世界の母ー03
「えーっと、じゃあ宿屋行けば会えるか」
この農村に湯と言えば、宿屋にある温泉しかない。以前入ったけど結構熱くて良い温泉だったからまた入ってみたかったのだが、今日はそこまでゆっくり出来るのだろうか。
宿屋に入ると。
「エリ氏……っ!」
「ぶひぃ……っ、なんて声……出してやがる……ツクモ氏ぃ……ッ!」
「だって……だってぇ……っ」
「私は……ローカルゲーマーの……松本絵里だぞ……っ。こんくれぇ何てこたぁねぇ……っ」
「そんな……こんなクソネタの為に……っ」
「クソネタを守んのが私の仕事だ……っ」
「でもぉ……っ」
「いいから行くぞぉ……カーラさんが、待ってんだ……っ!
それに……カーラさん、やっとわかったんだ……私らには辿り着く場所なんていらねぇ……ただ進み続けるだけでいい……止まんねぇ限り……道は、続く……!」
「カーラさん、ゴニョゴニョ」
「エ、ア、ハイ。えぇっとぉ、アヤマったらユルさない……?」
「ああ……分かってる……っ」
「あ、リッカ氏とカーラ氏」
「私は止まんねぇからよ……っ! お前らが止まんねぇ限り、その先に私はいるぞ……っ!!」
ばたりと倒れるエリ。
「だからよ……止まるんじゃねぇぞ……っ」
ちなみにコレのパロディは使い過ぎるのも考え物だから気を付けて使おうなエリ。
「何これ」
「いやエリ氏が湯でのぼせてたらしくて。涼しい宿屋玄関口で体を冷やしてた所っすわぁ」
「何でそのタイミングでオルガごっこだったんだよ」
「なんか必死に立ち上がって『カーラさんの所に行かなきゃ……ぶひぃ』と言ってたので、このタイミングしかないかなぁと」
「エリ、ダイジョーブですかぁ?」
「あ、ダイジョーブ博士……」
「エリ、それ改造してくれる人だ」
「あれ自分だけかもしれないんすけど、三回して三回とも失敗したんすわぁ」
「普通にあるある。連続で七回失敗した時は思わず発狂しかけたぞ」
「あと終盤で出て来た時はマジで悩みますわぁ」
と、そんなダイジョーブ博士談義をしている場合じゃない。
エリを部屋まで連れて行き、ウチワであおいでやりながら、ツクモに何があったかを説明する。
「なるほど、異常種っすわぁ……で、それがどうしてエリ氏とカーラ氏の結婚に繋がるんすわぁ? ちょっと嬉しい組み合わせっすわぁ」
「簡単に説明すると、エリって金貯めて色んな装備とかアイテムとか買い占めてただろ? それを婚姻システム使って共有する事で、戦闘でのアイテム不足を可能な限り解消しようって手段さ。個人的には複雑な組み合わせだけどな」
婚姻システムは婚姻した者同士のアイテムや装備品等、マネーを共有化できる。受け渡しの簡略化じゃなくて完全共有の為、例えばカーラさんが戦闘している最中にMPがなくなっても、エリがアイテム屋でMP回復薬を購入すればそれが使えるようになる。
別にツクモとかでも良かったけど、今のところ総資産としてはミライガハメ戦法を使って金を溜めてたエリが最適なのではないかと踏んだ、というわけだ。
「で、その連絡をしたにも関わらず何ら返答も無ければ、まず最初に行わなければいけない交際の申し出を受ける事のないエリ氏が気になった結果、ここまで来たと」
「こんなアホな事になってるとは思わなかったけどな……」
「うー……マジでゴメンねぇ……ふひ、でも今カーラさんに抱っこされてるのも良い感じぃ……っ」
ちなみに今はカーラさんがエリを抱き寄せて胸の所に頭乗せてやがる。エリが死ぬほど羨ましい……っ!
「まぁついでにリング取得もしときたかったし、丁度いいタイミングではあったけどな」
「これでうち等の面々は全員リング取得しましたなぁ」
「今後必須だろうしな。何とか攻略組の面々も取得してほしいもんだ」
「あー、そのさぁ……さっき言ってた、異常種って……やっぱ魔法防御弱い感じだった……? ぐへ、ぐへへ」
あー今顔におっぱいを押し込みましたー! 今度エリ絶対殺すマンになってやる!!
「そうだな魔法防御が弱かったと感じたよエリ今度ぶっ殺す」
「ふひひひ、頭と顔におっぱいと、耳からはリッカ君の罵声、このコンボでまた死ぬかもしれないぃ……っ」
「ダメだコイツ早く何とかしないと……」
「い、いやいやそうじゃなくてねぇ……私、ミライガハメ戦法作ったって言ったじゃん?」
「そういえばどういうモンかをしっかり聞いてなかったな」
「簡単だよ、アイスレイジをモンスターの頭上にじゃなくて、三方に囲むように展開して、出てこようとするミライガを撃って倒すッて戦法。
アイスレイジ落としちゃうと、ダメージは入るけど砕けて囲めないから、床に置く感覚だねぇ」
「アイスレイジってそんな使い方あるのか」
「マジックウェポンだと残る一方からノロノロ出てこようとするミライガを撃って倒せるんだけど、スティックの場合だと追撃で魔法放つとその衝撃で壊れちゃうと思う……」
「オマケに今回の異常種ミライガはデカすぎてアイスレイジで囲むのにどれだけ展開しなきゃいけないかもわからないって事だな」