生き物に生まれたかった。

いっそ、潔く敵に噛み殺される弱い動物に。




人間とは、実に面倒な生き物だ。

もっと言えば、社会人と言われる分類の人間。


他人の顔色を窺え、と誰かに言われた記憶はない。ただ、そうすべきだ、と頭のなかで響いている。

これが、自身を守るための、人間なりの本能と考えられるのかも知れない。

理性に見える行動も、結局は本能からくる。




では逆の世界を想像してみよう。

嘘を使わずに、顔色を窺わずに、自身の身を守ろうとした場合。

率直な意見を相手にぶつけ、相手も素直に反論する。極端なイメージだが、お互い沸々と怒りが湧き、片方が理性を失い力に頼り始める。

物理的な争いへと発展しかねない。



だが、全ての人間がここで力に頼るわけではない。

中には一般的に「臆病者」といわれる人種が存在し、戦うことよりも逃げることを優先する。

そんな彼らは相手と距離を置くか、相手が怒り狂う前に笑顔を貼り付けてその場をやり過ごす。

これを繰り返しているうちにその「臆病者」たる人間は、「卑怯者」と呼ばれるようになる。




だが考えてもみてほしい。

他人の顔色を窺って笑顔を貼り付けながら面倒なことを処理していく卑怯者が一定数いるからこそ争いが抑えられているとなると、今のところ人間社会には必要不可欠である。



善い人間、悪い人間と分類する前に、大多数の人間がそこそこ卑怯者であるからこそ、平和な今がある。


「卑怯者!」と言われたときには、「お前もな!」あるいは、「俺は世界の平和を守り抜く勇者だ!」と叫んでおけばよい。




ここで問題があるとすれば、卑怯の「質」だ。



いじめで相手より優位になろうとしたり、詐欺で金を騙し取ろうとするような場合、確かにそいつは卑怯者かもしれないが、それ以前に犯罪者であるから論外だ。


他に分かりやすい例えで言うと、浮気か。


彼氏彼女、夫や妻といったそう簡単には切れない関係を端に寄せて別の人間と関係をもつ。

色々なシチュエーションや言い訳がありすぎて一概には言えないが、多くの場合は発覚したら戦となり地獄絵図と化す。

これは見るからに質の悪い卑怯だ。

人を傷つける可能性が大いにあるからだ。



一方で、質の良い卑怯とは何か。


例えば、人の話をよく聴く中間管理職。

管理職というだけで威張るのは決して良くない。

ここで求められるのは、意見の食い違いが生まれたとき、客観的に、関わる全ての人の意見を聴き、反論の前にまず理解することである。


これが実際に行なわれている一場面を切り取ると、どの人の前でも笑顔を向け、頷き、理解を示そうとしている、まさに卑怯者である。




私自身は、どんな卑怯者だろうか。

卑怯者であることにはもう変わりはないのだから、せめて、人を傷つけるような人間ではありたくない。



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