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光秀、下天の夢を見る  作者: 狸 寝起
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55-2 軍議(作戦)

伊勢方面の街道があまりに多すぎて書ききれず、かなり省略してます。省略しないととても見にくくなるので。

尾張南部も輪中だらけでいちいち書き込めないため、ざっくり大きな川だけ入れてます。

いずれ造らないといけない、濃尾国境付近の長良川・木曽川の流路も今よりだいぶ複雑で頭痛い。

「戦略目標は共有できたようなので、次に作戦の説明に入る。幾多の戦闘正面があるが、まずは越前-美濃街道からだ。」


越前-美濃街道は長良川の戦いで敗れた光秀が一乗谷の朝倉家へ落ち延びた経路だ。柴田勝家がこの道もそこそこ整備した結果、当時よりは使える道になっている。


「ここ、大野郡にはあらかじめ我が家中の並河易家を封じてある。これに越前の他の勢を加えて一軍と成し郡上八幡城方面を攻める構えを見せる。だがこの戦場でも本気で攻めはしない。信孝方が守備せず放棄していれば進出するが、敵が守備している場合はゆっくり付け城を築き、のんびりと対陣してもらう。」


一人の男が手を上げる。


「この方面はかなりの優勢になる上、家康も出てこない場所ですが、それでも本気で攻めないと?」


疑問を呈したのは佐々成政と共に来ている佐々清蔵。佐々成政の甥に当たるらしい。北陸方面が長いので越前美濃街道の現状にも詳しいのだろう。


「そうだ。先に述べた戦略的理由の他に、信孝には織田家の家名を継がせようと思うているのでな。もちろん、現状のような大封は与えられぬが。」


皆が意外そうだ。元の主筋である織田家は光秀が最も滅ぼしたいはず………と思い込んでいるのだろう。実際は信孝が恭順してくるのであれば、別に織田家の名前が残ってもなんら問題ないのだが。まあ、信雄のような周囲に迷惑ばかりかける者は退場させねばならんが。


「なるほど。それで街道を抑えておくだけで十分と。」


まだ半信半疑のようだ。それは仕方ない。裏で丹羽長秀が調略にかかっている事はこの場では明かせない。なにかスッキリしないと感じるのは当然だ。


「次に伊勢方面だ。こちらは大和、伊賀、南近江から伊勢中部に侵攻して伊勢の中南部を切り取る。」


皆が当然だという顔で頷いている。縦に長い伊勢の真横を食い破る策で常識的なものだからな。伊勢は伊勢神宮へのお参りの影響で、街道が多く有る。東西方向へ走る街道も多く攻める側は進撃路をかなり自由に選ぶことが出来る。家康もここまで出張ってくることは困難でその面でも脆弱ぜいじゃくな地域だ。さらに伊勢中央付近に安濃津城がある。かなりの堅城であり、ここを取れば長期持久も楽だ。


挿絵(By みてみん)


「伊勢方面軍の当座の目標は安濃津城奪取になろう。相手はあの信雄殿だ。だが気を抜いて足元をおろそかにしないように。家康の入れ知恵程度は有るやもしれぬのでな。この方面は南近江に所領があり土地勘のある蒲生殿を主将、そして我が嫡男の光慶を副将としたい。この組み合わせは先の戦で経験しており安心できよう。蒲生殿、此度も宜しくお願い致す。」


「お任せあれ。もう光慶殿が主将でも十分と思いますが、左大弁様はどこまでもかとうござる…。」


光慶が副将なので大方の諸将が驚いている。実力主義なら当然と思うのだが。嫡男は神、次男三男はゴミという時代だ。致し方ないか。


「伊勢方面の戦いでは明智海軍…もう陸地の見える水域でなく、大洋も航海できるので海軍と名前を変えている…その海軍も伊勢沿岸を荒らし回って支援してもらう。土橋重治殿、お願い致す。」


土橋重治が黙って平伏する。


「そして中央の美濃方面は大垣に集結。状況により長良川付近まで前進、とりあえずそこで敵の配置を見ることになる。美濃と尾張、いずれに家康が出てきているかで進軍方向がかわる。家康がいる方向へ進軍して睨み合うためだ。」


「家康が三河まで引き、誘い込むは如何に?」


言いにくそうな上方言葉で懸念を表したのは長曾我部信親。史実では戸次川の戦いで悲運の最期を遂げている。将来の有る若い跡取りに経験を積ませようとの元親の親心が透けて見える。


「三河へは追わぬ。無いと思うが、その場合は家康を放置して信孝、信雄の領地と尾張を完全に領国化する。織田を見殺した家康は天下の信を失い二度と誰からも相手にされなくなる。さらにそのときは甲信の支配地も失うことになる。のう真田殿。」


「いかにも。完全にジリ貧でござるな。駿遠三は皆大きく海に面してござる。明智海軍に一方的になぶられ民心も離反、特に居城の浜松城は海沿いなれば居城からも追い出され惨め際まる最後となりましょうな。」


諸将も納得顔だ。この戦いで海軍力が如何に重要かが再認識される事になるだろう。


「残りの2方面のうち北の甲信方面は真田殿に一任いたす。家康主力が出てくる事は、まず有るまい。存分に腕を振るわれよ。」


真田昌幸が黙って頷く。が、口元がどうにも緩んでいる。面白くて仕方がないようだ。


「最後、東側は北条殿の1手だけになる。勿論、海軍の支援は行うが、陸の援軍の送りようがない場所だ。いろいろ思われる事もあろうが、甲斐は放置して駿河方面をお願いしたい。」


「すでに国割も聞かされて御座ればご心配無用で御座る。一寸刻みに興国寺城へにじり寄りましょう。」


北条氏邦が応じる。氏邦であれば手堅く戦うだろう。興国寺城はなかなか抜けぬだろうが徳川のかなりの戦力を拘束こうそくする事になる。


「他に質問はなさそうだな。此度は決戦に応じぬとは云え、小競り合いはむしろ推奨している。実戦調練と思って無理にならぬ程度に励んでもらいたい。装備や兵糧に不安のある諸侯は遠慮なく、此処に控える小西行長に相談されよ。善処いたす。では、順次出立いたすとしよう。」


本気で戦うなという、異様な指示だがどうやら納得してもらえたようだ。さて、家康はこの策を読み取れるだろうか?







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[一言] 真田がすげー楽しそうだ
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