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最後の戦いへ-10

 アバルト・グランテの消滅と共に、その場にいるオレ達全員の頭上に『congratulation!!』という表記が現れると共に、文字化けした称号データが現れる。



『No.1000〔繝励Ο繧ー繝ャ繝?す繝悶?繧「繝舌Ν繝医→繝励Ο繧ー繝ャ繝?す繝悶?繧ー繝ゥ繝ウ繝??莠御ス薙r險惹シ舌○繧〕』



 何と書かれているか、その答えはオレ達全員、皆知っている。


今、その称号データより溢れる、黒い靄の様な表記にヒビが入り、割れる様にして――本来の姿が現れる。



『No.1000〔プログレッシブ・アバルトとプログレッシブ・グランテの二体を討伐せよ〕』



 コレで、五個全ての称号データを手に入れる事が出来た。


 けれど、皆その時は静かなものだった。


あのFDPが言った情報に嘘は無いのだと、皆心のどこかでは疑う事なく信じていたのだろうと思う。


だからこそ、最後の称号を確実に取得できる今日まで、戦う事が出来たのだから。


どっちかと言うと――こっちの方が狂喜乱舞と言っても良かっただろう。



「ツクモ――ッ!」



 カーラさんがツクモへ真っ先に抱きつきに行き、彼はカーラさんの豊満な体に抱きつかれた事によって手をワタワタさせながら「ちょ童貞にはキツイ抱擁っすわカーラ氏ィ!」と慌てだす。



「ホンモノですよネ!? ユーレイじゃナイですよネ!? もしユーレイだったらバケてデテやりマース!!」


「いやもし幽霊だったとしたら化けて出てるの自分じゃありませんのん?」



 何が起こったのか、冷静に考えようとしていたエリが、それでも涙を流しながら、ツクモへと近づき、今その手を合わせた。



「あ……も、もしかして、死んだ後なら、肉体データ、修繕は簡単、とか……?」


「いえいえ、その点は海藤雄一が死ぬ程頑張ってくれただけのようでして、次に自分と同じことはもう二度と出来ないだろうって言ってましたぞ」



 マリアはボロボロと泣きながらツクモの脛を蹴り続け「どんだけアタシらがアンタに泣いたと思ってんのよッ!!」と嘆き声をあげるが、しかしその表情は喜びに満ちていたと言ってもいい。



「生きてたなら連絡位しなさいよ、マジでそういう所で気が利かないから、えっと……ど、ドーテイって奴なんでしょ!?」


「おっほう。マリア氏、意味も分かってないのに童貞と口にするのがなんか可愛らしいですぞ」


「ウッサイバーカッ! 死ね、二回死ねっ!」



 そうして再会を喜んでくれる面々を端目に、ただ俯く様にして、ツクモと顔を合わせ辛いと考えているようにするリリナへ、彼は笑いながら近づいていく。



「リリナ氏」


「……ツクモさん」


「悩まして、ホントに申し訳ないっすわ。……自分が生きてる事、海藤雄一から聞いていたんしょ?」


「……はい、ごめんなさい」



 彼女が涙を流しながら、ツクモとの再会を喜んでいる筈なのに、素直に喜べないでいる彼女を慮った男が、ポンと彼女の小さな頭に、手を乗せ、撫でた。



「自分が生きてるってわかったら、皆が無茶するかもしれない、どうなるか分からないから、悩んでたんでしょ?


 それを、リリナ氏一人で抱えていたんでしょ? ……なら、それを謝る必要はないっすわ」


「はい……はい……っ!」



 ボロボロと涙を流しながら、彼の言葉に何度も何度も頷くリリナが、最後には彼の胸に飛びつき、生きていてくれた事の喜びを口にした。



「生きててよかった……っ! 私たちを、助けに来てくれた人が……死んじゃうなんて、いやだったから……生きていてくれて、本当に……っ」


「その小さな体でいっぱい悩んでくれたんすなぁ……大人としてリリナ氏を褒めないといけないっすわな」



 最後に。


オレと彩斗へと視線を向けたツクモが、ニヤリと笑ったものだから、オレと彩斗も笑いながら、彼へと駆け寄る。



頬に涙を流しながら、それでも笑みだけは崩さない。



「生きていたなら、今までどこに」


「現実に帰れていたので、先んじてFDPのデータが削除されないように動いていたっすわぁ。どうやら攻略が出来る出来ないに関わらず、FDPの事前データ削除に動く輩がいたそうなので」


「……なんと、あまり聞きたくない事を聞いてしまったな」


「ま、そこは大人である自分の役目でしたから」



 彩斗の問いと共に、オレの頭を撫でるツクモ。



「そんな事より――頑張りましたな、リッカ氏」


「……ホントだよ、お前がいなくなって、お前が支えてくれないから、オレすっげー無茶して、皆を困らせたんだぞ……っ」


「すみまそん」


「許さない、絶対許さない――許さないから、これからも大人として、オレを色々支えてくれよ」


「勿論さ――自分は大人だからな」



 再会は喜べた。


そしてこれからも、生き残った者たちでどれだけでも喜ぶ事は出来る。


ジジッと、どこからか現れたメイドの一人が、微笑みを見せながらオレ達の前に出現し、ペコリと頭を下げる。



『ゲームクリア、おめでとうございますっ』



 コクーンに触れて下さい、という彼女の言葉と共に、オレ達全員がコクーンに触れ、ログアウトに触れる寸前で止まる。



『今、情交システムを使っていない全プレイヤーの強制ログアウトを確認しました。海藤雄一が一秒でも早く皆さんを助け出そうとしていたんでしょうね。


 情交システムを使っちゃってる皆さんとミサトさんは、海藤雄一の持つ管理権限が及ばないので、まだ脱出できていませんが、ミサトさんの方にはウンドがご案内に向かってますので、ログアウトするかと思います』


「今まで、世話になったな。メイドシリーズ」



 代表してオレが声をかけると、彼女はフルフルと首を横に振って、一筋の涙を流す。



『……これから皆さんには、まだお願いしないといけない事がありますから』



 そうだ。


オレ達の戦いは、こうした戦場だけじゃない。


彼女たちメイドシリーズや、多くのNPC……そして。



彩斗とミサトさんの子である、サヤカのような、この量子世界に生まれた命を、助ける為に。



この世界を――現実のしがらみで、削除されないように、しないといけない。



『皆さん、どうかお願いです。どうか、このフル・ダイブ・プログレッシブという世界を――


 FDPという、小さな体の母が望んだ、この世界を、救ってください』


「――ああ、大船に乗ったつもりでいろ」



 彼女にそう言葉を残すだけでいい。


FDPという世界を救う事が出来れば、またいずれ会う事が出来るだろう。


だからオレ達全員は――



 コクーンに表示される『ログアウト』の表記を、押した。

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