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ミュージアム【彩斗とミサトの家】にて-02

「だが、もしそれがそうなら、問題は……」


『ああ、君の考えている通りだよ。初期のアルゴーラ、そして第二の街であるミュージアムを含めて、NPCの合計は七千人を超える。


 一日五十人ペースで進めているけれど、それでもログデータ解析にどれだけ時間がかかるかな』



 仮に一つの街で三千人がベースとして、残る三つの街で九千人。そして村や集落も含めたら、更にNPCの数は増えてくる。


闇雲に探し続けているだけでは、それこそ365日で全てを見つけ切ることなど、出来やしない。


よしんば出来たとして、そのエラーを起こしているNPCからエラーを解消させる手がかりが必ず見つかるというわけでもないだろう。


あくまでエラーが発生しているのは称号で、その称号にエラーを発生させた大本があるかもしれない、というのが雄一の見解だからだ。



『そこで君にお願いがある。今後は彩斗とミサトさんに協力し、エラーを起こしているNPCの捜索に当たってもらいたい』


「それを貴方に聞けと言われたが、どうして自分なんだ。リッカやマリアにも伝えればいい」


『リッカやマリアには純粋に攻略を進めて貰いたい。対して貴方や彩斗、ミサトさんは大人だろう? 攻略を進めていく上で必要な事を共有するのに適していると考えた』


「それだけか?」


『……君を偽る事は難しいな。


 ああ、私は疑り深くてね。信頼していても、多くに情報を流せば、それだけ流出経路が多くなりかねない。


 だから信頼できる大人、それも少数にだけ情報を流すんだ』


「彼らは、それ程愚かな子供じゃないぞ」


『信じているし、疑いたくはない。けれど、これは二百五名の人命に関わる非常事態だ。


 個々の感情ではなく、不確実な信用ではなく、ビジネスが出来る大人へ話そうと考える事は、決して間違いではないだろう』


「AIが自我に目覚め、感情に従って生きているのに、貴方はそうではないというんだな」


『それが、大人というものだ』


「貴方は、そんな大人になりたくなかった筈なのに、ね」


『……私が作ったゲームを子供がプレイして、私がなりたくなかった大人にならないでくれれば、それでいい。


 私は、汚い、ズルい、大人で良い』



時間だ、と言って通信を切った海藤雄一。


ツクモも、ふぅと息を吐いて、彩斗へと向き合う。



「それで、どうして通信時間に制限があるんすわぁ?」


「その語尾、無理矢理付けてたんですね」


「言わないで欲しいっすわぁ!」


「どうしてなのです? 貴方は、本来良識ある大人で記者でしょう? タレントの様にイロモノキャラで売り出すわけでもない。そんな貴方でなければ、彩斗への取材はお受けしましたのに」



 問う二者の言葉へ、適当な言葉を返す事は容易い。


しかし、彩斗は自身が女性であると打ち明けてくれているのに、自分の事を黙っているのは、何だか気分が悪くて、ため息を挟んでから、答える事にした。



「……別に、大した理由はないっすわぁ。


 記者ってェのは、他人のプライベートや秘密にしたい事、時には聞かれたくない事と分かっていながら、聞かなきゃいけない時が来る。


相手が大人なら、自分だって淡々と尋ね、然るべき方法で聞き出すだけっすわぁ。


けど、相手が子供だったら? その子供と、仲良くなりたいと思ってしまったら? 


その子供たちの為に始めた事が、つい癖となってる。それだけの事っすわぁ」


「海藤雄一とは普通に話すのに?」


「彼とは長い付き合いですわぁ。語尾やスラング使わず話せる人は、もう両手の指使って数えられる程度にまで減ってますわぁ」



 彼の言葉を聞いて、彩斗もミサトも笑う。


笑われるような事を言っただろうか、と考えるものの、しかしそれを問う気にもなれず、話を戻す。



「さっきの質問に答えて欲しいっすわぁ」


「通信時間の制限について、ですよね。単純に、そのエラーAIやメイドに感づかれる事を避ける為ですよ。


 通常建設された自宅にまではガイドAIであるメイド達が立ち入る事は無いですし、そのエラーAIもNPCを演じているのなら、立ち入る事は無い筈。


 けれど怪しんだ二者が無理矢理立ち入り、現場を確認して今後の通信経路を切断されても困るので、時間は短く、また通信する回数もなるべく減らす事にしたんです」


「なるへそ。しかし、自分達三人だけで、そのエラーを見つけ出す事は、下手すると称号五千個よりも難しいかもしれないっすわぁ」


「ああ――だからこそ、貴方なんだよ。


 コラム記者として人の心を懐柔する事に長け、そしてギャルゲーやエロゲーの知識に富んだ、人を観察する事に関してだけ言えば、他の追従を許さない人物。


それが、ツクモという存在だろう?」



彩斗の言葉に、ツクモは笑いながら、彼女が伸ばした手を握り――言うのだ。



「……彩斗氏、エロゲーってもう一回言って?」


「エロゲー」


「おっほぉ、爽やかクール系イケメン女性の『エロゲー』って発言がこんなに股間へ刺さるとは思いませんでしたわぁ」


「セクハラです」

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