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璃々那アラタ-09

「システム側が運営処理に関わる事を喋らない様に設定してるって事か」


『はい。今回レイドボスが四体出現した事をあなた方に事前告知が出来た理由は、本来あり得ない挙動だからです。


 システム上、これを事前通告して問題処理をお願いしてはいけない、というルール・規定は存在しませんから』


「前にアタシらへ、メイドシリーズがどういう運営をしているか説明した事については?」


『あれはユーザーの利用規約に書かれている内容を説明しただけです。アタシ達が別にユーザーへ害する存在では無いと説明したでしょう?』



 彼女の説明に矛盾は無い。


 勿論今迫りくる脅威というのが、彼女の作り上げた意図的なトラブルという可能性自体も考えられるけど、そんな事を考えていても始まらない。



 ――ああ、そうだ。


そんな事より、オレ達は知らなければならない事がある。



「もし、その四体の内、一体でも街へ乗り込んだら、どうなる?」


『そこはレイドボス規定になりますが、簡単に説明すると数時間程、街機能の停止が成されます。


 宿屋やアイテム屋、装備屋、その他NPCが経営する酒場や食堂、ユーザーが経営する施設等も停止。建設された住居などがあれば、復旧に時間もマネーも必要となります。



 そして――今回に限っては、フォルムで開催されるアイドルイベントも中止され、次回の開催は未定となります』



 そう、それだけが分かればいい。



「メイド。オレ達以外にも注意喚起する予定はあるか?」


『これからする予定ですが、それがどうしたんです?』


「オレ達二人だけで止める。みんなは起こすな」


『無茶です! 通常のボスよりもステータスが高めに設定されているレイドボスを、四体同時に相手取る事になるんですよ!?』


「アンタ、誰に向かって言ってんのよ。アタシらは、天才ゲーマー・リッカとマリアよ? レイドボスが百体いたとしても、負ける気がしないわ」



 オレとマリアは、その場で装備品とアイテムを確認、宿屋に忘れ物が無いかどうかだけを簡単に調べ、走る。


一時間程走り、それらを視界に映す。



 古代の恐竜にも似た大型モンスター【狂食竜】ラーディング。


細い四肢だが、その身には鋭い刃と同じ力を持つ羽を、幾百と纏わせる大型モンスター【刃滅竜】ゲルトール。


その体を岩石で包んだ、遅く拙い足取りながらも、確かな重量を感じる事の出来る大型モンスター【岩石竜】ガルトルス。


猿人類のようにノソリノソリと二足歩行で歩みながら、しかしその体毛は轟々と燃え盛る炎を灯した大型モンスター【炎迅獣】バールクス。



どいつもこいつも、本来は複数のマルチプレイによって倒す事を前提に作られただろうモンスターばかり。


 オレとマリアはラーディングを、マリアはガルトルスを相手にした事があるけれど、決して楽な相手では無かった。


だが、それでも――



「やらなきゃなんないわよね、リッカ」


「マリアはいいのか。アイドルになれるチャンスだぜ?」


「逆に考えなさい。アタシら二人でやりゃ、ステージが開始する後二時間もかからずに終える事が出来るかもって」


「無理だろ」


「……ま、そうね。足止めと攻略に三時間、そこから帰還で、合わせて四時間ってとこ? アラタの観覧も出来ないのは残念ねぇ」



 それすら希望的観測が多分に含まれる計算だがな、と思って笑った瞬間。



「三時間で済ます事は不可能じゃないかもよ」



否定が、そこで放たれた。



「ええ。このメンバーであれば、一人一匹を相手すれば、不可能ではありません」



 何時の間にか、オレ達の隣に立つ、二人の女性。




漆黒の鎧を身にまとい、その肌を決して見せることの無い、屈強な存在――天才ゲーマー・彩斗。


知的な眼鏡、そしてクールビューティな雰囲気を醸し出す、謎の美女――彩斗の補佐・ミサト。




二人はそれぞれ、腰に自分の獲物――彩斗は双剣を、ミサトはスティック――を備えた上で、その右手中指に、指輪をはめ込んだ。



「……ああ、本気で不可能じゃないかもなっ」


「……そーね。何だかイケる気がするっ」



 オレとマリアも、目を合わせて、共にリングを装着する。



「オレがラーディングをやる」


「じゃ、アタシはガルトルスね」


「なら相性的に私がゲルトールで」


「私は残りモノ、バールクスですね」




 オレは【駿足のアイコン】を。


マリアは【技術のアイコン】を。


彩斗は【打撃のアイコン】を。


ミサトは【氷結のアイコン】を。



四人が一斉にアイコンをリングへとかざし、空へと放る。



〈Progressive・ON〉



「変身ッ!!」


「変身――ッ!」


「――変身っ」


「変身」



 音声コマンドが必要だから声をあげる。


けれど、これが意外とやる気へと繋がるのだ。



〈Progressive Run quickly.〉


〈Progressive Gun Technic.〉


〈Progressive Attack Exciting.〉


〈Progressive Recite Magically.〉



 全身を白の装甲で包み込んだ、オレの【プログレッシブ・スピード】


両腕両足だけを蒼の装甲で覆う、マリアの【プログレッシブ・テクニック】


 装備する双剣に漆黒の追加ギミックなどを展開する、彩斗の【プログレッシブ・ブロー】


空中に銀色のプレートを無数に展開した、ミサトの【プログレッシブ・フリーズ】



四人同時に変身を終えると、それぞれの獲物へと、突撃を開始した。

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