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第7話:ドーナッツの一番美味しいところは、真ん中の『穴』ですのよ?(その1)

「おいゴブリン、なぜお前の紅茶に、俺の謹製アイスクリームが乗っている?」

「それはオレがききたいよ。なんでオレの特製ドーナッツに、お前のソフトクリームが乗ってるのかをさ」

「キルホーマン、『南のお告げ所』までは、あとどのくらいですの?」

「カスクバレルさんに脅していただいた、あの占い師のギルド長の情報が正しければ、この街が最後の拠点になるでしょうね。ここから南へ3日ほどです。その間は集落などなさそうですから、野宿ですかね」

「げ…野宿ですの…」

「あたしも野宿は苦手だよ…。焚火で肌が乾燥してガビガビになるんだよな」

「何を言ってやがりますの? カリラちゃんは、まだそんな歳じゃねーじゃねーですの」

「肌年齢はいざ知らず、実年齢はオバサンよりも年上だからさあ…」

「い…イヤミなのかしら…。でもまあいいですわ。その時は、あたくしの化粧水をお使いなさいな」

「おっいいの? さすが元、厚化粧。恩に着るよ」

「やっぱりイヤミなのかしら…」

「でもさ、この旅もあと少しだと思うと、ちょっと寂しくなるよな~」

「安心しろ。別れを惜しむ瞬間も与えずに、お前を転生させてやる。本物のゴブリンにな」

「へんっ! お前はいいよな。オリジナルの体に戻れたんだからさ」

「ほう、そう思うか。では問おう。お前は今、オリジナルの体ではないのか」

「な、なんだよ。オリジナルの体の方がコンプレックスになる事なんか、いくらでもあるだろう?」

「そうか。それは一理ある。俺の人形の体に乗り移る事をお前に許そう」

「に、人形…」

「おじさん、本気で悩まないでくださいね。ボクはおじさんの事、大好きですよ」

「オレの味方はエレンくんだけだよぉ…」

「で、今日の予定は? あたし、せっかくだから街を散歩したいんだよね。ね、エレン」

「この街は、スイーツが名物なんだそうだよ。屋台で美味しいものを食べられるといいね、カリラ」

「え? お菓子? それはオレも聞き捨てならないな。オレも一緒についていっていい?」

「ええ~!? オジサンもくるの? エレンとデートできると思ったのに」

「カリラちゃんは、ゴブおじにもエレンちゃんにも露骨ですのね…。ある意味うらやましいですわ…」

「メスガキ、小娘、いい知らせだ。ゴブリンのヤツは、俺が預かってやる」

「お、お前と一緒に行動するのかよ」

「喜べ。お前の人生において、こんな巨乳の美女と並んで歩ける機会は今後二度とあるまい」

「き…機会…」

「おじさん、それも本気で悩まないでくださいね。そんな事ないですよ」

「優柔不断なお前に、実に合理的な話をしてやろう。俺は薬の調合師で料理家だ。そしてお前は菓子職人だ。つまり、薬の材料にせよ料理の材料にせよ、補い合う事はあっても足を引っ張り合う事はあるまい。まあ、お前次第だがな」

「そ、そうか…。それは確かに一理あるな…。いやでも! その姿のお前とじゃ会話が続かないよ! 自信ないもん」

「安心なさって、ゴブおじ。あたくしとキルホーマンもご一緒しますから」

「そうしてくれる? ありがとう、ありがとう」

「やれやれだ。俺の方が人間経験が浅いんだがな」



「おいゴブリン、この露店をみてみろ。残念だが、この乾燥した植物のいくつかの詳細を、俺は知らないと打ち明けなければならないようだ」

「ああ、これか。そうか、ラフロイグちゃんはあまり南方の植物を知らないんだね。この樹皮を乾燥させたものは、香辛料としても使えるし、気付けの効果もあるし、お香の材料にもなる。薄く削って更に乾燥させたものを焚いてもいいし、度数の強いリキュールに漬け込んでもいい。種はすりつぶして焼き菓子の生地に混ぜると最高だよ。あと、あっちにあるあれは、植物みたいだけれど、本当は植物じゃなくて動物の内臓を乾燥させたものさ。お菓子には使わないけれど、出汁として料理に使ったり、薬品にはなったりするんじゃないのかな?」

「なるほどそうか。動物の内臓を干したものはいくつか使った事がある。似たような使い方ができるかもしれんな。余談だが、香水の原材料になる動物の体液も存在する。希少だが、一度だけ薬品として使った事がある。その手合いの材料が見知らぬ土地で入手できるとしたら、ここまで旅をしてきた事も無駄ではあるまい」

「動物の体液の香水だって? さすがに想像したくないなあ…」

「ところでゴブリンよ」

「なんだい?」

「なぜ、俺の事を『ちゃん』づけで呼ぶ。気色悪いと言わざるをえまい。俺が女だからか」

「ええ~? 気色悪いかよ。俺はお前が人形だった時から『ちゃん』で呼んでた事があったし、お前が人間の体を手に入れたら『ちゃん』づけで呼んでからかってやろうと思ってたし、そもそも男だと思ってたし」

「なるほど。つまり、お前は俺の事をからかっているわけだ」

「…今となっちゃ、わかんないよ」

「そうか。では寛大な心で理解してやろう」

「ん? 何が言いたい?」

「『ちゃん』づけを許してやる、と言っている」

「へんっ! 素直じゃないな」

「俺に素直を求める事はそもそも間違っている。そして、お前にもその言葉をそのまま返してやる」

「まあ好きにさせてもらうさ」

(キルホーマン、あれは、仲がいいんですの? 悪いんですの?)

(お嬢様、その言葉、前にも聞いた気がしますね。ふふふ。お嬢様はどっちだと思いますか?)

(どうなのかしら…。そもそも、あれは男どうしの友情ですの? 男女の友情ですの?)

(私に目には、男どうしの友情のように映っておりますが…それでもラフロイグさんは妙齢の女性です)

(あの二人が男女の仲になるなんて全く想像がつきませんわね…)

(それは、私もですよ。まあそっとしておいてあげましょう)

「あっ、オジサンとオバサンたちじゃん!」

「あら、カリラちゃんとエレンちゃんではないですの。もう街は色々見てまわりましたの…それ、おいしそうですわね…」

「でしょでしょ!? あっちの屋台の方にいってごらんよ。お菓子の店が沢山でてるからさ」

「エレンくん、そのお菓子、見せて貰っていい? 何でできてるのかな?」

「ボク…あまりわからないですけれど、どうなんでしょう…」

「表面の生地は小麦とバターを何層にも折りたたんで焼き上げた物みたいだね。中のクリームの香りは…オレも初めての香りだけど、いい匂いだねえ。柑橘類の果汁の香りも、ほのかにするね」

「へえ~オジサン顔に似合わず詳しいね。だったら、お菓子のコンテストに参加してみたらいいじゃん」

「お菓子のコンテスト? なんだいそりゃ?」

「おじさん、あっちでビラを配布していましたよ。お菓子の腕を競う大会があるみたいです」

「面白い。ゴブリン、お前、参加しろ」

「おいおい、勝手に決めつけるなよ。作る方じゃなくて、食べる方の大会かもしれないだろ? それだったら、オレよりもアイラちゃんの方が…」

「ご、ゴブおじ! なんてことを言うんですの!」

「いや、作る方みたいだよ。オジサン、本当にお菓子作れんの?」

「仮にもオレは菓子職人だよ? 作れるに決まってるだろ? で、開催はいつなんだい?」

「ええ…と。明日の朝からみたいです」

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