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チュートリアル-10

 RINTOは叫び、背中の双剣を引き抜いた。


それが合図となり、二者の間から魔法陣にも似た紋章が浮かび上がり、マリアと手を繋いでいた少女は力場の様なモノに阻まれ、彼女から離れる事となる。


そしてRINTOとマリアの二人の足元まで広がった魔法陣によって作られたフィールドは、誰の立ち入りも許されない、決闘場――というよりもリングに近いものとなる。



『はーいっ! では今回決闘戦のジャッジを務めさせて頂きます、メイド姉妹のオンド・メイドでーすっ! よろざっす!』


「出たわねメイドシリーズ」



 しかも先ほどのチュートリアルとは違う姉妹と来た。マリアはため息を付きながら彼女へ「ねぇ」と声をかける。



「アタシ、その決闘戦って奴は初めてなんだけど、これどういうルール?」


『基本はルール無用のデスマッチですねぇ。通常のモンスター戦と同じく、武器による攻撃は痛覚が軽減されますので、その点はご安心を!』


「勝利条件は?」


『規定ダメージによる判定か、私の独断か、棄権ですねぇ。規定ダメージは通常のモンスター戦と同じく、皆さんの基礎体力等に依存するもので、ゲージ化等はされておりません!』


「勝った時の報酬は?」


『相手の所持金八割と、相手の持っている装備品一つを入手する事が出来ますよっ!』


「で、負けたらそれらが奪われる、と」


『その通りです! ご質問は以上ですか!?』


「あーうん」


『では――合意とみなして宜しいですね!?』



 二者が互いの獲物を構え直す。


マリアはリボルバー拳銃タイプの武器に銃弾を六発装填しなおしてホルスターに戻し、RINTOは剣の握りを確かめた後、刃と刃の金属同士がこすれ合う音を奏でた。



『それでは――決闘戦、スタートォぅ!!』



 メイドが拳を振り上げた瞬間、RINTOが「うぉりぃあっ!」と叫びながら双剣をマリアに向けて突き付けようとした光景を見据えた彼女は、右足で強く地面を蹴るとそのまま建築物の壁へ左足を付けて、蹴る。


空中で身体を捻り、勢いの乗った右足の振り込みに、反応する事の出来なかったRINTO。首元を強打され、一瞬意識を失いかけたが、ブンと頭を振って意識を保ったものの――しかし、続いてマリアの右肘が、鳩尾にメリメリッとめり込まれ、グボッと唾液と胃液の混合液を吐き出してしまう。



「きっ――たない、ってぇのぉっ!!」



 そのまま、左掌の掌底をRINTOの顎に叩き込んだマリア。彼の身体が吹き飛ぶと同時に、マリアはホルスターからウェポンガンを抜くと、素早く撃鉄を上げてトリガーを引き、銃弾を彼の股間へと撃ち込んだ。



「ぬふぉうっ」



 変な声を漏らしたRINTO。彼は股間を抑えて悶絶しており、しばし立ち上がらなかった。


故に、メイドはウンウンと頷きつつ、マリアの腕を握って、天高く掲げさせた。



『ウィナー!! マァ~リィ~アァ――っ!!』


「チャラ男ファッキンッ!!」



 中指を突き立てて舌を出し、相手を煽るマリア。


するとマリアの頭上に新たな獲得称号が表示され、それにも「おっし」と喜んだマリア。


『N.4000 Cランク〔決闘戦に挑戦しよう!〕』


『N.4001 Cランク〔決闘戦で一回勝利せよ!〕』



「~~っ!! ちょ、ちょっと待てよぉっ! これ互いの武器使い合うモンだろ!? 完全にコイツ肉弾戦メインだったじぇねぇかよ!? ルール上問題ねぇのか!?」


「さっきメイドが言ってたじゃん。ルール無用のデスマッチだって」


『ええ。ルール上なんら問題無さ過ぎでーす!』


「じゃ、さっさと所持金と――そうねぇ。装備はそのマントにしよっかなぁ」


「あ、それ高いのにっ!!」



 未だに股間を抑えるRINTOのマントと所持金を無理やり奪ったマリアは、メイドに「あんがとねぇ」とだけ礼をした後に、RINTOから奪ったマントを羽織って肌を隠し、少女の手を取って「行こっか」とだけ笑いかけた。



「あ、あのっ! ありがとうございますっ」


「いいって事よ。アタシ、ああいう男が一番キライなの」


「その、何かお礼を」


「んー、どうしよっかなぁ」



 そうした謝礼が目的では無かったマリアだが、しかし利益優先主義アメリカ人と自分を認識している彼女は、そうした申し出を断れるほど無欲でもない。


 しかしまだよく知らぬゲーム内であるので、彼女に何を頼めばいいのかも分からなかったので、頷いて彼女に一つお願いをした。



「じゃあアタシさ、称号全部集めようと思ってんの。一緒に来た四人がいるんだけど、アタシらに色々教えてくんない?」


「あ、私あんまりゲーム得意じゃなくて、それ程教える事ないかと思いますけど……」


「いーのいーの。知らない事あったら御の字位に考えてっから」



 彼女の手を引いて、ひとまずリッカたちの下へ戻ろうとしたマリアの下へ、タイミングよく一人の少年がマリアたちの所へ走ってくる光景が見えた。



「マリアっ」



 リッカだ。マリアは少々顔を赤め、しかし笑みを浮かべて彼の下へ行こうとする。



しかしその前に、マリアが先ほど助けた少女が、マリアの手を振りほどき、リッカの所へ駆け、彼へ――抱き着いたのだ。



「――はぁ!?」



 驚き、マリアも急いで彼らの下へ。


すると、少女はボロボロと涙を流しながら、リッカへと声を漏らす。



「雨宮君だ……雨宮君だぁ……っ」


「もしかして……新庄先輩、ですか?」


「うん、そう……っ! 怖かった、怖かったよぉ……っ」


 

――マリアは後に知った事だが。


彼女はプレイヤーネーム【リリナ】


本名を新庄璃々那と言い、リッカとは同じ高校の先輩なのだという。

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