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ジャンル「異世界〔恋愛〕」/タグ「白豚」「身代わり花嫁」「ざまぁ要素有り」

 すべてが魔法の才能の多寡によって評価される世界。

 ある貧乏貴族の元に縁談が舞い込んだ。

 その相手はなんと、現国王の息子、第2王子だという。

 だが喜び浮かれてなどいられない。

 なぜならば。


「嫁といっても、使い勝手のいい実験体か人形扱いじゃないの!」


 この国を統べる王族は魔法使いとして群を抜いた力を持っており、魔法第一主義の一族だ。ゆえに、力の劣る者にはさして興味を持たず、場合によっては魔法研究の実験で非道な扱いをするとまで言われている。

 要するに、マッドな魔法使いなのだ。

 そんな家系に取り込まれたら堪らない。娘も確かに魔法使いとしての実力はあり、彼女自身もそれを自負している。だがマッドとまで言われる王族に敵うとは到底思っていなかった。

 つまり、嫁入りした途端に使えないと判断され、実験台コースである。

 彼女は優秀であるがゆえに、嫁入り後の未来が見えてしまった。


「そんなのイヤよ! どうにかして回避しないと」


 確かに絶望的だ。

 だが絶望している暇はない。

 どうにかして嫁に行かずに済む方法はないものか。彼女は必死に考える。


「身代わりを、立てましょう」


 彼女はひらめく。自分以外の誰かが嫁に行けばいい。

 とはいえ彼女も人の子。自分の代わりに誰かを犠牲にするのは、いくばくか胸が痛む。

 では胸の痛まない存在ならば。


「誰か! 家畜小屋の白豚を用意なさい!」


 彼女の実家は貴族といっても末端で、口にする食物の大半は自給自足で担っている。人を雇ってはいるが、彼女自身や両親が優雅に貴族然とした暮らしをしているわけではなかった。

 数少ない世話係のメイドに命ずると同時に、彼女自身も庭へと出ていく。目指すは屋敷の隅にある家畜小屋。食肉用に育てられている牛や豚などがいる。

 そのなかの1匹。肥えた白豚を前にして、娘は魔法を唱えだす。

 それは白豚を人間に擬態する魔法。

 擬態といっても、魔法の質によってその効果は大きな違いを生む。優秀な魔法使いならば、自分と瓜二つの容貌、性格や才能まで複写させることが可能なのだ。

 王家の嫁にはなりたくない。

 その執念ともいえる一念が、彼女をこの上なく必死にさせた。

 それは唱えた擬態の魔法に、かつてない高度な効果をもたらす。


「……できた」


 目の前にいた白豚が、姿を変えた。

 娘と同じ愛らしい容貌。

 元が白豚のせいか、その肌は透き通るような美しさをたたえている。

 だが元が白豚のせいか、とんでもなく肥えていた。


「こんなの私じゃないわ!」


 思わぬ結果に娘は声を上げる。絶叫だ。

 身代わりとはいえ、第2王子の嫁として生活する自分が、こんなに丸々と肥え太った姿でいると想像したら。あまりにもあんまりだった。


「やり直しよ」


 娘は気を取り直す。

 自分の分身がこんなにぶよぶよだなんてあんまりだ。

 ならば最初から痩せている豚に魔法を掛ければいい。

 完璧だ。

 家畜小屋を見回し、先ほどの白豚よりも痩せた1匹を見つくろう。

 家畜として見れば痩せすぎかもしれない。だが魔法で変身した後のことを考えれば、これくらいでちょうどいいだろう。娘はそう考えて、再び魔法を唱え始める。

 これまで培ってきた魔法の才をすべて注ぎ込むつもりで。彼女は擬態の魔法に力を注ぎ込む。

 再び、魔法は成功。

 目の前には娘と瓜二つの容貌をした、すらっとしたスタイルの女性が立っている。先ほどの肥え太った姿とは正反対だ。

 そう、反対過ぎた。


「これも違う!」


 確かに痩せてはいたが、ヒョロヒョロのガリガリだった。

 肉がなさすぎて頼りないどころか、風が吹いただけで倒れそうなほど。倒れただけで骨がポッキリいってしまいそうだ。

 これはこれであんまりだ。自分の姿と違い過ぎて、娘はまたも絶叫する。なんでこうなる、と。

 思うようにいかな過ぎて、娘はヒステリーを起こした。追い込まれているがゆえに、上手くいかない現実と、魔法を微調整しきれない自分に腹を立てる。


「……」


 そんな彼女を静かに見つめる目が二組。

 娘と同じ顔をした、元肥えた白豚と、元痩せた白豚だ。

 二匹、いや二人は、擬態の魔法によって人間の姿となった。そして娘のものと近しい知能を有している。見た目の調整は利かなかったものの、擬人化という魔法の効果としては、この上ないほどのものを見せていた。しかも2体続けての成功である。彼女の魔法使いとしての優秀さは明らかだと言えるだろう。

