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マリア-06

 正直、あの子に赤のアイコンを渡したことを、少しだけ後悔する。


彼女に赤のアイコンをリッカへ届けさせた理由は二つ。


一つは、単純にリッカの安否が問題だったからだ。


アイコンが多ければ多い程戦力になるだろうし、あっちに何が待ち構えているかわからないから。


もう一つは、リリナの安全確保。


この狭い空間では、彼女を守りながら戦う事は難しい。リッカならば彼女の安全を守りつつ戦う事は出来るだろう。



しかし、問題は一つ。



リリナに渡した赤のアイコンは、細かいステータスを見たわけではないが、先ほどの事を考えると火力強化に繋がるアイコンだっただろう。


それを手放し、あまつさえ一人で知らぬ敵と戦うのは、非常に分の悪い賭けだ。



「……分の悪い賭け? アタシャ、何言ってんのかしらね」



自分で自分に突っ込んで、ニヤリと笑う。


分の悪い賭けは、嫌いじゃない。


それに、アタシは縛りプレイをする時、武器を弱くしてレベルが高い状態でやる女だ。


そしてこのゲームに、レベルの概念はない。


あるのは、その者の実力だけ。



つまり――十分なのだ。




「オマエの相手なんか、アタシだけで十分だっての」




 アタシの実力は十分なんだから。



ガルトルスが、咆哮と共に先ほどキャストオフした岩石を掴んで、アタシに向かってやたらめったらに投げつけてくる。


一つ一つを避けていき、鍾乳洞の壁に足を付けたアタシは、そのまま強く蹴りつけて、空中で身体を捻り、投げられた岩を一つ、右足で蹴りつける。


砕け散る岩。奥から襲来するアタシ。


その顔面をそのまま蹴ったアタシは、岩で隠れた目に向けて銃弾を二発放ち、マガジンを地に落として予備マガジンへ換装。


一度銃を宙へ投げ、傷つけた両目に拳を二撃放つと、ダメージとして有効だったか叫び、身をよじらせるガルトルス。


ぶん、と岩に守られる腕を振り込んでくるガルトルスに合わせ、右手で防ぎながら左手で抑え、力任せの一撃を何とか耐える。


ギギギ、と歯を噛みしめながら、アタシは右足を振り込んで顔面を蹴りつけた。


僅かに隙が生まれる。


重力に従って落ちて来た銃を掴んで、地面に着地したアタシが、向かう先は先ほど滑り込んだ腹下。


二発、弾丸を撃ち込んで肉質を柔らかくし、追撃と言わんばかりに拳を叩き込む。


だが、腹下にいると知られた結果、圧し掛かられると悟った瞬間、脚部スラスターを吹かして、抜け出す事に成功。


ガルトルスの動きは、段々と遅くなっていく。


つまり、勝利は目前だ。



「トドメ――!!」



 右足を僅かに引いて、腕を広げる。


バチッと青白い光が右足に集中し、そのまま前へ駆ける。


強く地面を蹴って、天井に手を付けたアタシは、天井を押して落下の運動エネルギーと合わせて得られる速度を威力に反映させた、キックをお見舞いする。


そしてこれが――



「プログレッシブ――ラストアクションッ!!」



 ゴギン、と音を奏でながら、ガルトルスの岩石が、震えた。


金属同士の反響か、ブルブルと体を震わせた後、ガラガラと音を立てて身体を崩していったそれは、最後に体毛も無くみすぼらしいサルのような姿を見せた後、倒れ、消えた。


 そして最後に戦利品をドロップし、称号も合わせて手に入る。



『N.0051〔【岩石獣】ガルトルスを一体討伐する〕』



 ふぅ、とため息を付き、リングを外す。すると変身は解け、アタシの両腕両足に纏われていた装甲が消え、元の蒼いアイコンへと戻っていく。



『ガルトルス討伐、おめでとうございます! コレにて、貴方と共に行動する人達は、リングの取得が出来るようになりました!』



 再び現れたメイド。彼女はパチパチと手を叩きながら、アタシへ賞賛の言葉を浴びせた。



「あのさ、じゃあリングの質問はようやくできるって事でいいの?」


『ええ! このチュートリアルをクリアする事で、ようやくリングの事をご質問頂けます!』


「人伝で聞いたんだけど、何でリングを初期武器で選択しておいて、他の武器へ変えたら消えてたの?」


『その辺はあなた方の想定通り、システムエラーが要因ですねぇ。そもそもリングは初期装備として存在する筈がない武装なんですよ。このイベントをクリアする事でようやくリングを装備できます。


 だから現在は初期装備としてリングを選択できますが、後にリングを外したら消えるのは、そもそも初期装備として選ぶ事が出来ないのに出来てるので起こったエラー、というのが正しいかと』



 なるほど、と思いつつ、続ける。

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