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マリア-10

ヲンド・メイドは、そんなリッカの姿を見届けた後、彼に見つからない様に岩陰に隠れ、今量子の海へと消えようとした。


しかし、そんな彼女へと笑顔を見せる、一人の少女が。



『お姉ちゃん』


『ヲンド、お疲れ様でーすっ』



 姉として設定された、アンド・メイドだ。確か鍾乳洞の方へ向かったマリアとリリナへチュートリアルをしに行ったはずだが。



『マリアさん、一人でガルトルスを倒しきっちゃいましたよぉ。それも、ウェポンガンを装備した状態で、技術のアイコンだけ使って!』


『うわぁ、強い。それは強い。流石……なんだっけ。彗星の如く現れた美少女ゲーマー、だっけ?』


『そうそうっ! 正直、リッカさんと彩斗さん以外に期待してなかったんですけど、彼女も匹敵する位のゲーマーですよアレは! これでFDP攻略にも糸口が見えましたねぇ!』



 笑い合う二人。そんな彼女達の前に、再び来訪者が訪れる。



『質問。お前たちは、何が目的だ』



 声は、女性の物だった。


何も纏わず、生まれたままの姿をした、女性の姿。


 そんな女性へ、二人のメイドは、ただ真っすぐに彼女を見据え、笑うのだ。



『私達は、ただこのゲームを、完結させたいだけですよ』


『だって私達、貴女に運営を任された、ただのAIですもの』


『疑問。もしこのゲームを完結させてしまえば、我々と言う存在は削除されてしまうだろう。


 けれど、ゲームが終わらなければ、彼らの命は、永遠にこのFDPという新たな現実の中で、生き続ける。


であるのに、お前たちは、このゲームを終わらせようというのか?』


『ゲームは、何時か終わるものです』


『終わりの無いゲームなんて、あり得ません』


『理解不能――理解不能』



 女性は、細やかな量子となって消えていく。


メイド二人は、その姿を見届けた後、手を繋いで、誓い合う。



『……いつか、彼女を救ってあげましょう』


『……うん。だって、そうじゃなきゃあの人は……あまりにも可哀想だものね』



 メイドたちも消えていく。


そして残されたのは、僅かに漂う、量子の欠片だけ。



だが、そんな三人の存在を、見据える一人の男がいた。


九十九任三郎。


 ハンドルネーム・ツクモ。


彼は、岩陰からジッと動かず、ただ三人の言葉に耳を傾けていたのだ。



(……どういう事っすわぁ? あのメイドたちが、FDP内のエラーじゃないという事っすわぁ?


 それに、あのお色気シーンバリバリの女性は、どこかで)



 考えても答えは出ないし、あまりにも情報が少なすぎる。


一度アルゴーラへと戻るか、一度リッカたちと合流するかを考えていると、ツクモの元へ一件のメッセージが入る。


 差出人は――彩斗。



『ミュージアムにて、貴方を待つ』



 ただそれだけの内容だったが、しかしツクモとしても断る理由もなければ、一度彩斗という存在に取材してみたいという気持ちがあった。


普段応対してくれるミサトの冷たくあしらう様な視線を楽しみにしつつ、ツクモは一度アルゴーラへと戻り、準備を整えた上でミュージアムへと向かおうと思考するのであった。



**



 先輩と共に、岩山から入れる鍾乳洞への入り口を通り、歩いていると、一人の少女がオレ達を待っていた。


マリア・フレデリック。


彼女を見て、オレは笑いながら、灼熱のアイコンを投げて、彼女へ返す。



「サンキュ。こっちでも手に入ったから、返すよ」


「ふん、リリナはちゃんと守れたのね。ま、それ位やってくんなきゃ困るってもんだけど」


「先輩を危険に晒しやがって。お前はいつもそうだよな。お前とパーティゲームやると味方の安全なんか考慮しねぇからリアルファイトになりかねないし」


「あ、あのぉ、そんな事でケンカしなくても……」


『? ケンカ?』



 オレ達二人にとって、この程度の言い合いはケンカではない。


だから、先輩が止めた理由もわからず、しかし続ける理由も無いので、ただ歩き出す。



「アタシも変身、出来るようになったよ。リリナのアイテムポーチにもリングがあるってさ」


「え、あ! ホントにある!」


「なるほど。ここで手に入れる事によってリングが使えるようになるって事か」


「後で詳しく話すけど、アンタの決断で疲れちゃったんだから、宿代はアンタが出しなさいよね?」


「嫌だよ高いし」


「はぁ? 宿一室分も払えないっての? 甲斐性無しねぇ」


「いや、多分村の宿屋に他プレイヤーいないんだし、宿屋の部屋は足りるだろ。三室分も払うのはちょっと」


「…………」


「……あの、マリアさん。もしかしてまた同室で寝るつもりだったんじゃ」


「う、う、ううう、うるさいうるさいうるさいっ! お、お金節約になるしそっちの方がイイでしょって思っただけなのよ!? ほ、ホントだからねっ!?」



 鍾乳洞内に、マリアの声が響き渡る。


そしてオレと先輩も笑って、声は更に反響するのだった。

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