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攻略組-04

「女性だったのか」


「ああ。しかし驚いていないみたいだね」


「元々性別不詳だったし、女性でも驚かないよ。むしろ性別を明かしてくれた事の方が驚きだ」


「君に隠し続けていても利点は無いと踏んだ。しかし他の者にバラすのはやめてくれよ」


「約束する」



 彩斗は、青色の髪の毛を首元で整えたショートボブヘアで、瞳も日本人離れした綺麗な藍色が印象強かった。


声も、その姿のまま聞いていれば女性にしか聞こえないので、なぜ性別がバレないのかが気になった。



「視覚情報というのが一番人間の判断基準になるからね。思いの外全身を覆ってしまえば、性別って分からないようだよ」


「でも、何で隠してたんだ? 人見知りってわけじゃないんだろ?」


「ミサトの提案でね。『貴方はミステリックな雰囲気を出していた方が売れる』って」



 ソファにかけた彩斗と、一応汚れた状態なのでそのまま立っているオレ。彼女は笑いながら「男性を家に招く事になるとはね」と言って、そのまま話を続けてくれた。



「さて、あの三人がいる時に色んな話をした方がいいだろう。少し世間話と洒落込もうじゃないか」


「あ、だったら聞きたいんだけど、その前に、その……」


「ああ。今更敬語かどうかは気にしないでくれ。確かに年は離れているが、若者に敬語を無理やり使われてる方が気を遣う」


「……助かる。彩斗は、どうしてゲーマーを辞めたんだ?」


「うーん……話していい内容だろうか」



 彼女は、少しだけ表情を真剣なモノに変えた。


ゴクリと息を呑む。かつては誰も叶わないとされていた天才ゲーマーだ。そんな彼女が突然引退を表明した理由を。


もしかしたらオレみたいに、母さんを亡くしただとかそう言う理由かもしれない。覚悟を決めなければ。



「いやね、あの当時、とある奇妙な冒険的なゲームが出たんだよ」


「え」


「それはもう、PVの時には神ゲーを確信したよ。思わずSNSで『このゲームクソゲーなら私はゲーマー辞める』って呟いたし。まぁ肝心のゲーム部分は実際にプレイをしてみても悪くはなかった」


「ああ、うん。多分オレもそれプレイしたと思う……」


「だがアレだけは頂けなくてねぇ……『このモードはスタミナが溜まっている分だけ無料で遊べちまうんだッ!』だけはねぇ……っ」


「ああ……」


「いやね、フルプライスの、しかも限定版を予約購入したんだよ? 一万数千円したよ? なのにこれ以上課金させるつもりかと思ったら殺意が沸いてね? 酒飲んでた事もあって勢い余ってSNSで『引退します』って宣言しちゃって、翌日朝起きたら追悼までされてたよ……」


「そ、それで引くに引けなくなって、引退を……?」


「うん」


「え、それマジ……?」


「マジだよマジ。後でミサトにメチャクチャ怒られた。スポンサーとかにも怒られて、いやあの時は参ったなぁ」



 頭を抱えた彩斗に、オレは何というか……いつも冷静沈着で落ち着いたゲーマーというイメージが若干覆ってしまう。


恐らく、ミサトさんという女性は、彩斗がこう言う人だと知っていたから、広報などの事を自分でやったのだろう。そうしなければボロが出てイメージが崩れるから、と。



「じゃあ続いて君の事を聞こうか。君はえっと……二年前に引退したんだったね」


「ああ」


「何か事情でもあったのかい?」


「母さんが、亡くなって……それ以降、ゲームをプレイしてても、母さんの事を、思い出してしまうから、かな」


「おや。この話はこれ以上広げない方がいいかもね。私のどうでもいい理由が霞んでしまう」


「いやどんな理由だって彩斗には叶わないよ……」


「では今は」


「普通の高校生だよ。でも、FDPの先行プレイヤーに知り合いがいて」


「さっきのお嬢さんだね。確か名前は……リリナと言ったか?」


「もしかして、世話になった?」


「最初の頃に少しだけね。それに私以外のプレイヤーも彼女を気にかけていたし、あまり私が教える事は無かったよ。確か……RINTOって男の子が彼女に積極的なアピールをしていた筈だが」


「振られてた」


「ほほう。その話はもっと詳しく聞きたいところだが、そうもいかないみたいだね」



 と、そこで綺麗な身なりになって戻って来たマリアと先輩。どうやら装備品などは一度装備を外すと綺麗になるらしいので、身体の汚れだけをお風呂で洗い流したのだろう。



「じゃあオレも借りていいですか?」


「ああ。その間私はこの美少女達に囲まれているとしよう」



 心底嬉しそうな表情でマリアと先輩の所へと向かった彩斗と、彼女が女性であると知って驚く二人、そんな光景を詰まらなさそうにジトっと見据えるミサトさんを眺めた後、ミサトさんに連れられて風呂場へと向かう。



「バスタオルはそこにある物をお使いください」


「ありがとうございます」


「それと、私にも敬語は結構ですよ」



 それだけ言って脱衣所から去っていったミサトさん。オレは一度装備品を脱いで、籠の中に入れると、すぐに汚れが消えていく。


しかし体に着いた汚れを落としたいのでシャワーだけを借り、少し体を温めた所で出て、すぐに身体を拭き、先ほど連れて行かれた居間へと向かう。

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