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カーラ・シモネット-06

 隣り合って歩く二人の距離が、僅かに縮まる。


肩と肩が触れ合う程の距離までカーラさんが近づくと、オレはふわりと香る彼女の香りに、思わずドキッとしてしまう。



「ダッテー、リッカにはファーストチューもアゲちゃいマシタしね?」


「え」


「FDPにログインするマエ、リッカのファーストチューモラいマシタですよネ? アレ、ワタシもファーストチューなんデスよ?」


「え、いやでもカーラさんイタリア人だしキス位もうチューチューしてるんじゃ」


「ムゥ、イタリアのヒト、ミンナチューチューしてるとオモうのはヘンケンでーす。……マー、そーいうヒトのホーがオーイですけど」



 プゥーと頬を膨らませるカーラさんは、何というか、オレより年は上だけど、何というか守りたくなる可愛さみたいな所があって、この辺が普段彼女の基盤となる魅力なんだろうと思う。



「デモデモ、まぁリッカはタブン、マリアとリリナがスキなんですヨネ?」


「えっ!?」


「チガうんですか?」


「い、いや好きですけど、その、カーラさんがいう様な、恋人にしたいとか、そういう風には、考えた事、そういえば無いかも」



 そりゃ可愛い二人だし、彼女達ともし恋人になれたら嬉しいと思うし、さっき彩斗と話したように、手を出せるなら出したい気持ちは勿論あるけど……っ。



「アー、それともリッカ、Harlemをゴキボーのワルいコなのデスかー?」


「倫理的にNGではあるかと」


「ムゥ、ワタシもアイするヒトはヒトリにキメるベキだとオモいますケドー、モシ、モシですよ? マリアとリリナが『ハーレムでもいい』ってコクハクしてくれたら、ドーします?」


「それは断ります」



 考える事無く、キッパリと言い切ったオレの言葉に、カーラさんが僅かに驚くようにしていて、ちょっとオレも意外だった。



「オレ、そんな節操無しに見えました?」


「い、イエ。デモ、リッカはフタリをキズツけたくナイって、ハーレムをヨーニンしちゃうんジャないかナー、とオモって」


「そりゃ、その時にどうするかは悩むかもしれないですけど、でも多分、答え自体は変わらない筈です。


 だって、仮定の話だとしても、二人はオレの事を好きになってくれてるわけなんでしょ?


 ただ一人、オレの事を好きになってくれてる。オレを選んでくれたんだ。


なのにオレは『二人の内どっちかを選べなんて出来ないよ』なんて甘っちょろい事を言えるはずがない。


 オレを好きになってくれた人に、そんなカッコ悪い所を見せたくない」


「セージツなんデスね」


「頭の悪い選択です。どっちも手に入れる事が出来るのに、それをしない、意地になってどっちかを選んでるだけなんだ。


 しかも二人がもしそうしてハーレムを容認してくれているなら、二人だって散々話した結果だと思うし、その話した結果すらも無駄になるんだから、怒られるに決まってる」


「オンナがリッカのイったリユーをシったら、オコることなんてデキませんよ。ダッテ、ジブンのコトをしっかりとカンがえてくれて、ナヤんでくれたケッカなんデスから」



 仮定の話なのに、カーラさんはそう言ってオレの出した答えを褒めてくれる。



「ワタシは、そーいうリッカのコトバがスキなんですよ?」


「オレの言葉が?」


「ハイ。リッカ、ムカシゲーマーヤメよーかナヤんでたワタシに、サミシイってイッてくれました。


 ちゃんと、ジブンのキモチをツタエてくれるコトがどれだけタイセツか、リッカはワカってるンですよ」


「そんな大それた事じゃない気がする」


「リッカはジブンのコトを、カショーヒョーカしスギです。


 マリアだってエリだってツクモだってワタシだって、まだまだあのコのコトをシらないデスけど、きっとリリナだってリッカにイロイロとカンシャしてるハズですよ」


「オレは、何もしてないです」


「ホラそーイうトコロ! リッカはジブンのコトをちゃーんとシらないから、ジブンなんか、ってオモっちゃうんデス!」



 ……確かに、子供の頃からオレは、自己評価が低いという気は、指摘されれば何となくわかる気もする。


何故か、と問われて思い出せば、きっと親父の影響がデカいと思う。



親父は、オレになんでも一番になれ、一番でなければならない、と強制した。



例えば今でも思い出せるのは、水泳だ。


小学生の頃、夏休み限定で水泳部が作られる事となり、オレは泳ぐ事が好きだったから、それに入ろうとしたが、親父は一つ条件を出した。



『律。もし一番を取れないのなら水泳部を辞めろ。時間の無駄だ』



 親父が何を言っているのかよく分かっていなかったけど、その時は父親の意見に従う事が当然だと思っていたから、その通りにしようと水泳部に入り、学年別に25mの競争をした時、四年生の中では一番を取ったと親父に嬉々として報告したら、全学年合わせたらどうなんだと聞かれ、それは多分一位じゃないと言ったら『なら辞めなさい』と言われた。

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