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王子様は不良から彼女を救います

ブクマや評価などありがとうございます。

 まだ來兎(らいと)のハグが忘れられません。

 來兎はちゃんと男の人なんだなって初めて気付きました。

 私よりも大きな体は私をしっかり包み込み優しく抱き締めてくれたのです。

 私は確実にあの時はお姫様になりました。


 夢を見るくらいならいいのでは? なんて思っている私は妄想をして楽しんでいます。

 だから妄想をしている時は前をちゃんと見ていません。

 なので私は人とぶつかります。


「あっすみません」


 また誰かとぶつかりました。

 頭を下げて謝り頭を上げて私は固まりました。

 何処の不良の方ですか?

 まだいたんですね。

 そんな角刈りの不良さん。


 不良さんはサングラスを外し、私を上から下からと見てきます。

 怖いの一言です。

 睨まれている私は動けません。


「あっ、いいよ。怪我もしていないみたいだね」

「えっ」


 不良さん?

 優しい。

 とっても優しいです。

 よく見るとつぶらな瞳が可愛いです。


「そんじゃあ」


 不良さんはそう言って廊下を歩いて行きました。

 ちゃんと廊下の右側を歩いてです。

 人は見た目で判断したらダメですね。

 不良さんごめんなさい。


 そして私も廊下の右側を歩いて教室へ戻ります。

 不良さんがちゃんとルールを守っているのに私が守っていないのはダメですよね?

 そういえば不良さんといえば中学生の頃、來兎に助けられたことがありました。



 中学生の頃。


 今日、來兎は生徒会の集まりで私は一人で帰っています。

 來兎がいない道を一人で歩くのは寂しいです。


「おい、金出せよ」


 ん?

 お金出せ?

 何?


 私は声のする方を向きます。

 いました。

 いじめっ子といじめられっ子が。


 いじめっ子は髪の毛が金髪の不良さんです。

 いじめの現場を見てしまった私は見過ごす事ができません。

 自分の財布の中身を確認しても三百円しかありません。

 これじゃあ不良さんの満足する金額には全然足りないと思います。


 でもいじめられっ子を助けたいと思った私は拳に力を入れてその現場へ向かいます。

 拳は少し震えています。


「なっ何をしてるの?」


 私が声をかけると二人がこちらを見ます。

 二人は私と同じくらいの歳に見えます。


「彼は嫌がってるでしょう?」

「こいつは嫌がってないよ。なあ?」

「うっうん」


 なんでそんなにビビっているのでしょう?

 私はいじめられっ子さんの味方なので数だとこっちは二人です。

 数だと勝っているのです。

 そりゃぁ私は弱いかもしれないですが。


「いじめられっ子さん。どうしてそんなに怯えているの? 一対一なら戦うか逃げるかできるでしょう?」

「あの、その」


 いじめられっ子さんは気弱な性格でしょうね。


「それじゃぁ不良さんはどうして一人で彼をいじめるの?」

「いじめてなんかないんだよ。うるせぇな」


 いじめっ子さんはイライラしてます。

 そんなにイライラしなくてもいいのでは?


