王子様は元いじめっ子と元いじめられっ子から彼女を救います
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私はお姫様にはなれません。
私はお姫様にはなれません。
私はお姫様にはなれません。
どれだけ言い聞かせても私の心は王子様を欲しがっています。
自分でもどうすればいいのか分からず今日は來兎とは帰らず一人で学校から帰っています。
考える場所が欲しくて私のお気に入りの公園へ来ました。
この公園には遊具は何一つありません。
あるのは長椅子だけです。
それでも私が好きな理由は大きな夕日が沈んでいく所が見えることです。
綺麗な夕日を見ていた時です。
「先客がいるじゃん」
「本当ですね」
二人の男の人の声が聞こえ私は振り向きます。
「あ~」
三人で同時に言った言葉はあ~でした。
三人で驚いたのです。
「あの時のいじめっ子さんといじめられっ子さんだ」
あの時とは中学生の時に私が二人を仲直りさせたあの二人です。
「二人とも印象が変わったね?」
「お前は変わらないな。相変わらずお子ちゃまだ」
「そんなことを言ったら彼女が可哀想ですよ?」
元いじめっ子さんが私にヒドイことを先に言ってその後、元いじめられっ子さんがフォローしてくれましたが全然、フォローになっていない気がします。
元いじめっ子さんは金髪ではなく少し茶色の髪色に少し目がつり上がったイケメンさんになっていました。
そして元いじめられっ子さんはメガネがとっても似合うこれまたイケメンさんでした。
そんな二人が並んで歩いていたら注目の的でしょう。
「一人で何してんだよ? あのイケメンは?」
元いじめっ子さんが來兎のことを聞いてきました。
「少し、一人で考えたくてここに来たの」
「そっか。恋人になると大変だな」
「恋人? 誰が?」
「あんたとイケメンだよ」
「恋人じゃないよ?」
「はぁ?」
「元いじめっ子さんの勘違いだよ」
「勘違いなのか? それより俺には名前があるんだけど」
「だって知らないから」
「俺は龍之介でメガネのこいつは虎太だ」
「龍くんと虎くんだね。私は繭だよ。よろしくね」
そして私を真ん中に左に龍くんで右に虎くんが長椅子に座りました。
みんなで黙って夕日を見ます。
「二人は今は幸せ?」
「何だよその質問は?」
龍くんが呆れたように言います。
「誰かの幸せ話を聞きたくなっちゃって」
「僕は幸せです」
虎くんが答えてくれました。
「どんな幸せなの?」
「今、ここに三人でいられることが幸せです」
「今が幸せなの?」
「あの日、助けてくれた女の子にまた出会ってこんな風に綺麗な夕日を見れるなんて幸せです。ねぇ龍」
「おっおう」
二人とも幸せなんだね。
幸せってすぐそこにあるものなのかな?
「繭。何してんの?」
後ろからいつもの声が聞こえました。
ちょっと不機嫌な声です。
しかし、何でここにいるのが分かったのでしょうか?
「來兎? どうしてここにいるのが分かったの?」
私は振り向いて言いました。
心配になって迎えに来たのは分かっているので敢えてどうして来たのかは聞きません。
「繭はこの場所がお気に入りだろう? それに繭の匂いがした」
お気に入りの場所でもいるかなんて分かんないですよね?
それに私の匂いなんて人前で言ったら匂いフェチがバレるわよ。
「虎。帰ろうか」
「龍。そうですね」
そう二人は言って立ち上がります。
「そうだ。繭に一言」
龍くんはそう言って私の耳から落ちた髪を耳にかけてくれて耳元で私に聞こえるように一言を言いました。
「イケメンはあのヒーローの真似でもしてるんだろう? だったら繭はイケメンのお姫様だな」
「えっ」
「じゃあな」
龍くんはそう言って虎くんと一緒に帰っていきました。
そんな私は顔が火照っています。
私にはそんなお姫様の素質なんてないことは分かっていますが龍くんに言われると嬉しくて照れてしまいました。
「繭? 何その顔?」
來兎はまだ不機嫌な顔で言っています。
でも私は嬉しくてそんな來兎の不機嫌な顔も王子様に見えます。
「來兎。おいで」
私は椅子の隣を叩いてここに座ってと促します。
來兎は不機嫌なまま私の隣に座ります。
「夕日を一緒に見ようよ」
「夕日なんてもう後、少しでなくなるじゃん」
そうです。
夕日はいつの間にか後少しで見えなくなりそうです。
夜がそこまでやって来ています。
「それでも來兎と一緒に見たいの」
「そう」
來兎の不機嫌はなくなっていました。
「ねぇ、繭?」
「何?」
私が夕日から目線を外し、來兎を見ると來兎はニッコリ笑っています。
もしかしてさっきの二人から私を助けてくれたってこと?
來兎が言う見返りはもう、お願いにしか聞こえないですね。
ん?
お願い?
そう思ったら何故か來兎が可愛く見えてきました。
來兎は私に甘えているのです。
「助けた見返りは?」
「何がいいの?」
「膝枕」
膝枕?
したことないよ。
私は座っていればいいのよね?
「いいよ」
すると來兎は私の膝に頭を乗せました。
頭って案外、重いことを知りました。
私はまた夕日を眺めます。
「繭」
「何?」
「さっき何を言われてたんだ?」
「嬉しいこと」
「そんな顔を俺には見せないのに」
「えっ」
私は來兎を見ます。
來兎は私を悲しそうな顔で見ていました。
來兎?
「どうしたの?」
私がそう言うと來兎は私の耳から落ちた髪を耳にかけてくれました。
さっき龍くんがしてくれたことを來兎はしたのです。
まるで龍くんがしたことをなかったように消し去るように上書きするように龍くんより時間をかけてゆっくりと髪を耳にかけてくれました。
「繭。帰ろうか」
「そうだね。夕日もなくなっちゃったし」
そして私達は家へと帰りました。
來兎の悲しそうな顔は何だったのでしょう?
自分のモノでもある私が他人に触られていることに怒ったのでしょうか?
そして怒りが悲しみに変わった感じでしょうか?
よくありますよね?
イライラして涙が出ることって。
そんな感じでしょうか?
明日にはいつもの王子様に戻っているでしょう。
読んで頂きありがとうございます。
元いじめっ子と元いじめられっ子は第3部分『王子様は不良から彼女を救います』で出てきています。
本日中に最終話を投稿しようと思っているので最後までお付き合い頂けたら幸いです。




