表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/246

マリア-05

『ああ! あれは【岩石獣】ガルトルスです! アレを倒すには、リングの力が必要と聞いています!』



 思わず、口を開く。



「何よそれ! リングって、最初の武器選択で選ばないと二度と手に入らないんじゃないの!?」


『ああ、でもリングを持っているモノがいないのでは、どうすればいいのでしょう!』



 白々しい、と思った時には、既にガルトルスが行動に移っていた。


腕を振り上げたのかと思いきや、その体を覆う岩を振り、投げて来たのだ。


思わず、身体が竦みそうになったけれど、しかしリリナがアタシの身体を引っ張って伏せてくれたおかげで、頭上を通り過ぎ、やり過ごす事が出来た。



『そういえば、確かガスラ砂漠の鍾乳洞には、五百年前の戦争で作られたリングが納められ、ガルトルスが護っていると聞いたことがあります!』



 急ぎ、その場を離れると再び突進を仕掛けてくるガルトルス。


そして、メイドから語られた言葉を聞いたアタシは、ガルトルスの現れた先を、見据える。


行き止まりではありそうだったが、しかしそこに――一つの宝箱。


そこへ行くには、ガルトルスを振り切っていくしかない。



『……てなわけなので、これでチュートリアルは終了ですよーっ、ご武運をお祈りしますねぇ!』



 消えてしまうメイド。けれどそんな奴の事を気にかけている暇はない。


アタシは、冷や汗を拭いながら、手を握るリリナに、小さく言葉を投げる。



「アンタ、しばらく一人で逃げてられる?」


「え」


「アタシが、突っ込む」



 答えを待っている暇はない。


リリナの手を放して、真っすぐにガルトルスへと向かっていく。


馬鹿正直に突っ込んでくるアタシの事を、それはどんな風に認識したか。


それは分からない。


けれど、ガルトルスは咆哮と共に身体全体を震わせ、全身の岩石を、一斉に放出した。


一度宙に浮かんだそれは、しかし重力に従って落ちてくる。


リリナに目をやりたかったが、けれどこっちも余裕はない。



――そのまま、スライディングで、ガルトルスの足元へ、滑り込んだから。



その短い足と足の間をすり抜け、岩石の無い、腹を目にやる。


 コイツは、岩石獣という名の通り、ケモノなのだろう。


つまり、岩石そのものではなく、生物だ。


なら必ず、防御の薄い場所があるとして、それはどこだろうと考えたら、目に見えないここしかない。


すれ違いざま、銃弾を三発撃ち込んでやる。



「弾丸をプレゼントしてやるッ!!」



そうすると僅かにうめき声をあげたガルトルスと、そんな奴の足元を通り抜け、転がったまま宝箱のある場所までたどり着いたアタシは、乱雑にそれを開け放つ。


小さなリングが一つと、供えられた赤と蒼のアイコンが。



『それです! そのリングを指につけて、アイコンをかざして!』



 メイドの声が、背後から聞こえる。


どうせ、笑っているんだろう。


しかし、そんなのを確認している暇はない。


アタシはこれから――コイツを倒さねばならないんだ。


 リングを右手の中指に。そして雑に掴んだ蒼のアイコンをかざす。



〈Progressive・ON〉



 機械音声と共に、アタシはそれを指で弾き、宙へ浮かべる。


そして、叫ぶのだ。




「変身……っ!」




 アイコンは空で溶け始め、アタシの身体を包む。


 しかしリッカの様に全身を包むわけではなく、それはアタシの腕と両足に装着された。


蒼色の装甲。所々に存在する小型の噴出口から、水蒸気がブシュッと放たれた事により、変身が完了したのだと実感する。



〈Progressive・Gun・Technic.〉



 手には、先ほどまで装備していた銃がそのまま存在する。


もう一個の赤いアイコンも掴んで持ち、ウェポンガンのアイコン装填口に入れ込んだ。



「リリナ、下がって!」



 叫ぶだけ叫んで、アタシは地面を蹴り、そのままガルトルスへと向かっていく。


アタシの身体ではないんじゃないかと感じる程の疾走感。


流石にリッカが変身した駿足程ではないが、しかしそれでも、この足が遅いウスノロを相手にするには十分だ――!


突っ込むと同時に、踏み込んだ左足とは逆の右脚部を振り込んで、固い岩肌に蹴り込むと同時に、ウェポンガンを構えて、撃つ。


普段の銃弾とは違って、何やら高熱の様なモノをまとった銃弾が射出されると、それが装甲を焼いていく。


動きを止めたガルトルスを放って、アタシがリリナの元へ。


リリナは目をパチクリさせた後、アタシが差し出した赤のアイコンを見て、首を傾げた。



「リッカの元へ行って! コレを届けて!」


「え、あの」


「早くっ!」



 アタシが急かすと、リリナは頷いてそれを受け取り、来た道を走り、戻っていく。


そして彼女が行った事を確認した後、アタシはガルトルスと向き合って、銃を構えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