文学少女の必殺技はすべてを夢見てみる
「とっとと倒れ…なさい!ホーリージャベリン!」
杖を手に空を飛ぶ少女、目の前には恐ろしく凶暴に吠えるドラゴンがいる。
ドラゴンは翼で、少女は魔法を使い、お互いに激しい空中戦を広げていた。
少女の放つ魔力が無数の槍に形を変え、ドラゴンを叩くもびくともせず、逆に放たれる瘴気のブレスで環境を悪化させていくばかりだった。
「また、瘴気毒?いい加減にしてよ。キュア、それとホーリーアーマー」
吸い込んだ瘴気毒が全身に回る前に治療すると、もう一度掛けなおす防御の魔法。幾たびの使用したか分からない、戦いは決め手を欠く千日手となり、むしろ自分の魔力残量が厳しい少女の方が時が経つたびに不利になっていく始末。それでもやるしかないと、ポーションの小瓶を取り出し、失った魔力を回復させていく。
「もう、ランク1のドラゴンが厄介って聞いてない。疲れる上に儲けが少ないから使いたくないけど、やるしかないか」
そう少女が呟くと杖に少し大きめの箱を取り付ける。その形は銃の弾倉に酷似していた。
「デストロイモードシフト。魔力充填開始」
少女の声を聴くと、杖のパーツが稼働し、発射される銃のように弾倉から薬莢が飛び出すたびに杖に変化が生まれていった。
銃剣、加速用のウィング型ブースター、そして輝く砲身、最後に少女自身の周りを輝く魔力粒子が覆い、その姿を分身させるように揺らめいていた。
「最大充填完了、デストロイモード、ドライブ!」
輝く魔力粒子とブースターの蝶加速が重なり、見せるのは残像という形での分身。
そして銃身が突き刺さり……
「……香、ちょっと美香、聞いている?」
私はハッとして本から目を離した。そこには親友の明菜がいた。
「また、美香、本の世界に没頭していたわね。本当に凄いわ。本を読み始めると美香は主人公になれるんだし」
「もう、そんなんじゃないよ。ただ、憧れって奴かな?この人みたいになりたいって」
そう、私は本を読み始めるとのめり込み、周りが見えなくなる癖を持っているため、図書館の主とあだ名がつく文学少女ということで知られている。
「そんな美香のために、こんなのを見つけてきました」
「小説家になる?」
「このサイトは自分で小説を書いてみんなに読んでもらえるサイトなんだよ。評判もいいし、読むこともできるけど、書くこともできる素敵な場所。試してみて」
明菜に教えられたサイト、小説家になる、これが私の小説家デビューのきっかけでした。