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フル・ダイブ・プログレッシブ~元最強ゲーマーのオレが挑む、命を助ける為のデスゲーム~  作者: 音無ミュウト
第七章

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璃々那アラタ-13

『ジョブは四つ存在します。


 一つ目は【売人】――これはアイテム屋以外にアイテムを卸し、売買を行う者の事です。


二つ目は【演者】――これはミュージアムや他の街等で劇団員として所属した者の事です。


三つ目は【医師】――これは回復アイテムや魔法を用いずに医療行為の行えるスキルを有した者の事です。



そして四つ目が、今回リリナさんのなった――【歌姫】です。



歌や踊りで人々の心に安らぎを与える存在となり、多くのファンを従える者に与えられるジョブとなります。


 歌姫ジョブは彼女の歌声を聞いた者のステータス向上効果が存在し、またリングを装着している場合、この向上効果が20%上昇します』


「他のジョブが持ってる効果は?」


『それはその特定ジョブが取得、もしくは効果の恩恵を受けた場合ですねぇ。ただ、それぞれのジョブにおいても戦闘における優位性はありますから、取得を志してもいいかも、ですね』


「オレ達協力してやっただろ? もう少し教えてくれてもいいじゃんか」


『勘弁してくださいよぉ。そもそもあなた方がジョブを取得したわけでもないのにチュートリアルしてあげるのも十分越権行為なんですよぉ? なのにこうして理由をでっち上げて説明してあげてるんですから、ありがたいと思ってくださいっ』



 プンプンと怒りながら、しかし消える間際にペコリとお辞儀をして消えていった彼女を見届けて――リッカ達は、もう一度耳を澄ます。



――アンコールっ! アンコールッ!



湧き立つ歓声、そしてアンコールを所望する者達の絶叫。


しばしの時が経過すると――声が響いた。



『私の友達で、私のファンに、この曲を届けたいです――【璃々色日和】っ』



 聞こえる音楽、歌われる曲に、リッカと彩斗、ミサトが静かに聞いていると、中央で寝転がっていたマリアが起き上がり、涙を流して叫び出す。



「アラタァアァアアッ!! だいしゅきィイイッッ!!」



 突然の狂喜乱舞にドン引く彩斗とミサトだったが、リッカは思わず笑って、マリアの肩を叩く。



「帰るか」


「ええ早く帰るわよ!! もしかしたらアンコールがもう一曲あるかもしれないし、二分で帰る……っ!!」


「それは無理だねぇ、どう足掻いても一時間はかかる」


「馬車でもあれば別でしたが」


「チクショーッ!!」


 

ちなみに。


曲の一番が終わり、二番に入ろうとする間奏中に聞こえた言葉がある。



『私も皆が大好きですよーっ!』



 マリアの声が届いた結果かどうかは分からないが。


マリアはその声が聞こえた瞬間「オアアアアアア――ッ!!」と叫び、背中からビタンと倒れた事を、ここに記そう。



**



雨宮律君が部員になって、翌年の四月。


彼は、湯道正則先生にタブレットを没収された。



「本は紙で読むモノだ。タブレットなんか学校に持ち込んで、邪道だとは思わんか?」



 それが教師の言い分だった。


酷く前時代的だとは思ったが、スマートフォンや携帯電話等の通信端末は緊急連絡用として持ち込む事は可能としているものの、娯楽目的に使用する事は不可とされている。


それを広義解釈すれば、確かにタブレットを娯楽目的として没収する事は可能であり、そうした教師のやり方に不満を持つ事はあっても、否定する事は難しい。


そして、普段の雨宮君ならば、落ち着いて教師の言い分に、何か反論だったりして取り戻したり、もしくはすぐに諦めて没収を許容していただろう。



――けれど、その時の彼は、非常に焦っていた。



「お願いします。そのタブレットだけは返してください。二度と持ってきません。


 でも、壊れたりデータが無くなると、本当に困るんです。お願いします」



 今にも泣き出しそうな表情で、教師にそう懇願する彼の姿が、痛々しく感じられた。


だが、教師は「決まりだから」と言って、彼から没収したタブレットを乱雑に没収用品箱に投入し、ロッカーにカギを閉めて、保管した。


没収品は、没収した日から数えて一ヶ月後に教師が生徒に返却するというルールがあり、一ヶ月もすれば帰ってくる。


それでも、雨宮君は深く落ち込み、文芸部室の棚にあった一冊の文庫本を開きながらも――心ここにあらずと言わんばかりに、外を見ていた。



「あの、雨宮君」


「何ですか、先輩」


「あのタブレット、そんなに、大切なの……?」


「……昔、家族と撮った写真や動画のデータが、残ってるんです。バックアップも、前から取ろう、取ろう、と思ってたけど、取ってなくて」


「それは、どうして……」


「オレ、家族と、色々あって。バックアップしようとすると、その時の事、思い出すから。


 ……でも、そんなのオレのせいだし、先生に言うのも、何か違うな、って。


 それに、ほら。一ヶ月やそこら適当に扱われた位で壊れないだろうし、平気ですよ」

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