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変身の時-10

 一息付くと同時に、オレはリングへ軽く触れる。


すると全身をまとう白の装甲が段々と溶けていき、最終的には再びアイコンへと姿を変えて、オレの下へ落ちて来た。


アイコンを元の持ち主へ向けると、首を横に振って受け取らないとする彩斗。



「あげよう。そのアイコンは二つ目でね」


「そうか、ありがとう。――ところで」


「ああ、改めまして。私は三星彩斗だ。初めて会うが――君が本物のリッカで構わないかな? 偽物が、君の引退後に沢山出て来たのでね、少々疑心暗鬼だ」


「本物だよ。貴方には一度お会いしたかったんだがな。これまで機会に恵まれなかった」


「彩斗、そちらは」



 と、そんなオレと彩斗の会話に割って入るのは、先ほどの女性だ。彩斗は彼女へオレを紹介する。



「あの天才ゲーマー【リッカ】だよ。ミサトも聞いた事はあるだろう?」


「ああ、あの海藤雄一が寵愛した子供」



 短く手を繋いだオレと彼女――ミナトと呼ばれた女性。



「よろしく。私は彩斗の補佐を務めている、明石三郷。ハンドルネームはミサトよ」


「雨宮律。リッカです」



短いやり取りを見届けたサイトは、残念そうに首を横に振った。



「積もる話はあるが、しかしこの場所にレイドボスが登場した事を、攻略組の皆に伝えなければならない。この森を超えた先に【ミュージアム】という街がある。今度是非、そこまで来ていただけないだろうか?」


「必ず出向く。色々聞きたい事もあるし」


「なら、今日はここでお別れだ。――あの可愛いお二人にもよろしく」



 短く手を振ったサイトと、サイトに付いていくミサトさん。


二人の事を見届けた後、オレはマリアと先輩の下へ行く。



「リッカ、もしかしてあの鎧の奴」


「ああ、彩斗だ。まさかFDPに参加していたなんてな」


「あの人、攻略組の彩斗さんって人なんですけど、有名なんですか?」


「三星彩斗っていう、元ゲーマーです」



 三星彩斗は、オレやマリアがゲーマーとして世間へ名を残す前に、ゲーマーの頂点に君臨していた人物だ。


オレもその存在に憧れていたと言っても、過言ではない。



「ひとまずアルゴーラに戻って、三人にこの事を伝えましょう――っと」



 そんな会話をしていると、アルゴーラからこちらまでを走って来た、三人の姿が。


率先して走って来たのはカーラさんだ。彼女はオレと先輩とマリアの三人へ飛びついてきて「ワがコーッ!」と無事を喜んでくれた。



「ケガとかアリませんカ!? もしケガしてたらハハがチューしてナオしてあげマースッ!」


「チューはして欲しいです (怪我なんかしてないですよ)」



 思わず本音の方が出てしまい、マリアと先輩によるビンタが交互に決まる。二人は満足げにハイタッチした後、心配してオレへチューしようとするカーラさんを止める。今はメチャクチャ痛いからチューして欲しい。



「そもそも楽勝だったしねぇ」


「あの、マリアさんと私は、相当苦戦してたような……」



 続いてツクモとエリが息を荒げてやってきた。元々の体力が低いせいで、ゲーム内でもスタミナが少ないのだろう。



「これ……辛いっすわぁ……っ!」


「ぶひぃ……ぶひぃ……海藤雄一……ゲームバランス……崩れる方式に……しやがって……っ」



 苦笑と共に、オレはエリの手を取って起こしてやる。彼女も頑張ってここまで来てくれたのだから、少々労っても良いだろう。



「ありがとう、エリ。急いできてくれたんだね」


「ぶひぃっ!? い、いや……レ、レイドボスとか、参戦は、もう義務だし……っ」


「嬉しいよ、君の心遣い」



 耳元で囁く。というより他の奴に聞かれたくないし。


効果はテキメンだったようで、エリは「ぐへ、ぐへへ」と変な声を漏らしながら顔を真っ赤にしてくれているし、オレは早々と彼女から離れてツクモにも礼を。



「わざわざ来てくれたのに、悪いな。ありがとう」


「良いんすわぁ。それより、さっき三郷さんが見えたんすが」


「有名な人なのか?」


「三星彩斗が世に出ないから、彼女が三星彩斗の代わりに記者対応などをしていたんすわぁ」



 彼女は彩斗の補佐を務めていると言っていたし、そういう事を担当していたんだろう。そしてアニメやゲームなどの記事を生業とするツクモが、彼女と面識あるのも納得だ。


 ひとまず、そうして会話を終わらせたオレ達は、アルゴーラへと一度帰還し、現状の確認と今後の事を話し合う事としたのだった……。

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