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マリア-04

「あのメイドがどの程度まで運営に関わる事が出来るかはわからないし、何を企んでるのかもわからない。


 もしかしたら、運営者がいないこのゲームを盛り上げようとしているだけなのかもしれないし、ひょっとしたらアタシ達人間に牙を剥いてるのかもしれない」


「そ、そんなSFみたいな」


「みたいじゃなくて、もうとっくにそうなってんのよ。


 ……アンタ、おかしいと思わないの? このゲームというより、このゲームの根幹になってる技術である、人体の量子化とか」



 人体を量子レベルにまで解体し、それをデータとしてマザーコクーンに転送、マザーコクーン内に存在するゲームエリアに転送することで、遊ぶことを可能とする、このフル・ダイブ・プログレッシブというゲームというよりは、その技術そのものが、現在の科学力を超えた超開発と言っても過言じゃない。


そんな中、マザーコクーンはログインユーザーを逃がさないエラーを引き起こした。



――そんな事が起こっていて、SFの題材としてよく使われる、AIの反乱を考えない筈がない。



「メイドが敵になる可能性がある、という事はクリアに繋がる要素を、アイツが率先して消しに来る可能性もある。


 例えこっちの鍾乳洞に雄一が言ってた宝箱があったとして、リッカが向かった方にあったとして、それを素早く回収が出来れば、メイドを出し抜くことが出来るかもしれない。アイツはそこまで考えて行動してんのよ」



 勿論、現在のゲームマスターである奴を出し抜くことが出来ない可能性だってある。むしろそっちの方が大いに考えられる。


けれど――ゲームは、必ずクリアできるからこそ、他人に提供できる。


それを知らぬAIでは無いはずだ。



『その通りですよぉ。クリア出来ないゲームなんて、ゲームじゃありません。アタシ達だって、別に不正もしていないのに罰したり、ユーザーの不利益になるような事はしませんってばぁ』



 ジジッと、電子音と共に現れたメイド。アタシはツクモじゃないので、コイツがどのメイドかもわからない。



「アンタは、何メイド?」


『私はアンドですよぉー。それより、余計な心配をしてるんですねぇ』


「アンタが敵じゃないって保証もないじゃない」


『アタシ達は別に、人類の敵じゃありませんよぉ。さっきのメッセをロンドが削除したのだって、外部から不正に入力されたデータだからで、そのメッセを受け取ったリッカさんを罰したりしてないでしょう?』


「アンタら、どこまで運営に関わってんの?」


『基本全部ですよぉ。モンスターの出現だったり街でのイベント管理だったりドロップ率だったり、その辺を予め設定されている数値をいじる事無く、自動的に演算した上で運用しているだけにすぎませんよぉ』


「こんだけ色々喋ってくれてるけど、それでもリングの事は喋ってくれないわけ?」


『ですねぇ。リングに関しては、完全にシステム側が情報開示を規制しています。……今は、ね?』



 いつもの柔らかな表情とは違い、今のメイドは冷たい表情を浮かべる。


アタシも、なるべく情報を聞き出したいのは山々だけど、コイツが本当の事を喋っているかもわからないし、それ以上特にいう事は無い。



「で。呼んでも無いのになんで出て来たのよ。サポートキャラに徹するのはやめたの?」


『そんなわけないじゃないですかぁ。……チュートリアルですよ』



 ズン、と。


鍾乳洞全体が、揺れた。


何だと声をあげそうになったけれど、隣に腰かけるリリナの手を先に取った事で、言葉を出す事は無かった。


鍾乳洞の奥から、何かが近づいてくる事だけが分かった。


灯を頼りにそれを視認しようとしたが、しかしそれは必要ない。


それは、岩石の塊で出来ていた。


所々に、宝石の様な輝きと、土の入り混じった茶色の色合いがアンバランスではある。



『N.0050〔【岩石獣】ガルトルスを発見する〕』



 称号が獲得される。しかしそれを喜ぶ暇もなく、それは岩で隠れていた口を大きく開き、雄叫びをあげる。


重たい足をドスンドスンと前に進ませ、走ってくる様子が見受けられたので、アタシは軽いリリナを抱きかかえたまま横っ飛びしたまま、ホルスターに備えていたウェポンガンを取り出し、一射。


しかし、放たれた弾丸は、岩と言うよりは既に装甲と言うべき身体によって跳弾し、逸れてしまう。


 ソレ――【岩石獣】ガルトルスとやらは、僅かに身体を滑らせながら、壁に激突する。


 その衝撃で鍾乳洞が崩れないかとも思ってしまったが、しかし問題はなさそうだ。


アタシはメイドに視線をやる。



「チュートリアルって事は、アイツを倒す方法を示してくれんでしょ!?」



 そう叫ぶと、メイドはニヤリと笑みを浮かべた後にコホンとわざとらしい咳ばらいを一つした後、表情を苦し気なモノへ変えて、叫ぶのだ。

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