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第3話:あたくしの特殊スキルを、1回だけ解放しますわ!(その1)

「…なるほど…」

「どうでしたの? エレンちゃんは助かりますの?」

「キルホーマン、どうなんだい?」

「…今回の喀血で死ぬ事はないでしょう…」

「命にかかわる病ではないんですのね!? よかった…」

「いえ、そう判断するのは、いささか早いのです。なぜなら、彼の寿命はあと1年だからです」

「2つ目の村、とおっしゃるから、何日か覚悟しなくちゃいけないかと思いましたけど、陽が落ちる頃までには到着できそうですわね」

「あとは、この林道を抜ければブドウ畑が見えてくるはずだよ。そして畑を抜ければ、すぐさ」

「なるほど…ラガヴーリンさんはこの辺りの土地には明るいようですね」

「まあね。それにこの周辺は土壌が肥沃だから、いいブドウが毎年育つんだよね。今年は気候も良かったから、美味しい果実酒が出来上がると思うよ」

「果実酒!? それは楽しみですわ!」

「おやおや、お嬢様はアルコールには懲りたと思っていましたが…」

「何をおっしゃいますの? あたくしの人生における楽しみの幅が広がったというですのに」

「アイラちゃんは甘いもの好きだから、酒豪にはなれないかもしれないね」

「こ…子供あつかいしないでくださる? そういうゴブおじだって甘党ですわよね?」

「ラガヴーリンさん…お嬢様の事を、アイラ『ちゃん』っとお呼びになるのですね…」

「他にどう呼んでいいかわからないんだよね。いやだと言われたらやめようと思うけれど。ちなみにオレ、まだあんたの事をなんて呼ぶか決めてないんだよね。何て呼べばいいかな?」

「わ、私は恐らく、ラガヴーリンさんより年下ですから、お好きにお呼び下さって差支えありませんよ…」

「ほんと!? じゃあ、そうだな…う~ん…。まあ、やっぱり思いつかないから、キルホーマンって呼ぶよ」

「…そうですか。ちょっと、安心しましたよ。いや、ちょっと残念でした…でしょうか…。わかりません…」



「やれやれ、日没前に到着できてよかったです」

「そんなに大きな村ではないのに、凄い人出ですわね」

「私も予想外でしたが、カフェの店主が言っていた例の収穫祭の影響なんでしょうね。行き交う人々の出で立ちからすると、他の国や地域の方々も少なからずいらっしゃるようです」

「…ところどころで祭りの準備をしているようですわね」

「近日中に開かれるのでしょう。お祭り前に到着できてよかったですよ。目的は情報収集ですからね」

「わかってますわ。でも、ブドウ踏みの美少女コンテストは楽しみですわね。あたくしもコンテストに出場しようかしら…」

「お嬢様、出場資格は未成年の少女だそうですよ。お嬢様はもう18歳ではありませんでしたか?」

「い、1歳くらいごまかせましてよ!」

「へへ、アイラちゃんは厚化粧だから余計年上に見られちゃうんじゃないの?」

「ゴブおじ! それはセクハラではありませんこと!?」

「ははは、ごめんごめん。祭りのコンテストが有名なのもそうだけど、この村は巡礼路の宿場のひとつらしいよ。だから、普段から色々な人がこの村を通過していくんだ。市場が楽しみだね。異国の食材とか手に入れられるかもしれないからさ。でも、問題は、このタイミングでオレたちが泊まる、空いている宿を見つける事ができるか、だね」

「そ、そうですわ! ここまできて野宿はさすがにあんまりですもの。早く行きましょう!」



「な、なんですの? 部屋がひとつしか空いていないんですの!?」

「申し訳ないですねえ…でも、この時期ですから。ご案内さしあげた部屋も、先ほどキャンセルになったばかりでたまたま空いたんです」

「なるほど…。ところで宿主さん、この村では間もなく収穫祭だとお伺いしたのですが…それはいつごろでしょうか?」

「お祭りは、明日の夜ですよ」

「そうですか…。となると、ひと部屋でも空きを見つけられたのは幸運と判断するべきですね」

「こ…これが幸運ですの…? い、いやですわ…。あなたがたと寝室を共にするのは…」

「いやいやアイラちゃん、これは幸運だよ? オレたち、明日には祭りを見られるじゃないか」

「そ…そうですけれど…それとこれとは別問題ですわ!」

「確かにお嬢様がおっしゃる通り、男女で部屋を共にするのはあまり関心しませんね…。もしラガヴーリンさんがよろしければ、部屋はお嬢様に使っていただいて、私たちはロビーのソファなどをお借りする、というのはいかがでしょう?」

「いいよ、オレは構わないよ」

「あ…ありがとう…ですわ。でも、お二人に窮屈な思いをさせるのは、ちょっと気が引けますわね…」

「ロビーを使っていただくのは構いませんが…。そうですねえ…。あ、ポートエレン! 仕事途中の通りがかりに悪いけれど、ちょっと来てくれる? あ、急に大きな声を出してしまってごめんなさいね、うちの従業員です」

「はい、奥様、お呼びでしょうか」

「これはこれは…随分とお若い従業員さんですね」

「か…カワイイですわ…! 理想的なショタ…ですわ…」

「ポートエレン、申し訳ないんだけれど、あなたの部屋を今日だけ使わせてもらう事はできないかしら? お客様のお部屋がひとつ足りなくってねえ…」

「ボクの部屋でよかったら、お使いください。住み込み従業員用の部屋ですので、殺風景かもしれませんが」

「あ…あたくしたちが部屋をとってしまったら、あなたはどこで寝るんですの?」

「ふふ、お気遣いありがとうございます。ボクの寝るところは、どうとでもなりますので、お気になさらないでください」

「な…なんて健気で愛くるしいんですの!」

「では、ポートエレンさんには大変申し訳ありませんが、私とラガヴーリンさんでお部屋をお借りしますよ」

「キルホーマン、ちょっとお待ちなさい、ですわ! こんなカワイイ美少年の部屋に、オジサン二人を押し込むなんて無粋な事、到底できませんわ!」

「ええ? じゃあ、オレたちどうすればいいのさ?」

「今夜、あたくしがポートエレンちゃんの部屋で、ポートエレンちゃんと一緒に眠ります。あなたがたは空いている部屋をお二人で使ったらよくってよ」

「ボ…ボクと…お姉さんが?」

「だって、あなたみたいなカワイイ男の子を外で眠らせるなんてできませんわ!」

「お客様がそれでいいとおっしゃるなら…構いませんが…。ポートエレン、それでいいかい?」

「え…ええ。ボクは大丈夫です」

「やれやれ…。お嬢様、くれぐれもお願いしますよ」

「な…何を心配なさっているのか、わかりませんわ」

「まあよかったじゃない。キレイに収まったし、オレはロビーで寝なくて済むし」

「お夕食は一時間後に一階ロビー奥の食堂でご用意しますから、時間になったら食堂へお越しくださいね。そして、明日はぜひ、お祭りを楽しんでいらっして下さいね。朝から盛大な市が広場に立つんですのよ。中心にはやぐらが組まれて、夕方にはブドウ踏み少女のコンテストが開かれるんです。選ばれた少女は、翌朝、広場のまんなかでブドウ踏みを披露して、お祭りは終了」

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