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夜明けをもたらす輝き  作者: 灰簾 時雨
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500年前…

 ミッドナイトの本拠地に、後々、紫の英雄と蒼の英雄と語り継がれる二人の英雄がたどり着いた。

 一人は夕焼け空を連想させる茜色の腕輪をつけ、その腕輪には藤の花を連想させる淡い紫色をした小さな宝石がはめ込まれていた。

 もう一人は晴れ渡った大空を連想させる空色の腕輪をつけ、その腕輪には透き通った海のような色合いをした蒼色の大きな宝石がはめ込まれていた。

 この二人の最も大きな違いは、腕輪と光り輝く宝石の違いもあるが、何より目を引くのは二人がそれぞれ身につけている武器であろう。

 茜色の腕輪と紫色の宝石を身に着けた者は、小ぶりでありながらも宝石と同じように紫に輝く二刀を、空色の腕輪と蒼色の宝石を身に着けた者は、己の身の丈をゆうに超える深海と表現するのが最も相応しい色合いを放つ大太刀を、身につけていた。



「ようやくここまで来たな。」

 ミッドナイト率いる軍勢を蹴散らし、残すはミッドナイトただ一人を倒すのみとなった状況で、ミッドナイトがいるであろう玉座に向かう途中、紫の英雄は蒼の英雄に突然語り掛けた。

 普段、誰からの問いかけに対しても一言、二言で済ませていた蒼の英雄は

「そうだな。」

と、一言だけで返答した。

 紫の英雄は最後の戦いであることに対し、知らず知らずのうちに緊張していたが、そんな相棒の性格を知っていたため、何時も通りのその反応に安堵した。

 相棒のたった一言だけではあるが、その一言で気持ちが落ち着いた紫の英雄は軽くその場で2、3回ジャンプすると

「さぁて、行きますか!」

 紫の英雄はそう言うと、残像すら見える速度でミッドナイトが待ち構えている玉座へと向かった。

「あぁ。」

 自分の一言で相方の緊張をほぐしたとはつゆ知らず、自分の返事が聞こえているかは別として、自分を置いて行った相方を追いかけるべく蒼の英雄も駆け出した。



 二人の英雄が勢いよく、通路の先で閉じられていた扉を開けると、蝋燭で明るく照らされ、まっすぐ敷かれた絨毯の先、部屋の一番奥、絢爛豪華な装飾が施された椅子に二人が倒すべき存在であるミッドナイトが座っていた。ミッドナイトは二人の姿を確認すると

「ここまでたどり着くとは、弱小なる者たちの英雄とされているからと甘く見ていたようだ。謝罪しよう。」

そう発言し、ミッドナイトは自ら席をたち、二人の前に立った。

「ミッドナイト!テメーもここで終わりだ。今から、隣の相棒とこの地に遥かなる太古から伝わりし神秘の宝石の力をもって、平和と夜明けを取り戻す。」

「お前を倒す。」

 二人の英雄はそれぞれ叫ぶと、お互いが手に持つ武器を構えた。

「ほう。我の下僕を倒すだけでなく、我の前に立つほどとは、何か特別な力でもあったのであろうと予測していたが、なるほど。スピネルとアクアマリンに選ばれた者たちであったか。実に愉快。だが、選ばれたくらいでは到底我には及ばぬぞ?」

 ミッドナイトはそう言うと、腰の鞘から黒曜石で作られたかのような漆黒の剣を抜き取った。その瞬間、周りの景色は一変し、蝋燭の火で煌々としていた部屋が真夜中のように暗くなった。

「上等だ。ならばこちらも宝石の力を使わせてもらおう。」

(普段一言で済ます無口な相棒が普通に会話をしている…)

「ん?何を不思議そうな顔をしている。早く準備しろ。」

「お、おう!」

 二人の英雄は武器を構えたまま言い放った。

「「宝石解放!」」

 その言葉とともに二人の腕輪にはめてある宝石が強く輝き、二人の体を紫と蒼の光が覆いつくした。

 時間自体はそれほど経っていないが、二人を覆いつくした光が収まった時、二人の見た目は変わっていた。二人とも髪と目の色が宝石と同じ色に変わったことに加え、紫の英雄は更に紫に輝く荒々しい翼と角さらに尻尾が生え、さながら神話でよく出てくる龍と人を合わせたような見た目に変わった。

 また、蒼の英雄は紫の英雄と異なり、蒼く輝く力強くもしなやかな尾に加え、両手両足の先に鋭いかぎ爪が出現し、まるで虎を連想させる見た目へと変化した。

「宝石の力を引き出せるとは、ますます驚かされる。では、お互いの準備も整った事だし始めよう。」

その言葉と同時に二人の英雄とミッドナイトはぶつかり合った。


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