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王子様はクラスメイトから彼女を救います

ブクマや評価などありがとうございます。

 來兎(らいと)のことを好きだと気付いたら何故か來兎が王子様に見えるのです。

 朝の登校中に歩きながらアクビをするのも、王子様に挨拶をしてくる学校の女の子達に面倒そうに挨拶を返しているのも、靴から上履きに履き替える姿も、何もかもが王子様に見えてキラキラしています。


「おい、(まゆ)

「はっはい」

「元気だな。そんなに朝ごはんをたくさん食べたのか?」

「私はそんなに食べないわよ。お茶碗山盛り一杯よ」

「食べ過ぎだから」


 來兎はケラケラ笑っています。

 どんな來兎も王子様にしか見えません。

 來兎の頭に王冠が見えます。

 何度か瞬きをするとなくなりました。


「じゃあな。また放課後な」

「うん」


 來兎と私はクラスが違います。

 だから会わない時はこのまま放課後まで会わない時もあります。

 自分の教室に入り、クラスメイト達と話をします。


「ちょっとあなた。王子様とはどんな関係なの?」


 いきなり上から目線で見てくる綺麗な女の子に言われました。


「來兎とは幼馴染みだけど?」

「幼馴染みっていつも登下校するものなの?」


 彼女は昨日の先輩達と同じ事を言いました。


「小学校から一緒だからそれが当たり前なの」

「ただのお友達ってことなのね?」

「そうね」

「分かったわ。王子様はみんなの王子様なんだから誰も手を出しちゃダメよ。あなたもね」


 彼女は大きな声でクラスメイトに聞こえるように言い、最後に私に念を押すように言いました。

 來兎はみんなのモノ?

 そんなの來兎が聞いたら怒ると思います。

 同じようなことがあった中学生の時の話をしましょう。



「ねえ、繭ちゃん。王子様はみんなのモノだよ? 繭ちゃんだけ独り占めはダメだよ」


 私は教室で友達と話をしていたら学校でも可愛いと有名なクラスメイトがニッコリ笑って私に言ってきました。

 けれどどう見ても目は笑っていないのです。

 可愛い子ってどうして友達を引き連れて一人をいじめるのでしょうか?

 これが最近流行りの悪役令嬢なのでしょうか?

 

 毒リンゴなんて持っていたら悪い魔女ですよ。

 そうなると私はお姫様?

 それは違いますが、悪役令嬢は目の前にいます。


「何してんの?」


 來兎が教室へと入って来ました。


「王子様。繭ちゃんが王子様は私のモノだって言ってたから王子様はみんなのモノだよって言ってたの」

「繭。本当か?」


 來兎の機嫌が悪くなったのが見ただけで分かります。

 悪役令嬢も少し気がついているようです。


「私はそんなこと言ってないよ」

「そう。それならお前の言うことは間違ってるな」


 來兎は悪役令嬢に言いました。


「どうして? 繭ちゃんが嘘を言ってるのよ」

「繭は嘘をついてなんかいないんだ」

「そんなの分からないじゃない」

「繭は嘘をつく時にある部分が動くんだよ」


 えっ、そうなの?

 気をつけなきゃ。

 ある部分って何処なんだろう?


「繭、帰るぞ」

「うん」


 そして私はその後、学校から帰る途中にニッコリ笑った來兎に言われます。


「助けた見返りは?」


 そして私は見返りにジュースを買わされました。


◇◇


「あっごめん」


 私は昼休みに廊下を歩いていたら誰かと派手にぶつかりました。

 ぶつかった相手は謝ってくれたので痛いけど許します。

 私は倒れてお尻を地面に強く打ちました。


「いった~。大丈夫だよ」


 私がそう言って上を見上げると小さく笑うクラスメイトがいました。

 でも彼女はそんなことはしない子だと思います。

 大人しくていつも控目な子。

 何で?

 彼女は倒れた私を置いて何処かへ行ってしまいました。


 そんな日が何日か続きました。

 私は彼女に問い詰めようと教室で話しかけました。


「どうして私とわざとぶつかるの?」

「それは……」


 彼女はうつむいて何も言いません。


「あなたはこんな事はしないと思ってるよ。だから誰かに言われたの?」


 私がそう言うと彼女は顔を上げてある人を見ました。


「そう。分かったわ」


 私はその人の所へ向かいます。

 その人の家は裕福でお金持ちのようで、だから人を上から目線で見てくるのです。

 高校生の悪役令嬢ですね。


「あなたが彼女にやらせたの?」

「何のことかしら?」

「もう、高校生なんだから子供っぽいこと止めたら?」

「何よ」


 悪役令嬢はバカにされたことなんて一度もないのでしょう。

 そんな私に腹を立て私を叩こうと手を上に上げました。

 私は叩かれると思い目を閉じましたが叩かれた衝撃は私には来ません。

 私はゆっくり目を開けます。


 そこには來兎がいました。

 來兎は悪役令嬢の腕を掴み睨み付けています。


「來兎!」

「繭、大丈夫か?」

「うん」

「繭は先に帰ってて。俺は後で追いかけるから」

「いいけど彼女に手を上げちゃダメよ」

「そんなことしないに決まってるだろう?」

「そうね」


 そして私は一人で学校から家へ帰ります。

 学校から家まで半分くらいの所で來兎が追いつきました。


「何を話したの?」

「ん? 今度、繭に手を上げたら許さないって言ってきただけだよ」


 來兎はそう言ってニッコリ笑いました。

 この顔はまさか……。


「助けた見返りは?」

「そうだよね。いるよね? 何がいいの?」

「今回はハグ」

「ハグ? 何で? 無理」

「いいじゃん減るものじゃないんだし」


 減ります。

 私の命が削られるくらいドキドキします。


「それならこれで我慢する」


 來兎はそう言って私を後ろから抱き締めました。

 それもハグです。

 後ろか前かの違いだけです。


「これなら顔も見えないし大丈夫でしょう?」


 顔は見えないけど前からのハグも見えないでしょう?


「いつまで抱きつくの?」

「繭、抱きつくじゃなくて抱き締めてるんだ」


 もう、何なのでしょう?

 この甘い雰囲気は。

 私はお姫様じゃないんだからこの雰囲気はダメなのです。


「もう、いいでしょう。早く離れてよ」


 私は來兎の腕の中で暴れます。


「分かったよ」


 やっと來兎が離れて私の心臓は落ち着きを取り戻そうと必死です。

 見返りのランクは上げないでほしかったです。

 今の私には我慢できなくなります。

 王子様の隣にずっといたくなります。


 お姫様じゃない私は引かなければならないのに。

 王子様の行為は私をお姫様だと勘違いさせます。

 でもちゃんと分かっています。

 私はお姫様にはなれないのだということを。

読んで頂きありがとうございます。

あまり長くならないお話ですので最後までお付き合い頂けたら幸いです。

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