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光秀、下天の夢を見る  作者: 狸 寝起
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05 布陣

「殿、そろそろ布陣を決定致せねば。」


「そうだな、中央は言うまでもなく我が本陣だ。そして塹壕に沿って横陣を敷く。」


諸将にも異論はない。ごく常識的な布陣だ。


「説明した通り、羽柴勢は一当てしての早期撤退の可能性が高い。したがって敵の殿軍しんがりは東端の部隊になるだろう。一番しぶとい部隊が我が右翼の野々垣川側に配置されるはずだ。」


諸将を見回す。斎藤利三とアイコンタクトを交わす。


「よって、右翼は斎藤利三に任せ本陣より鉄砲隊三百を追加で増援する。」


斎藤利三が大きくうなずく。一番の激戦地が予想され横陣の弱点でもある端だ。斎藤利三なら盤石だろう。


「次に左翼。左翼は追撃の頃合いを見極める難しい判断が必要だが、ここは光春。傷はどうだ、やれるか。」


「お任せあれ。」


「うむ。左翼には追撃で手足となる騎馬三百を本陣より増援する。この騎馬隊は可児吉長、貴公に預ける。光春の指示をよく聞き手柄を挙げよ。」


「はっ!!」


「中央正面には伊勢貞興、藤田伝五行政の両名を配する。開戦直後に敵の攻撃が集中しよう。中央が突破されては横陣は崩壊し大敗する。無理に敵陣を突破する必要はないので十分敵を引き付け冷静に弾き返せ。」


両名も心得ているといわんばかりの表情だ。まあ、この二人なら心配なかろう。

さらに中央左翼に並河易家と松田政近。中央右翼に明智光忠、溝尾庄兵衛茂朝を配する。

増援を別にして各隊2000。本陣5000(増援に600派遣済)総勢約2万1千。現状では最善の布陣だろう。


挿絵(By みてみん)


諸将が持ち場に散ってゆく。最後まで残っていた可児吉長がなにか言いたそうだ。


「どうした、なにか気になるのか?」


「いえ、戦は勝ちます。ただ、敵の退路ですが、東に引き返さず逆に西に突破して但馬から播磨へ逃げる可能性が無いかと…」


ほう?まだ若いに似合わず戦場を大きく見ているな。実際後方の黒井城を拠点にしていた赤井直正が一時期そのコースで但馬へ侵攻していたことがある。論理的には十分ありえるのだ。


「…うむ。そうだな、無い…とは言えないし、実際お主ならやれるかもしれぬ。だが、敗戦の戦局でさらに前進して突破できるのはよほどの剛将が強兵を率いている場合だけだ。敗戦が見えてくれば兵が勝手に来た路を逃げだすのでな。まして羽柴勢は丹波路は初めて通る。不案内の路を一目散に前進できるような剛の者は羽柴には居るまい。できるとすれば、薩摩の島津義弘殿ぐらいだろうな。」


「…島津義弘…殿…」


「うむ。お主も名前ぐらいは知っていよう。10倍にならんとする敵勢をたびたび撃破している猛将だ。だがただの猛将ではない。難治の祁答院けどういんを見事に治める内政手腕もある知勇兼備の見本のような男だ。吉長には義弘殿のような武士になってもらいたいと思っている。」


「島津義弘殿。心に刻んでおきまする。まずはこの戦いで武のほうを磨きますれば。」


「ふふ。やりすぎて討ち死にするでないぞ。そうだ、この戦い、いちいち首など取る暇はあるまい。敵の首を落としたら口にこの笹の葉をつっこんでおけ。笹ならいくらでも生えているからな。それで論功行賞の対象にしてやろう。」


「心得ました。では行ってまいります。」


本陣付の騎馬隊300を率いて左翼に去っていく可児吉長を見送る。負けることは無かろうがすでに歴史は変わっているからな。この戦いが終われば人材集めにかかろう。現状でも十分な人材が揃っているが、歴史の修正力が働けば宿将たちが次々没するという、落とし穴もあり得ない話ではないのだ。

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