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モノローグ
あれはいつの日のことだっただろうか。確か…高校2年生の春だったはず。
4月。寒さが和らぎ、ようやく春の陽気が出てきたと思ったら、かえってそれが殺伐とした満員電車をより一層うざったらしいものにしている。そんな中、きっちりとしたシワのない新しい制服やスーツを身に纏った、新生活が始まったばかりの初々しい学生や社会人が悪戦苦闘しながらぎゅうぎゅう詰めとなった電車と格闘している。なんのためにわざわざこんなことをしているのだろう?
私もそのうちの一人だ。高校は家から遠く離れたところにある。受験生のころ大した成績でもなかった私は特にやりたいこともなく、偏差値と評定が乗った参考書や他人に流されてこの高校を決めた。入学したはいいものの、社交性がなく、目標もない私は、交友関係なんてできるわけでもなく、お世辞にも充実した高校生活を送れているとは思えなかった。でも、そんなことは気にはならなかった。毎日同じ生活を繰り返すだけ。そんな日々を思い描いていた。