 だがこの時、娘は油断していた。

 相手は元家畜だと、侮っていたと言ってもいい。

 ひとり嘆く娘の隙を突き、元白豚の二人はその場から逃げ出した。

 裏手にある家畜小屋を飛び出し、表面の屋敷の方へ。

 白豚から擬人化したのだから、二人とももちろん全裸だ。そして体型はともかく、顔は屋敷の娘のもの。出くわしたメイドや執事たちはぎょっとする。

 零細とはいえ貴族の娘が全裸で走って来たのだから、ただ事ではない。

 屋敷の者たちはすぐに身体を隠すものを用意し、二人の身にまとわせる。

 二人は礼を言い、自分たちに何があったのかを話した。

 二匹の白豚に擬人化の魔法を掛けたこと。

 そのうちの一匹が魔力などを強めに吸い取られてしまったこと。

 そのために自分の身体がやせ細ってしまったこと。

 家畜が力を得たことで高揚していること。

 隙を突いて逃げ出したこと。

 我に返った白豚がもうすぐ自分たちを追ってくるだろうこと。


「お願い、なんとか対処して」


 そう。元痩せた白豚は、自分を本物の貴族の娘となり替わってみせた。

 本当の娘を、擬人化して暴走する白豚の立場にしてみせたのだ。

 同時に、元肥えた白豚を、貴族の娘という立場からかばってみせた。

 これによって本物の貴族の娘が、ただ一人悪者に仕立て上げられてしまった。






ゆきむらです。御機嫌如何。


初めて「ワンライ」なるものをやってみました。

1時間でけっこう書けるもんだなびっくり。


でもやっぱり、ネタを考えたものの書けなかったところもあり。

後書き部分で、

「この後はこういう展開にするつもりだったんだよ」

というのを補足していこうと思う。


―・―・―・―・―・―・―・―


さて。


嫁に行くのがイヤで、擬人化した家畜を送り込もうとした貴族の娘さん。

見事に白豚を人間に変身させたものの、

自分の分身なのにこんな見掛けはイヤと却下してしまう。


上手くいかずにヒステリーを起こしている隙に、

擬人化した元白豚が逃走。

貴族の屋敷の人間に接触して、

「自分の魔力を白豚に奪われた」と、

とっさに本物の貴族の娘となり替わろうとする。


で、この後。

我に返った娘が屋敷に戻るも、

他の人間たちは擬人化した白豚だと思っているので、

本物の娘の言うことに聞く耳を持たない。

もともと嫁に行くのを嫌がっていたので、

これ幸いとばかりに彼女を嫁ぎ先に送ってしまう。

本物が偽物として扱われてしまうわけだ。


魔法なり状況なりの設定はそれなりに考えたけど、

上手く織り込むには時間が足りなかった。




さてさて。

本文の後の展開についてなんだけど。


本物の貴族の娘。

自分のコピーとはいえ、家畜に足元をすくわれてしまった。

あげく行きたくなかった王家に、本人が偽物として嫁ぐ羽目になる。

怒り心頭ですね。

マッドな域には届いていないものの、

魔法使いとして有能でプライドもある貴族の娘は、

夫になる第2王子にすべてを告白する。

王家を騙そうとしたことはもちろん、

どんな経緯から自分が今の状況にあるのか、

自分自身の油断にはらわたが煮えくり返る胸のうちをすべて。


そして彼女は懇願する。

魔法の実験体にしてもらっても構わないから、

魔法の修行をつけてくれと。

あの白豚どもと、

信じてくれなかった両親たちを見返す力を得たいと。


仮にも王家だから、自分を偽ろうとした貴族をどうこうするのは難しくない。

でもそれだと気が済まないと、娘は言う。

マッドな魔法使い一族のひとりである第2王子にしてみれば、

もともと嫁にと願ったわけだから。

彼女の魔法使いとしての資質は認めているわけ。

聞いた話が本当ならば、

身なりも能力瓜二つに擬態できる魔法を連続で使えるわけで。

十分に優秀じゃないかと。


夫となった第2王子は面白いと考え、娘の願いを承諾。

そしてマッドな魔法使い一族である王家に相応しくなるよう、

スパルタなレッスンを受けることに。

そして娘は見返してやることを糧に、

魔法使いとして実力を上げていく。

そして「ざまぁ」展開へ。


……みたいに考えていました。


―・―・―・―・―・―・―・―


1時間というリミットでここまで思いつけたのは、

我ながら満足だ。


ワンライ、これからも続けていこう。

ではまた。




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