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DIVINE CHILD CHRONICLE -神の子と織りなす建国記-  作者: 知翠浪漫
第一章 森の遺跡編
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プロローグ ありふれたプロローグ

 





 *




 目の前には青々と茂った木が所狭しと並んでいた。

 木々がさざめき、緑色の葉の隙間から温かい陽光が幾筋もの線ととなって差し込んでいる。


 光のシャワーとでも呼ぶべきその光景はどこか幻想的で、見る者の心をどうしようもなく魅了した。


 動きが止まる。呼吸を忘れる。瞬きができなかった。

 目の前の光景が美しいから、だけではない。


 唐突に状況が変わったからだ。

 いや、状況というよりは場所が変わった。否、世界が変わっていた。


「俺は確かトラックにはねられて――――」


 学校の帰り道、車道に飛び出した子供を助けようとして車にはねられた。


 鈍い衝撃と、なにかが潰れてひしゃげる音。

 その直後、視界が暗転して――そして気付けば森の中にいた。


 うん。なにを言っているのかわからない。

 わからないが、なんとなく今の状況に心当たりはあった。


 だがまさか、本当にそんなことがあるんだろうか。

 嘘みたいな思いに捕らわれながら、しかしそんな俺の考えを肯定するように、木陰からそれが現れた。


 額に角の生えた、目が発光している青い兎。

 日本には、いや、地球には絶対にいない生き物だ。


 兎は俺と目が合うと驚いたように目を瞬かせて、いずこかへと走り去ってしまう。

 その足跡は不自然に光り輝いていた。


 よくよく見てみれば周りに生えている草や木も、俺が見たことのない植物のようだった。


 なにより決定的だったのは、開けた場所から見えた太陽の数。

 眩しくて見づらいが、そこには確かに二つの輝きが宙に浮かんでいた。


 自分の体を見下ろす。

 着ている服は学校指定の学ランで、服の上から見ただけだが、体にも傷はないようだった。

 死んでいてもおかしくないような事故だったはずにもかかわらず。


 いや、多分、俺はあの時死んだのだ。


 車にはねられて、死んだ。

 ならばここは死後の世界だろうか?


 いや、多分違う。

 空気を吸う。青々とした植物の臭いが鼻いっぱいに広がった。


 苔の生えた地面に触れてみれば、長時間陽の光に照らされていたからだろうか、仄かに温かい。そして手が苔と土で汚れた。

 死後の世界と言うにはあまりに確かな世界の感触。


 ここまで来れば、もう確信していいだろう。


「俺は向こうで死んで、こっちの世界に転生した」


 すなわち最近流行りの異世界転生。

 どうやらそれが俺の身に起きたことらしいと、俺は判断を下すのだった。














 そんなわけで久しぶりの投稿です。一年ちょいぐらい書き溜めていたので、しばらくは連続投稿していきます。

 前作「剣と魔女と魔王の輪舞(https://ncode.syosetu.com/n1749fq/)」もありますので、未読の方はそちらもどうぞ。

 あと、感想をいただけたら作者は狂喜乱舞します。

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