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最後の戦いへ-07

 しかもそれだけでは終わらない。


彩斗と相対するグランテが、同じく首をグルリと回した後、彩斗へと狙いを定めて放つレーザー。


彩斗は冷静に発射角を見極め、放たれる寸前に背後へと飛び退きながら、フル・ダイブ・アバルトの剣を振るって放つ衝撃波によって僅かに拡散した結果、避ける事に成功したが、これは……!?



「現状時計回りに首振ったら拡散レーザー、左回りに首回したら誰かを一点狙い! けど多分、ランダムじゃないよコレ!」


「っ、ランダムじゃ、無いなら……ヘイト値……っ!?」



 負傷故に二体から距離を置くマリアが、今リリナの下へと辿り着き、彼女に回復薬を処方してもらう事で、僅かにだが左腕の治療を進めていく。



「多分ヘイト値で間違いないと思う! 現状ダメージを一番入れてるの、マリア、リッカ君、彩斗の三人で、しかもマリアは二体に満遍なく攻撃を入れ込んでるから!」



 今回、アバルトとグランテを攻略する際に気を付けていた事は二つ。


双方に与えるダメージを、アタッカーであり接近を余儀なくされるオレと彩斗は、どちらか片方しか狙わない事。


これはオレや彩斗のようなアタッカーがどっちつかずの攻撃をしていた場合、二対の龍が同時に咆哮する際に発する衝撃波が、かなりのダメージになるという以前の経験則からだ。


だがこの衝撃波攻撃は遠距離武器……つまりマリアやエリのようなウェポン系武器を使用して双方のヘイト値を溜めていた場合でも、統計上、放たれることは無かった。恐らく近距離武器……というより、近距離からの攻撃に対応するカウンター技であったからだろう。


けれどそれとは違って、一点集中のレーザー攻撃は、距離関係なくヘイト値順に攻撃を仕掛けてきている。


となると次に狙われるのは――!



「エリ――ッ!」


「分かってる!」



 駿足のアイコンをリングへとかざしたエリが、フォームチェンジをしながらアバルトとグランテへ視線を向け、首の動きをチェックする。


左回りに動かされた首と、大きく開かれた口、そしてその顔が向けられた方向は……エリ。



『Progressive Run quickly.』



 フォームチェンジ完了と同時に周囲を観察、アバルトとグランテの位置とエリ自身の位置を確認した彼女は、そのまま地面を這う様に前面へと駆け出した。適当に避けて味方へ被弾する事を避ける為の配慮だ。


二頭から放たれたレーザーが、エリの頭部スレスレをかすめていくが、しかしプログレッシブ・スピードへとチェンジした彼女の速度にレーザーはついていく事が出来ず、最終的には着弾する事なく、躱しきれたという事だ。



「あっぶねぇ……!」


「ナラ、ツギはワタシですネ……!」



 エリと同じくプログレッシブ・スピードへとフォームチェンジを行いながらアバルトとグランテを警戒するカーラ。


そして読み通り、先ほどまでと同じモーションで首を回し、顔をカーラへと向けたアバルトとグランテの攻撃に、カーラは唾を飲みながらバリアマウントを展開し、レーザーが放たれる寸前に駆け出した。


エリとは違い、カーラから見て左方へ走り抜ける彼女の動きに、これもまたレーザーはついていく事が出来ず、途中拡散。


カーラはホッと息をつく暇も無くオレへ「リッカ!」と叫びながら、スティックを振りバリアマウントを再度展開。


オレは、フル・ダイブ・グランテの剣に駿足のアイコンだけを装填。



『Run quickly.』



 速度を得たオレが、洞窟の隅で歌い続けるリリナと、彼女に治療されているマリアの前に立ち、フル・ダイブ・グランテの剣を構える。


アバルトとグランテから放たれるレーザー。それは今の所一度も攻撃をしていないリリナへ向けて放たれるも、しかしオレの構えたフル・ダイブ・グランテの剣が受け、さらにカーラが展開してくれたバリアマウントの効力もあり、威力は完全に拡散しきった。



「ハァ、ハァ、ハァ……ッ!」


「リ、リッカ……、っ……ぶ、無事……っ!?」


「リッカ君……っ」


「平気だ……マリアとリリナこそ、大丈夫か?」


「大丈夫、リリナはアンタが守ったっしょ……!? アタシは、さっきも言ったけど、火傷みたいな、もんよ……っ!」



 痛みに耐えながらも、しかし回復薬でダメージは治す事が出来たのか、マリアが息を吐きながらオレの肩にタッチする。



「行くわよっ」


「……ああっ」



 確かに思いも寄らなかったけれど、しかし今の攻撃で誰も死ぬ事なく対処出来た。


ならばまだ、勝機はあるという事だ。



これまでの総評。


恐らくアバルトとグランテの二体は、ラスボスとしてプレイヤーに多く攻撃される想定したモンスターだ。


故に翼や尻尾を用いた通常攻撃の他には、カウンター技……いわゆる受けたダメージを数値化し、その数値が高い順番に攻撃を行っていく二つの傾向がある。


一つは前回経験した、近距離にいる敵がアバルトとグランテ、双方の敵へ攻撃したヘイト値。これには二体が咆哮する際の衝撃波が放たれ、これはほぼ防御不可能技と言ってもいい。


これに対抗する手段は一つ。近距離武器を持つ者は『どちらか片方にのみ攻撃を集中させる』事。この場合遠距離武器はどちらでも構わない。



もう一つが、今経験した拡散レーザーと一点集中型レーザー。


拡散型は恐らく、一定ダメージを負う事による無差別攻撃だが、これ自体に大した威力は無い。バリアマウントを展開していれば拡散される程度の物だし、展開時間も短いので、モーションからの回避も防御もある程度容易になる。



問題は一点集中型。こっちはグレイフル・バルのように、素早く・長く伸びるレーザー方式となるからして、避ける場合は駿足のアイコンによる回避しか現状方法はない。


 発生タイミングは今の所不明だが、こちらもモーションを見ていれば対処自体は可能になると今分かった。


バリアマウントによって威力をある程度軽減したとしても、当たり所が悪ければ一撃死もあり得るだろうから警戒は必須だが、ならば――



「エリ、モーション観察と報告を密に! あとリリナの護衛も頼んだ!」


「攻撃はどうする!?」


「エリは出来るだけ控えて、対処し得るオレと彩斗が基本ダメージ、マリアは無理しない程度に頼むっ」


「おーらいっ! じゃあつまり――無理しないレベルにダメージを与えりゃ良いってわけじゃんっ!」



 リングに駿足のアイコンをかざしたマリアが、プログレッシブ・スピードへのフォームチェンジを行う。ダメージは少なくなるが、しかし優先は何よりも『死なない事』だ。

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