「二人は仲良しってこと?」

「何でそうなるんだよ」


 私の言った言葉に不良さんは呆れ顔です。


「だって二人とも逃げるか戦うかすればいいのに何もしないんでしょう?」

「あの。それは、その、彼は僕の友達だったからです」


 やっといじめられっ子さんは言葉を発してくれました。


「やっぱり二人は仲良しってことだね」

「お前。そんなこと言うなら殴るぞ」


 不良さんはそう言っていじめられっ子さんに拳を向けます。

 折角、話してくれたいじめられっ子さんが可哀想だと思ったら私の体はいじめられっ子さんの前に立っていました。


「ダメだよ。力では何の解決にもならないよ」

「でも、さっきは逃げるか戦うかしろって言っただろう?」

「戦うは力じゃないよ。言葉で言い合うの」

「ぼっ僕は君と友達に戻りたいんだ。君に何があったのか分からないけど昔の君に戻ってほしいよ」


 いじめられっ子さんは大きな声で不良さんに言っていました。

 うん良かったです。

 二人は仲直りをしているみたいです。


「何をしてんだ?」


 私の耳元で声がしました。

 その声はいつも聞く声です。

 振り向かなくても誰だか分かります。


「不良さんといじめられっ子さんの仲直りをしたところを見てたの。來兎は終わったの?」


 私は振り返り來兎に言いました。


「うん。男しかいない場所に(まゆ)はいたら危ないから俺が助けてやるよ」

「えっそれってもしかして」

「助けた見返りは?」


 來兎はニッコリ笑って言いました。


「またなの? だってそれは來兎が決めただけで私は大丈夫だよ」

「何、言ってんの? 繭が男の力に勝てると思う?」

「何よ。いきなり真剣な顔をして」

「試す?」


 そして來兎は私の両手首を交差させ動かないように掴みました。

 私はどうやっても彼の手から逃れることはできませんでした。


「無理でしょう?」

「うん」


 そして來兎は手を離し私の手は自由になりました。


「助けた見返りは?」

「分かったわよ。何がいいの?」

「今日は寒いから肉まん」

「コンビニ行こう」

「そうだな」


◇◇


 そんな不良さんといじめられっ子さんは今どうしてるのかなあ?

 なんて思いながら私は廊下を歩いていました。

 また前をちゃんと見ていませんでした。

 なのでまた誰かにぶつかりました。


「いったぁ~。すみません。大丈夫ですか?」


 私は少し痛む肩を擦りながら相手に言いました。

 その相手はこの前ぶつかった不良さんでした。


「またお嬢さんか?」

「あっ覚えててくれたんですか?」

「だってこんな広い廊下でぶつかるなんて滅多にないだろう?」

「そうですね」

「ケガはないかな?」

「はい。大丈夫です」

「それは良かった」


 不良さんはサングラスを外して私に笑いかけてくれました。

 とっても可愛い不良さんです。


「繭?」


 この声は來兎です。

 振り向かなくても分かります。


「來兎。どうしたの?」

「お前、大丈夫か? 俺が言ったことをもう忘れたのか?」


 來兎はそう言って私の腕を乱暴に掴みます。


「來兎?」

「あっごめん」


 どうしたのでしょう?

 來兎が焦っているようです。

 あっもしかして不良さんが怖いのかな?


「來兎。この不良さんは中身はとっても優しい人だよ」

「あっそ」


 素っ気ない反応に私はビックリです。


「繭は先に教室に戻って」

「どうして?」

「俺は少し話してから戻るよ」

「不良さんと?」

「うん」

「分かった。じゃあまた放課後ね」

「うん」


 そして私はちゃんと廊下の右側を歩いて教室に戻りました。

 また先に帰されました。

 來兎は不良さんと何を話しているのでしょう?

 気になりますが私はまた妄想の世界へと行きます。

 授業は何となく聞いてますよ。


 その日の放課後に誰もいない教室で來兎に言われました。


「助けた見返りは?」


 私、助けてもらった記憶はありません。


「えっいつ助けてもらったの?」

「不良から助けただろう?」

「もしかしてまた中学生の頃の事と同じなの?」

「そう。君は危なかったんだからね」

「もう。分かったわよ。今日は何? ハグはダメよ」

「それなら手を握ってもいい?」

「手? いいよ」


 手なんて小さな頃からよく繋いで歩いてたから何も抵抗はないです。

 私は彼の前に手を出します。

 彼は手を握ってきました。

 手を握るくらいなら大丈夫だと思っていました。


 大丈夫ではないですね。

 私よりも大きな手。

 私よりもゴツゴツとして硬い手。

 でも私の手をワレモノのように優しく握ってくれる手。


 私の心臓はバクバクとうるさいです。

 來兎には聞こえませんように。

 早く手を離して。

 私の心臓がもちません。

読んで頂きありがとうございます。

ドキドキ、キュンキュンして頂けると幸いです。

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