新庄璃々那-03
ガスラ砂漠は、今後のFDP攻略に際して重大であると言わざるを得ない。
二か所に配置された、リングを取得できるチュートリアル。
マリアがメイドに聞いた話が本当ならば、本来リングは初期装備として選択できるものではなく、あのイベントで取得をする事で使用する事が出来るようになるというのだ。
そして――マリアがメイドとした会話からして、彼女達はあくまでゲームの正常運営を目指しているため、こちらの不利になるような事はしてこないんじゃないか、という仮説を立てる事は出来る。
「後は彩斗にも伝えておこうかな。彩斗がリングを使えるようになれば、その分だけ戦術の幅が広がるし」
「私も、リングとアイコンが手に入ってるし……これ、使った方がいいのかな?」
「そりゃ、使えるなら使った方がいいっしょ」
先輩が若干強張った表情でリングとアイコンを見据えている。
「……もしかして、前に出て戦うのが怖いんですか?」
「あ、え、うん……モンスター、リアルで怖いし……」
「分からんでもないわねぇ。リッカやアタシは前出て戦うタイプだから、リングはそういうモノって印象になっちゃうのもわかる」
けど、とマリアの言葉は続く。
「アタシはウェポンガンだし、リッカはリング単体だからそう見えるだけで、スティック使いの場合は違う戦い方が適用されっかもよ。一度外で練習してみる?」
「今日の自由行動中に、ちょっと使ってみます……」
未だに少し怖そうにしていた先輩だったが、今後彼女も戦いに参加する事が多くなるかもだし、そうして戦いに慣れて貰った方が、こちらとしてもありがたい。
「マリアはどうする?」
「アタシ別にやる事ないかなぁ」
しばし考えていると、マリアが先輩に「ねぇリリナ」と声をかける。
「今日、アンタは何したいとかあるの?」
「えっと、さっき畑のお手伝いをしたお婆ちゃんにちょっと呼ばれているので、そちらに伺おうかと思ってます。その後にリングの練習してみようかな、って」
「アタシも行っていい? 特にやる事もないし」
「た、多分構わないと思いますけど、リッカ君はどうする?」
「オレは、ひとまず見回った上で彩斗やツクモ達に連絡します。なので今日は別行動ですね」
朝食を食べ終わった先輩。となれば後は行動あるのみだ。
「じゃあこの後、夕方まで自由行動ってことで」
「よし、じゃあ行きましょリリナ」
「あ、マリアさん、そんなに急がなくても、お婆ちゃんは逃げませんからっ」
マリアに背中を押されていく先輩。そんな姿を見ながら、オレも村の見回りを開始。
バスラ農村は豊かな畑と田んぼに囲まれて……なんと、山もある。
山ではタケノコも取れるらしく、今山から老夫婦が出てきて、背中に背負ったタケノコと栗を見て「よぉ採れたねぇ」と言っている姿が、何とも平和に感じた。
…………やべぇ、見回り終わってしまった……ッ!
い、いやいや。まだ何かある筈だ……何か、何かないのか、と探してみるも、ホントに畑と田んぼと山しか無くて、頭を抱える。
「どうかしたんけぇ?」
「いえ……なんでもないです」
「若い子さ見るのなんか、久しぶりだのぉ。あ、これウチの山で採れた山菜とタケノコ。タケノコはあく抜きしんさいね」
「え、あ、どうも……」
山菜とタケノコを頂いてしまった。ひとまずアイテムポーチに入れておき、今度カーラさんにでも渡しておこう。
「メイド……いるか……?」
『はいはーいっ! 呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーんっ! サンド・メイドでーすっ!』
何時もより登場に使われるエフェクトが多めに出てる気がするけど、無視する事にしよう。
「この村さ、モンスター出てるとかそういう設定ないわけ……?」
『実はこの村ですねぇ、トンデモ無い立地にある為、余所の街や村と交流が難しく、農村として生活するほかないって設定があるんですよぉ』
「日本にもそういう感じの過疎地ありそうで困る……」
『アルゴーラ方面からはガスラ砂漠。そしてこの先は山、更に山岳を超えたら瘴気の谷という不親切交通網。
村で生まれた若者は比較的安全に移動が出来るアルゴーラへと移り住んでしまい、結果的にご老輩の方々ばかりになってしまったわけですねぇ』
「村出たらむしろ危険だし、村来るのも危険って事か……」
『ただ結果的にですけど、この村ってそういう立地故に大型モンスターや肉食モンスターの侵入がほとんどないんです』
「ほとんどって事は、ある事はあるのか」
『ええ。でも村社会って怖いですよぉ、罠とか設置してますし、村人は猟銃を持ってますから、例えばミライガみたいな小型肉食モンスター程度なら簡単に狩れちゃいます』
「老人ばっかとはいえ、畑仕事で皆身体丈夫そうだもんな」




