あの子の…
平山の額に脂汗が滲み出ていた。
もはや平山には人の目を気にする余裕はない。排泄欲と尿意を抑えるため、両手でクシャクシャのスカートを掴み、肩で息をし、顔は真っ赤になっている。腰はクネクネと動き、足は貧乏揺すりが段々と酷くなる。
このままでは必ず平山はおしっこを漏らしてしまう。
私は自分の体の中から言いようもない気持ちが湧き出ていることに気づいた。
何故、私は平山のことを心配しているのだろうか。平山はただの転校生だ。ただ席が隣になっただけでそこまで深い繋がりはない。平山がおもらしをしようが知ったことはない。平山がスカートを濡らそうが、黄色い湖を作ろうが、別に私は恥ずかしくないし、私に害は及ばない。人気者の転校生がおもらしなんて大スキャンダルだが、私にとってそんなしょうもないことに興味なんてない。
でも、平山がおしっこを漏らしてしまう姿を想像したくなかった。あの細い目の平山がおもらしする姿を見たくはなかった。心がぎゅうとなる。こんな感覚は久しぶりだった。
そんな時だった。平山が私にだけ聞こえるぐらいの小さな声で「ぁぁ…」と呟いた。平山のスカートから黄色い液体が溢れだした。
シュシュシュウィー、グシュグシュシュイー、
平山の真っ白な上靴が黄色に染まっていく。おしっこ、朝から我慢していたのだろう。トイレに行きそびれたのだろう。その量は大量だった。
平山は真っ赤に染まった顔をおしっこまみれの両手で覆った。誰の目から見てもおもらししたのは明らかだった。
そんな彼女を見ているといきなり、私は目の前が真っ暗になり、視界が狭まり、世界が反転し始めた。
そこからの記憶が私にはない。