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第5話:キルホーマン…あなたには、そんな過去がありましたのね…。(その5)

「こ、この食事、毒が入っていたりしないだろうな?」

「ラガヴーリンさん、そのご心配は無用でしょう。わざわざギャンブルで正々堂々と戦いたいと言ってきたのですから。それに、ポートエレンさんに歌ってもらう、という目的も彼らにはあります」

「それはそうかもしれないけれどさ。でも、いきなりナイフで襲い掛かってきたんだぜ?」

「ええ、そうですね。これは推測ですが、カスクバレルさんはもとから私をナイフで刺し殺すつもりはなかったのではないかと思います。でなければ、わざわざギャンブルで勝負をする意味がありませんからね。先代の仇討ちはギャンブルで、と前々から心に決めていたのでしょう。まあ、それが正々堂々なのか、必ず私に勝てる秘策があるのか、はわかりませんが…」

「なあアイラちゃん、オレ、思ったんだけれど、カリラちゃんが目を覚ませば、キルホーマンが命を賭ける必要はないんじゃないかな?」

「…そうかもしれませんけど、それがなにか?」

「だからさ、アイラちゃんには悪いけれど、また夢の中に入るスキルを使ってさあ…」

「ラガヴーリンさん、カリラさんが目覚める件と、仇討ちの件は、カスクバレルさんにとって別でしょう。たとえカリラさんが目覚めたとしても、先代の話は別ですから、やはりカスクバレルさんは私を殺そうとするでしょう」

「ゴブおじ、実は…あたくし、それは、もう試みてみましたの。エレンちゃんの歌声を聞きたい、というのに、眠っているという事でしたから…」

「と、いう事は…?」

「夢の中に入る事はできませんでしたの」

「入れなかった…。お嬢様、それはどういう可能性があるのでしょうか?」

「…夢を見る事ができない状態…という事ですわ…。つまり、スキルで生命を維持しているだけで、実質…死んでいる、という事ですわ…」

「なんだって!? じゃあエレンくんが歌を歌ったところで…!」

「いえ、それは大丈夫でしょう。カスクバレルさんも、歌で目を覚ますとは本気では思っていない筈です。ポートエレンさんが歌う事には意味があります。それよりも問題なのは、私が殺めてしまった人間が、もうひとり増えてしまった…という事ですね…少なくとも、私にとっては…」

「キルホーマン、あたくし、あなたに対して人殺し…なんて言い方をしてしまったかもしれませんわ…。本当にごめんなさい。それに、よく考えたら、あたくしだって…」

「お嬢様、それ以上は口になさる必要ありませんよ。お嬢様の事は、いずれ時間が解決するでしょうから」

「そうかもしれませんけど…でも、キルホーマンは時間が解決してくれなかったのでしょう?」

「ええ…そうですね。先代と私に何があったのか、を皆さんにお話ししなければなりませんね…。お嬢様、私が自分のスキルで、2つ禁じ手としている事がある、というお話をしたのを覚えていらっしゃいますか?」

「1つめは、人の寿命を確認する事…でしたわね」

「その通りです。そして、2つめ…これを禁じたのは、今回の案件が要因なのですが…つまり『賭け事で相手の手札を確認する』事です」

「なんですって!?」

「お嬢様、小さな声でお願いしますよ。ここは私にとって敵地なのです」

「ご、ごめんなさい…ですわ…」

「キルホーマン、誰かに聞かれないように、でもオレたちにわかるように説明してくれよな」

「ええ、もちろんです。まず、ラガヴーリンさんたちにはまだお話ししていなかったかもしれませんが、お嬢様はとある豪族の娘さんで、私はその豪族の執事だったのです」

「『元』ですわ…。あ…あたくしが原因で、勘当されましたの」

「ふふふ、そうですね。で、組織犯罪集団カスクバレル…当時は先代の名前で呼ばれていましたが…は、各地の豪族のもとに出向いては、賭け事を持ち掛け、その資産を巻き上げる、という事をやっていました。色々と、うまいやり口だったのだと思います。豪族のもとに事前に共謀者を送り込んでおいて、ギャンブルでイカサマして勝つ…とか」

「共謀者…って、どうやって送り込むんだい?」

「簡単な話ですよ。使用人として何ヵ月も前に豪族に雇わせるんです。案外、あのカスクバレルさんの使用人さんも、普段はそういったスパイのような活動をされているのかもしれませんね。この話も聞かれているかも…」

「そ…そう言われると、誰も彼もが怪しく見えてきましたわ…」

「私の主人となる人…つまり、お嬢様のお父上は、賭け事が嫌いでしたし、得意ではありませんでしたので、代わりに私が先代のお相手をする事になりました。その時はポーカーをやりましたよ。相手が何の札を持っているか、何を捨てようとしていて何を残しているか、は私のスキルで筒抜けでしたので、正直楽勝でした。まさか、命まで賭けることになるとは思いませんでしたけどね…。私も、若かったのです。止めるという事を知りませんでした」

「そうなんですの? じゃあ、キルホーマンは人殺しなんかじゃ…」

「私が人殺しか、そうでないかを、私自身では判断していませんが、少なくともその負い目はずっと感じておりました。私は、娘のカリラさんの存在を存知あげませんでした。まさか、そこまで悲劇が連鎖していたとは…迂闊でした。そして、これも私の推測ですが、カリラさんは見た目こそポートエレンさんと同じくらいですが、実際の年齢はもっと上だと思います。先ほどのお嬢様のお話で合点がいきました。スキルで生命維持はしているものの、実質亡くなっているため、体が成長していないのです」

「そうか、それはいい事を聞いた。であれば、あの娘の体を俺が乗っ取っても誰も文句を言わないという訳だ」

「こ、このクサレ人形! 今の話、ちゃんと聞いてたのかよ。だいたい、お前のような性格は、あの体に合わないよ!」

「ほう、まるでお前は、あのカリラという娘がどういう性格なのか知っている口ぶりだ。娘が俺よりもまともな性格だという保証はどこにもない。俺に乗っ取られた方が、あの体にとって幸福かもしれんぞ」

「自分の性格が悪い自覚はありますのね…ラフロイグさん…」

「まあまあ…。ですので、皆さんご安心ください。私がカスクバレルさんとのギャンブルで負ける事はありませんし、私が負けなければ誰も命を落とす事はありません」

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