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大人の戦い-01

 八月十四日 彩斗とミサトの肉体データ消滅まで、残り二十三日。



 カーラ・シモネット、松本絵里、九十九任三郎の三人はその日、FDPにログインを果たした。


グレイズ・コーポレーション本社から行ったログインの後、彼女たちはアルゴーラの噴水広場へと到着し、まずは彩斗とミサトの行方を調べる為、コクーンに触れるも、しかしフレンド登録は既に解除されていて、メッセージを送る事も出来ない状態になっている。



「チ。こりゃ、足で探すしかないね」


「サスガに、ノコりニジューサンニチもあるのに、ニゲてないワケないデスもんね」


「その上、効率考えたら自分らもこの後別行動する事が好ましいっすからねぇ」



 極端な話しだが、彩斗とミサトの救出というのはいくつか作戦が立てられるが、救出成功率と時間効率を考えた場合、一番好ましいのは人数を分けての行動だ。


救出成功率だけを考えれば人数を固めて彼女達へ襲い掛かり、コクーンを操作してログアウト、という戦術が一番だが、相手が彩斗とミサトというプレイヤーであり、状況的にも彼女たちは優位性を保持している状態だ。この状態で一度に襲い掛かり、もし失敗してログアウトさせられた場合、今度はまた開始地点がアルゴーラとなる。


仮にミュージアムに彼女たちがいた場合、移動時間は馬車を用いても数時間、用いらない場合は半日が必要となり、さらに馬車が使用できないバスラ農村へと逃げられた場合はほぼ一日が丸々と潰れ、その上バスラ農村からエパリスまでほぼ一日、エパリスからヴォールまでが約二日と、作戦時間の殆どが移動時間となってしまうのだ。


そしてこれも、途中モンスターと遭遇し、それを全て撃退する事なく逃げ、強引に移動を行った場合であり、必ずしもこの戦術が上手くいく状況ばかりではない。



「その上移動は、ミュージアム側から移動する場合も考えにゃならんのですわ」



 ミュージアムから向かう事が出来る大都市・ルトワーズから、ヴォールまで移動が可能である。こちらのルートは強力なモンスターの出現頻度も高く、非常に高難易度であるが、しかし彩斗という存在には闇のアイコンを用いたプログレッシブ・デーモンとしての力もある。ルトワーズへのルートも進行出来るであろうし、移動時間が短くて済む。


色々と手をこまねいている内に一週間経過し、既に残り日数が二十三日となってしまっている現状、彩斗とミサトがどちら側から、どう行動を開始したかも分からない。



「仕方ない……マリア氏、カーラ氏の二名は、ミュージアムからルトワーズ、ルトワーズからエパリスへの道で行動開始してほしいっすわ」


「ツ、ツクモさんはどうすんのさ?」


「ソーデス! このナカでイチバンヨワいのツクモです!」


「グサッと来ますわぁ。まぁ事実なんすけど」



 ツクモは攻略開始から三か月程度しか、このFDP内で活動していない。そこから最後のアバルト・グランテ戦までは現実で色々と手をこまねいていたから、装備品という点では皆よりも劣る。



「自分だってエパリス程度までなら移動可能っすわ。それに、奇数なら結局は別れて行動する他無いんすから、攻略難度が上がるそっち側が二人っつーのはしょうがない事っすわぁ」


「ん……まぁ、そうなんだけどさぁ」



 エリはそれでも、ツクモの事を心配していた。


先ほどの実力に関する事もそうだが、もしツクモの進行方向側に彩斗達がいる場合、彼一人でそれに対抗しなければならないという事になる。対人戦となる決闘戦では装備品の充実さはあまり関係なく技術の問題になるが、それこそ数か月もブランクがあるツクモ一人となれば、分が悪くなりかねない。



「大丈夫。自分は自分なりに何とかしますわぁ。それより、お二人の方が大丈夫ですのん?」


「まぁ、確かにルトワーズルートに関しては若干ムズイね。私らそれこそ、リッカ君や彩斗の光と闇のアイコンを頼りにしてたし」


「デモデモ、ワタシたちだって、ツヨくなってマス! ダイジョーブですっ」



 軽やかに会話する三者だが、しかし彼女たちの目は笑っていない。



「じゃ、それぞれ行動開始っつー事で。遭遇した場合は『居場所を送信』機能で教えて下され」


「あいよ。じゃあツクモさん、頑張ってね」


「ツクモ、fightデス!」



 そう言って三人は、それぞれ行動を開始。


ツクモはバスラ農村へと向かう為の砂漠ルートを行き。


カーラ、エリの二者はまずミュージアムへと向かい、彩斗やミサトの自宅に向けて移動を始める。



その様子を眺めていたメイドシリーズの一人、インド・メイドは、そっとツクモの背後を歩きながら尾行していたが、やがて彼は彼女へ向けて「インド氏」と声をかける。



『あら、バレちゃいましたね』


「自分、元々記者なんで、尾行とかは自分の方が得意っすわぁ」


『残念です、サポートNPCが一人のプレイヤーの尾行してるとか、あまりバレたくないものですし』


「進みながら、少しお話しませんこと?」


『お話しできる内容で良ければ、ですけどねぇ』


「彩斗氏とミサト氏がどこにいるか、分からないんすのん?」


『例の情交システムでログデータ収集が出来ませんので、アタシたちも明確な場所とかは分からないですけど、メイドシリーズネットワークを使えば、ある程度の場所は割り出し可能ですよ~』


「マジですか。教えてくれたりは」


『ブッブーッ、フレンドユーザーでもないのに場所を教えれる程、アタシたちは個人情報管理ボロッカスじゃありませーんっ』



 腕をクロスに交差させ、口をすぼめさせたインドに、ツクモも「ですわなぁ」と嘆いた。



「例えばバスラ農村だけでも敷地は広いし、そんな所に隠れられても困るんすわぁ」


『人間って不便ですねぇ』


「そう思うなら同情して場所教えて下さりません?」


『ノゥ!』


「力強い返答ですわぁ……」


『……でもまぁ、アタシたちも、彼女たちの無事はそれなりに祈っておりますので、他に何か頼れることがあれば、言ってくださいな。



 ……例えば、システムの穴を突いた方法とか、思い当たる事は教えられますよぉ?』



 ニヤリと微笑みながら、インドが放った言葉に、ツクモも笑いながら、しかしそれは後回しにすると言わんばかりに、リングへと灼熱のアイコンをかざす。



「敵っすわ。インド氏、離れてて」


『はいよーっ』



 ツクモとしても、アバルト・グランテ戦の際に少し戦いはしたが、そう大して動けたわけではない。何にせよ、慣らしは必要であると踏み、モンスターから逃げる手段ではなく、交戦する手段を選ぶ事とする。



〈Progressive・ON〉


「変身」


〈Progressive Fire Active.〉



 灼熱のアイコンを用いてプログレッシブ・フレイムへと変身したツクモは、その全身を装甲で包む【レアルドス】へと対峙する為、背負う太刀を、振るった。

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