表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/246

攻略組-11

『ですが事業計画の内容次第では普通にお断りもしていますですよーっ、しっかり内容を審査しますので、テキトーな事業を提出してもすぐバレますからお気をつけてですねーっ!』


「カーラさんはどんな事業計画を提出したんだ?」


『読みます? ちなみにイタリア語で書かれてますですよーっ』



 とは言っても、FDP内であれば書かれた内容も翻訳されるので、概ね問題なかった。


……スゲェ、普通の事業計画書だ。やっぱり片言なだけで真面目な大人女性なんだなって事もしっかりと分かる。



「そうだ。ついでに聞いていいか?」


『はいなんですねーっ?』


「リングについて」


『リングについてはお答えできませんですねーっ』


「いやでも」


『システムですねーっ』



 頑なにリングの説明をしないなこのメイド。今なら使い方も分かってるオレには説明してくれると思ったんだが。



『ご質問は以上ですねーっ? ではではーっ』



 ドロンと消えていったメイドの姿を最後まで眺めた後、オレはカーラさんの淹れたコーヒーを飲みながら、マリアと先輩に耳打つ。



(……例の同時交際について、特に何も言われてないから、特にルール違反とかではなさそうだな)


(後は、決闘戦をやってみて、そこでどうなるかが問題ね)


(わ、私、決闘戦で負けますっ、そうすればリッカ君もマリアさんも叩かなくて済むしっ)


(何言ってるんですか。男女差別を言うわけじゃないですけど、こういうやられ役は男の仕事ですってば)


(そうねリッカ、今までありがとう。アンタの事は二度と忘れないわ。これからもあっちで元気に過ごすのよ)


(何で永眠な感じで言うんですかマリアさんっ)



 ちなみに、オレ達三人が (ゲーム内での事とはいえ)交際している事は三人にまだ喋ってない。


知られるのが恥ずかしいとかそう言う事ではない。



多分エリに知られたらこうなる。


『推しに彼女が出来た……しかもハーレム……でも、そこに私がいない感じが良いかもしんない……ゾクゾクする。ヤバ、私NTR好きでもあったのかな……ふひぃ、ふひひひひっ』



 多分カーラさんに知られたらこうなる。


『オーッ!! リッカはテがハヤーイゴーカイなコデスねーっ! ハーレムはチョーットハハテキにナヤましートコロがありますガ、それでもウレシイデースッ! キョウはマツリデースッ!!』



 そしてツクモに知られたらこうなる。


『今TNT作ってるんすわぁ。爆発させなきゃ…… (使命感)』



 面倒くさい事になるのはもう目に見えている……っ!



「ハーイ! リッカがサイショデースッ! コレがガルファ卵のカルボナーラデースッ!」



 半熟卵状の小さな卵が三つ乗ったカルボナーラだ。綺麗なクリームとチーズらしき匂いが鼻孔を通り、朝食だというのにお腹が空いてくる。



「先食べなって。メンなんだから、伸びるよ」


「すまん。先に頂きます」



 用意されていたフォークとスプーンで、まずは一個の半熟卵を割ってみる。トロットロの黄身がパスタと絡んで、見た目も非常に良いのだが、果たしてお味は……。


うん、不味い筈がなかろうなのだ。自然と笑みが浮かんでくる優しい味で、これが母の味って感じなんだろうなぁ。



「ツギはツクモのブルルクステーキデスねーっ! テッパンがアツアツなので、ふーふーしてタベテクダさいね?」


「う、ふぅ。う、ふぅ」


「何あの息の吹きかけ方」


「気にするな。ツクモ、後でお前の頭カチ割るから覚えとけ」


「このステーキが最後の晩餐になるのであった……」


「朝食だけどな」



 最初こそふざけていたツクモだが、しかしナイフを刺した瞬間にスッと刃が通る柔らかな肉質に、オッと声をあげた。


 そして一口大に切って口へ放り込んだ瞬間、彼はサングラスを外して涙を拭い、天井を見上げた後にサングラスをかけ直して食事に戻るというよくわからない時間を過ごしていた事から、大層美味しかったのだろう。


……ていうか、オレも見ていて涎が出そうになった。次来たらアレ頼もう。



「ツギはー、エリとマリアに、ミライガのテバサキデスよーっ」



 ここまで知らないモンスターの名前ばっかりだったけれど、ここでようやくオレ達の知ってるあのモンスターだ。


確かに足の形とかは鳥っぽかったけど、本当に手羽先にして美味しいんだろうか。


見た目は、完全に手羽先だ。エリは元々名古屋人だから食べなれているだろうから、彼女が満足できるかどうかなのだ。



「あむ」



 まずはマリアが行った。彼女は一口咀嚼していく毎に、段々と表情を綻ばせている事に気付いているのかどうか。



「甘辛いタレがイイ感じに口で広がるのナニコレっ」


「フフーン、コレはナゴヤのテバサキをマナんだトキに、タレをケンキューしたんデスよーっ」



 えっへんと胸を張った彼女に続けて、エリも一口。


彼女はマリアみたいに分かりやすくは無かったが、黙々と食べている所を見ると美味しくはあるんだろう。



「ふひ、ふひ……」



 手羽先の先端を摘まんだエリは、一気に口の中に頬張り、引っ張るように口から出すと、あら不思議。綺麗に骨だけが残って、後は口に残る肉を咀嚼するだけなのだ。



「こ、これ名古屋風……っ! カーラさん、ホント、凄い……結婚したい……っ」


「ザンネンですが、ワタシはオンナなので、エリとはケッコンできませーん!」


「FDPでだけでも結婚したいなぁ……っ」



 正直その気持ちはわからないでもない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