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家族との訣別-05

 リングにアイコンをかざす二者。



〈Progressive・ON.〉



マリアは技術のアイコンを空に放り投げながらウェポンガンを構え。


リリナは駿足のアイコンを握り締めながら、腰に備えていたスティックを振るい。



二人は、今声高らかに、叫ぶ。



「変身――ッ!」


「変身ッ!!」



 二者の声と共に放たれる、リングからの機械音声。


それは無機質であるけれど、二者の想いが込められた言葉に呼応するように、三人へ音声を送り届ける。



〈Progressive Gun Technic.〉


 両手両足に展開される青色のアーマーから噴出される推進剤、それと同時に力強く左手の拳を握るマリア……プログレッシブ・テクニックと。



〈Progressive Run quickly.〉


同じく両手両足に展開される白銀のアーマーと、彼女の周囲に展開される、二十数枚余りのプレートに向け、手を広げるリリナ……プログレッシブ・スピード。



二者が変身を終えた事で――彩斗は小さく、とある女性の名を呼んだ。



「メイド」


『……ハイ』



 メイドシリーズの、どの人物かは分からないが、青白いドットに包まれながら量子空間より現れる一人は、俯きながらも、しかし彼女に応じる。



「私と、マリアとリリナ君の一対二で、決闘戦を行う。前回のリッカ戦と同じく、範囲を広くしておいてくれ」


『……合意とみなしてよろしいですね!』



 ああ、と呟きながら、彩斗も今、リングへと闇のアイコンをかざした。



〈Full Dive Progressive・ON〉



 機械音声と共に、彼女は変身コマンドを入力しなければならない。


でもその前に、二者へ言わなければならない言葉があると考えていたから、まだ変身をしない。



「二人とも――サヤカの事を、そんなにも思ってくれて、ありがとう。



 ああ、そうだ。私やミサトの為なんかじゃない、サヤカっていう小さな女の子の為に戦ってくれる君達こそ、私の強敵に相応しい――ッ!!」



 闇のアイコンを天高く放り、双剣の二振りを構えながら、その場で軽く片足を軸にしたターンをした彩斗が、今地へ落ちようとする闇のアイコンを掴み――叫ぶ。



「ハイパー大変身――ッ!!」



 漆黒の光と共に展開される、彼女の全身を覆う黒のアーマー。


その禍々しい雰囲気と共に、彼女の持ち得ていた双剣も僅かに変化、そして彼女はそれを構えた後、ブンと振るう。



〈Progressive Advent Daemon.〉



 ――その姿こそ、最強の力を持つ、彩斗の最強形態、プログレッシブ・デーモン。



強大な力を前に、しかしマリアとリリナは、怯えなかった。


今は無機質なアーマーによって阻害されているけれど、先ほどまで繋いでいた手の温もりを覚えている。


その温もりが、互いに互いを鼓舞し合い――互いを高めてくれる。



「リッカの出る幕なんかない――アタシらが、アンタを止める」


「もう、誰も悲しませない。――ハッピーエンドで、全てを終わらせて、リッカ君も、サヤカちゃんも、幸せにします」


『来い、マリア、リリナ。君たちの願いは受け取るけれど、しかし私とミサトにも、大人としての決意があるッ!!』


「そんな決意なんざッ!」


「サヤカちゃんを幸せにしないと何故気付かないんですかッ!!」



 スティックを振るい、マリアにバフ魔法である【鼓舞】を展開したリリナ。


マリアはその鼓舞を受け、ウェポンガンに灼熱のアイコンを装填し。


彩斗は、二振りの刃を構え、今地を蹴って――マリアのウェポンガンと刃を、合わせた。


 走る衝撃に、マリアは思わず膝を折ってしまいそうになるも、しかし負けじと銃口がそっぽ向いている状態で、トリガーを引く。


放たれる銃弾、しかしプログレッシブ・テクニックへと変身している彼女の能力故、銃弾は弧を描き、彩斗の背を目掛けて襲い掛かろうとするも、それに気づいた彼女はウェポンガンを弾きつつ地面に転がり、銃弾をやり過ごす。



「リリナッ!」


「ハイッ!」



 プログレッシブ・スピードへと変身するリリナが、今両腕を胸の前で交差させるように振るった瞬間、彼女の背後に展開されていたプレートが高速で稼働を開始。


彩斗が地面を転がった後に姿勢を正しつつ、双剣を振るう様にすると、発生する衝撃波がマリアを襲うかのように思えたが、だがその衝撃波を受け止めた、リリナの展開するプレート。


そして衝撃波が止んだと認識した瞬間、マリアはウェポンガンに氷結のアイコンを装填、残る八発の銃弾を絶え間なく撃ち放つマリアの銃弾は、全て別軌道を描いて彩斗へと迫る。



『チィ……ッ!』



 彩斗が自身の持つ双剣――フル・ダイブ・アバルトに、技術のアイコンと駿足のアイコンを装填。



〈Run quickly.〉〈Attack Technic.〉



 放たれる機械音声と共に十秒間、彼女に付与された二つの特性故、高速で空を駆けようとする彩斗だったが、しかし銃弾は全て、彼女がどう動くかを予め予想していたかのように追撃を果たしたばかりか、マリアは乱雑にマガジンを落とし、替えのマガジンを装填した後、続けて九発の弾丸を、放つ。


計十七発の銃弾、その操作はマリアの思考回路を焼き切ってしまうのではないかと考える程に繊細な作業であったが、しかしその甲斐があってか、彩斗の左脚部に二発着弾、その着弾地点から氷結のアイコンが持つ特性・氷結化が行われ、動きが鈍っていくと同時に、フル・ダイブ・アバルトに装填された駿足と技術のアイコンが装填を解除される。



「よっしゃ――ッ!」


「畳み掛けますッ!」



 リリナが氷結のアイコンを取り出して、リングへとかざす。



〈Progressive・Up〉


「フォームチェンジッ」



 プログレッシブ・スピードからプログレッシブ・フリーズへとフォームチェンジを果たしたリリナが、スピード状態よりも明らかに速度が低下しつつも、しかし冷気を放つプレートを操作、今動きを鈍らせている彩斗へと向け、冷気を帯びたビームを放っていく。



『グ……グウゥウウッ!』



 プログレッシブ・デーモンの状態故、防御性能や移動速度低下デバフがかかり辛いという利点はあったが、しかし連続して与えられた攻撃に移動速度は低下せざるを得ず、彩斗は舌打ちをしながら、灼熱のアイコンを二つフル・ダイブ・アバルトに装填。



〈Fire Active.〉〈Fire Active.〉



鈍った動きのまま、地面へ双剣を突き刺すと、地面を抉るようにして地上へと吹き出す豪炎が姿を現す。


あまりの熱に思わず肌を隠そうと腕が動いてしまったマリアへと近付き、その胸部へと拳を振り込んだ彩斗。与えられた氷結化は、今辺りに蔓延る豪炎が溶かしつくし、デバフ効果は無効となっている。



『……これは、辛い戦いになるかもしれない、な……ッ!』



 彩斗は、今両者の間に出来た隙を埋めるように、右手を空高く振り上げた後、マリアとリリナの方へ手を下ろし、命令を呟く。



『行け……っ!』



 黒い靄のようなエフェクトと同時に、その靄から姿を現す雑魚モンスター、その数は四体。

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