あの子と…
きっかけは何故だろうか。突然訪れるものだ。絶えずくるそのチャンスを逃す人もいれば、また訪れるチャンスを物にする人もいる。人間とは不思議。でも、愚かで悲しい生き物であると思う。
私はどうだろうか。前者な気がする。いや、でもあのときは後者だったのかな。歯車の狂った機械が何故だか、一滴の油によって円滑に動くように、あのときの行動は、私の人生に大きな影響を与えたと感じる。
桜の香りが風にのって窓から教室に入ってくる。高校2年ということもあり、昔のように桜を見るだけで高揚感を感じるなんてこともない。ただ桜餅を思い出すだけだ。どうせ友達もいないから、代わり映えのないクラスメイト。先生に胡麻をするのも嫌いだし、代わり映えのない担任。あの子が来るまでは無味無臭の生活だった。あの時までは。
「あの…今日からこの高校に転校してきました平山ゆいです…。よ…ろしくおねがいします…。」
まるでロボットみたいに動きがガチガチで、如何にも緊張しているとバレバレな転校生がやってきた。目は二重だが細い。髪型はショートカットでサラサラ。スタイルはどちらかといえば良い方だとは思うが、男ウケはしなさそう。なんだ。女子か。まあ、私と関わることもなさそうだけど。
うちの学校は珍しく自由席だった。まっさらな制服に身を包んだあの子は、空席となっている私の席の隣に案内されて座った。
そうして一時間目の世界史の授業が始まった。