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最後の戦いへ-09

「九死に一生を得たか……!?」


「いや……まだだ……ッ!」



 フル・ダイブ・グランテを掴みながら、冷や汗を流しホッとする彩斗の言葉に否定する。


何故なら――今度は首を反時計回りに回し、拡散レーザーではなく、一点集中型レーザーを放とうとしているのだから。


だが今の衝撃によって、オレと彩斗はこれから行われる攻撃を避ける事が出来ても、先ほどの衝撃で負傷したマリアやカーラ、そして先輩が対処出来得るか分からない。


オレと彩斗だって治癒によって回復しているとは言え、スタミナが持つという保証はない。



「……どっちかっつーと、万事休すか……!?」



 今、アバルトとグランテの二体は、オレと彩斗に向けて首を向け、それぞれがそれぞれと相対したオレ達へ、レーザーを放とうとしていたが。



――そこで、声が聞こえた。



「エリ氏! アバルトの口元に攻撃を!」


「え」



 突然聞こえた声に、エリの身体が思わず動いていたようだ。


オレを狙う、プログレッシブ・アバルトの口元に向けて、銃口を乱雑に構えて光弾を放つエリ。


大口を開けてオレに狙いを定めていたものだから、狙う事も無く撃つのは簡単で、今その一射が着弾。



――攻撃が着弾したと同時に、口に貯め込んでいたエネルギーのようなものを暴発させ、地面へと倒れて足掻くアバルト。



 そして、彩斗を狙うグランテには――



「プログレッシブ・ラスト・アクション――すわぁああっ!!」



 灼熱のアイコンを装備し、その振るう太刀に駿足の技術のアイコンを装填した男が、その声と共にオレと彩斗の眼前を駆け抜け、今地を蹴って、レーザーを放つ寸前のグランテへ、その太刀を突き付けた。


灼熱を帯びた太刀が口元に刺し込まれ、今突かれた地点からエネルギーを暴発させて、アバルトと同じように足掻くグランテの姿など、誰も見ていない。



見ているのは――今、オレ達の窮地を救った、一人の男の姿。


スキンヘッドと、堀の濃い男の顔。


その厳つい顔つきとは裏腹に、優しくオレ達全員へ微笑みかける、そのガッチリとした体つきをした男を見て――オレは、ブワリと涙を流し、彼の名を、呼んだ。



「……ツクモ……ッ!」


「美味しいタイミングで戻って来れましたな」



 九十九任三郎。オレが信頼する、大人の一人。


FDPによって変革された世界で、ただ一人大人として、この世界に抗った男を見て、リリナ以外の面々があんぐりと口を開けて、彼の登場に驚いていた。



「皆、再会を喜ぶのは後っすわ。


 海藤雄一からのネタバレで、アバルトとグランテの二体はレーザーを放つ前に口元に攻撃を与えれば、行動キャンセルを起こせるみたいっすよ」


「なんで、どうして、ツクモが生きて……っ!」


「そういうのを喜ぶのは後っつったでしょ?」



 その大きな手でオレの肩にポンと触れながら、ツクモはニッと笑みを浮かべてくれた。



――ああ、この手だ。この表情だ。この声だ。


――いつも、こうした彼によって、オレは元気を貰っていたんだ。



 起き上がる、アバルトとグランテ。


二体は口元に火傷を残しながら、身体に走る赤みをさらに強めた後、絶叫と共にジジジ――と身体を揺らめかせ、今その体が、合体した。



「アレは!」


「追いつめられると、アバルトとグランテの二体は合体し、俊敏かつ強力な攻撃を放つようになりますが、けど範囲攻撃は行わなくなるそうっすわ。


 ――つまり、リッカ氏と彩斗氏にとっちゃ、一番戦いやすい相手になるって事っすわ」



 オレと彩斗の背を押して、今ツクモが言葉を放つ。



「決着をつけてきなさい、二人とも」



 そうだ、まだ戦いは終わっていない。まだこの世界に、オレ達は決着をつけていない。


ならば――彼との問答は、それが終わってからでいい筈だ。



「――行くぞ彩斗ッ!」


「ああ――事態はよくわからないが、けれどここまでの奇跡が、私たちに力を与えてくれるッ!」



 持ち得るアイコンを全て掴み、オレと彩斗はリングへとかざしていく。


オレは【光のアイコン】【駿足のアイコン】【灼熱のアイコン】【氷結のアイコン】【技術のアイコン】【打撃のアイコン】を。


彩斗は【闇のアイコン】【駿足のアイコン】【灼熱のアイコン】【氷結のアイコン】【技術のアイコン】【打撃のアイコン】を。



そうしていると、アバルトとグランテの合体した姿――アバルト・グランテは、咆哮と共に鈍重そうな身体を機敏に動かしながら、今オレと彩斗に向けて駆け出し、その両腕部を乱雑に振るってくるが、しかしそれを全て避け切りながら、機械音声が流れるのを待つ。



『Savior』『Speed』『Flame』『Frieze』『Technic』『Blow』


『Sixth Progressive Last Action.』



『Daemon』『Speed』『Flame』『Frieze』『Technic』『Blow』


『Sixth Progressive Last Action.』



 オレと彩斗の両足に走る、六色の光。


その光が収束し、力となるまでにかかる時間、それは、オレ達が稼ぐ時間じゃない。



「――行くよ、カーラ、エリッ!」


「、ハイ、イキマスっ!」


「後で色々聞かせてよツクモさんっ!」



 涙を溢しながら、ツクモの生存を喜ぶ三人が、それぞれの武器を手に、今プログレッシブ・フリーズへとフォームチェンジ。


 カーラが顕現された幾枚のプレートより、機敏に動きながらオレ達を翻弄しようとするアバルト・グランテの脚部へ冷気の熱線を放ち、動きを抑制。



「エリーッ!」



 名を呼ばれたエリが、構えたマジックウェポンの銃口に巨大な光弾を生みだし、今その強い衝撃と共に身体を後ずさらせつつも、放ち、その光弾はアバルト・グランテの胸部へと着弾。



「マリア――ッ!」



 同じく名を呼ばれたマリアが、トリガーを引きながら地面を蹴り、今エリの撃ち込んだ弾丸によって巨大な冷気の痕を残す胸部に向けて、右脚部の蹴り込みを、放つ。


強く殴打されたキックにより、嬌声を放ちながら、今動きを完全に止めたアバルト・グランテを見据え――



マリアが、リリナに視線を向け、叫ぶ。



「リリナッ!!」


「――ハイッ!」



 変身を解除し、リングをはめ直していたリリナが、今その腹から出した声と共に、奏でられる歌が、オレと彩斗に、最後の鼓舞してくれる。



「フル・ダイブ――!」


「プログレッシブ・ラスト・アクション――ッ!!」



 計三本の刃が地面に突き刺さると同時に、発せられる衝撃波が、アバルト・グランテの身体を僅かに宙へ浮かせ、オレと彩斗は地面を蹴りつけながら、今その両脚部を、最後にマリアが一撃を叩き込んだ腹部へ、叩き込む――!!



 絶叫するアバルト・グランテ。


咆哮を上げるオレと彩斗――プログレッシブ・セイヴァーと、プログレッシブ・デーモンによる攻撃。



その一撃を放つだけの間に、どれだけの時間が流れたか、それも定かではないけれど。


最後に、その巨大な甲殻を突き破り、肉を蹴り付け、その体を貫通した事によって地面を抉る様に滑るオレと彩斗が。



 コツンと右手と左手を当て合った瞬間。


巨大な爆発音と共に、オレ達は勝利を確信した。

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