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カーラ・シモネット-02

 先行プレイヤーがFDPにログインして、今日で二十三日目。


そしてオレやマリア、カーラさんやエリ、ツクモが救出の為にログインしてから、今日で二十一日が経過した。


それまでにも色々あったけれど、現状をまとめるとこんな感じ。



まず、先輩は歌姫というジョブを取得した事によって、マネーや所持アイテム数のステータスに、一つの項目が追加された。


 ファンシステムというモノらしく、メイド曰く「ファンが多ければ多い程、歌姫ジョブが他プレイヤーにかけるステータス上昇効果が上がりますよー」との事。


 ステータスの特別枠みたいな感じで、何度か先輩に同伴して貰いクエストへ挑んだが、攻撃力の低いプログレッシブ・スピードでも十分高い威力の打撃が放てた事から、バフ率としてはかなり高いと思われる。


で、現在先輩はミュージアムを中心にライブ活動を行っている。ファンを増やす事でバフ率が高まればその分彼女の重要性が上がる、というのも理由の一つだが、主な理由としてはファン数等の称号が無いかどうかを確認する為だ。



マリアは一旦先輩に付いて別の村や町へ向かい、色んな情報を取得してくれている。それに先輩だけだと不安だし、マリアと一緒ならば、例えレイドボスが出現しようとそほど問題ではないだろう。



ツクモとエリは、既にリングを取得して現在はバスラ農村を拠点として、そこから瘴気の谷と呼ばれるダンジョン攻略を進めている。難易度はそこそこに高めだそうで、たまにメッセで『助けてクレメンス』ってくるけど『頑張ってクレメンス』って返信してる。



そして、オレはと言うと――。



「カーラさん、三番テーブルはランチAセットとタルトセットっ」


「ハーイッ! これニバンtableにおネガイしまーすっ」


「すみませーん、水いいっすかぁ?」


「申し訳ありません、水セルフサービスなんでそちらからお願いしますっ」


「お兄さーん、こっちは注文いい?」


「はいただいま、少々お待ちくださいっ」



 カーラさんのお店【restaurant カーラ】のアルバイトをしている。


昼前のオープンから夕方までの開店だが、客足が一向に途切れないので、まかないを食ってる暇も惜しいくらいに忙しい。普段は何人かアルバイトを入れているそうなんだが……。



「NPCのアルバイトもセイカツグミのアルバイトも、ミーンナリリナのおっカケデース……デモ、キュージツのキボーはできるダケカナえてあげタイのデ、キョウはリッカにおネガイしちゃいマシタ」



 このレストランで先輩の宣伝をし過ぎたせいで、アルバイトですらファンになってしまい、ライブ情報があれば追いかけるようになってしまったそうだ。


で、たまたま特にやる事も無く、皆の情報をまとめる為に宿屋に引きこもろうとしていたオレにお声が掛かったというわけだ。



「定休日を決めるって言ってませんでしたっけ?」


「YES! アシタがテーキュービデス! ア、これサンバンtableデースッ」



 トレイに乗せられたランチセットとタルトセットを運びつつ、会計作業を済ませる。基本的に食事後はサッサと帰る客が多いから、回転率自体は悪くないのだ。



「リッカ、ちょーっとオチついたノデ、マカナイタベちゃってくだサーイ」


「え、でも」


「ダーメーデースぅー。ゴハンはちゃーんとタベないと、オッキくなれまセンよ?」


「……わ、わかりました。でも、忙しくなったら呼んで下さい」


「はーいっ」



 現在座っている客に注文は出し終えたので、確かにオレがいる必要も無いかもしれない。


 カーラさんの作ったマカナイ丼を食べつつ、今までフレンド登録している人達が取得した称号データをまとめ上げる作業も少しだけ進めておこう。


とは言っても羅列は難しい。数だけで言えば、現在数え間違い等が無ければ、累計千十二個の称号を獲得している。


 開始してから一月経っていない状況でこの数自体は非常に好スタートと言えるが、しかし難易度は上がるばかりだし、未だログアウトを押してもログアウトされない事から、その取得した千十二個の中に該当称号は五個無かったことになる。


ただ、気になるのは「この中に何個該当称号があるのか」だ。


オレ達は、その五千個中五個存在する該当称号を取得した際、それを判別する事が出来るかどうかがそもそもわからない。


もし一つでも見つける事が出来れば、攻略組もそうだし、既に攻略を諦めている生活組のやる気に繋げる事も出来るのだが……。



「オレら三十分も待ってたのに、食材がねぇたぁどういう事だよ!」


 

突然、怒鳴り声が聞こえて、オレは丁度食い終わったマカナイ丼の空き丼を置いて、スタッフルームからホールへと出向く。


カーラさんが出入口付近で『食材切れの為本日のご注文を終了とさせて頂きます』という看板を持って、何やら怒り心頭と言った様子の男へ頭を下げた。

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