攻略組-05
「む、早かったね。もう少しゆっくりしていても良かったのだが」
「女性と違って、男は洗う場所も少ないから」
「ふむん。可愛らしい女の子たちとお話するのは楽しかったのだが」
何故か顔を真っ赤にしている先輩と、ぷっくりと頬を膨らませるマリアの姿に首を傾げつつも、来客用ソファと思しき先輩の隣にかける。
「では本題に入ろう」
先ほどまでの少しだけちゃらけた態度を無くし、表情を引き締めた彩斗を合図に、全員も緊張を内包させる。
「まずは、リッカやマリアの事について聞いても構わないかな?」
「単純な話、オレ達は先行プレイヤーを助ける為に、情報をある程度持ってきた上でFDPにログインした。メンバーはオレ、マリアに加えて、カーラ・シモネットさんと、松本絵里、九十九任三郎。全員名前を聞いた事はあるだろ?」
「ああ、カーラさんとは何度かお会いしているよ。エリさんとツクモさんは、私が直接お会いした事は無かったと思うが、しかしミサトがお会いしていると思う」
「カーラさんの番組出演はイメージアップに繋がると思いましたが、松本さんと九十九さんと会談させるのは、イメージダウンに繋がりかねないと判断し、共演をNGとさせて頂いておりました」
そういう理由で共演者選んでたのか……ちょっとオレやマリアの番組に出演してくれとお願いしていたらどうなっていたかは気になるが、そこはグッと堪えて次へ行こう。
「攻略に関してだけれど……称号には大まかに五つ区分訳がされているらしい。それが『狩りに関する称号』、『食材に関する称号』、『採取に関する称号』、『恋愛に関する称号』、『娯楽に関する称号』の五つだ」
「割合としては全ての区分で千個となり、合計五千個という事で構わないんだね?」
「その通り。そして先輩に聞いたんだけど、攻略組の面々は現在モンスター討伐に力を入れているとか」
「そうだね。この家を建設したように、サブミッションになっていそうな事は可能な限りやろうとしているが、しかし人手が足りていないというより、知識が足りないというのが現状だ」
「そこでカーラさんとエリとツクモなんだ。多方面からの知識があれば、その分攻略効率も上がるし、ツクモなんかは既にメイドが誰かを当てる称号をクリアしてる」
「あのメイドを当てたのか、流石だな。私も何度か挑戦しているが、メイドの見分けが付くのは推してるオンド・メイドだけだ」
逆にその一人だけでも見分け付くのはすごいと思う。
「では、私が率いている攻略組の何人かをそういった狩り以外の方面に力を入れさせた方がいいのかな?」
「いや、むしろ通常プレイの全般を皆にお願いしたい。オレ達六人だけじゃそこは絶対に時間がかかるけど、百人近い攻略組と彩斗なら、通常プレイを一年以内にクリアする事は可能だろう」
「問題は通常プレイで手に入れる事が出来ない称号をどれだけ多く君たちが見つけ、手に入れる事が出来るか、か。そういう事ならばそうしよう。次に聞きたいのは、君の装備するリングについてだ」
頷き、オレはリングを一度指から取り外そうとする。
すると彩斗はそれを止め、そのまま付けていろと言わんばかりに、首を横に振る。
「アルゴーラでもミュージアムでも、リングはどこにも売られていない。そして問題は『初期装備でリングを選択しなかった場合』、もしくは『後にリング以外へ武装変更をした場合』だが、リングの装備を再取得する方法が今のところ見つかっていない」
それはオレも知り得なかった情報だ。
「待ってくれ、もしリングを最初に選んで後々別の武器に変更したって、装備品の中にリングがあるだけなんじゃ」
「いいや。例えばミサトも元々リングを選択していたが、武装としての使用方法がわからず結局スティックへ変更した。しかし後にリングの使用法を確かめようとしても、装備品一覧にリングが無く、購入や入手の手段も今のところ見つかっていない」
「つまり――オレがリング以外へ武器変更すれば」
「そう。リングに関する称号が一切手に入らなくなる、という事だ」
海藤雄一は何を考えているのだろうか、と彩斗が僅かにぼやく。
「この様なゲームバランスにするような人ではないと思っていたのだが、才能が枯渇したか?」
「いや。幾ら才能が枯渇したって、称号全部を取り損ねる様な設計にはしていないと思う。つまり、これはバグによる影響なんじゃないか?」
「もしそれが多発するとなれば、五千個すべての称号を手にする事は不可能だが……今はぼやいても仕方ないな」
とにかく、オレはこのまま装備変更をせずに、リングのまま戦い抜いた方が好ましいという事だ。
そして以前マリアが言っていた「アタシもリングへ武器変更した方がいいのか」という案は、残念ながら今は出来ないという事も合わせて知る事が出来た。
「あのさ、アタシからも一個良い?」
「なんだい、マリア」
「決闘戦についてなんだけど、やってる?」